山下さんが借りたというワンルームマンションは、うちの営業所の近くではありましたが、表通りから外れた狭い通りのゴミゴミ
した裏町にある6階建ての2階にありました。
いかにも場末という感じでした。
山下さんに招き入れられると、室内は意外
にも整理整頓されてました。
ただ、広いベッドが場所を取り、いっそう
狭く感じられる上に、何だかファンシーな?
インテリアで・・・まるで若い女性が住みそう
な感じの部屋でした。
初老の年代で貧相な外見の山下さんには
似合わない、と意外な感じでした。
だけど、窓から外を眺めても、隣のビルの
壁しか見えません。
そうやって隣のビルの壁しか見えない窓際
に立っていると、不意に僕の肩に山下さん
の手が置かれました。
僕自身も何か妖しい雰囲気を感じていたの
でしょうし、以前多香子さんに言われてた
言葉を思い出しても居ました。
山下さんの手が僕の肩に触れた感触に、
思わず「あんっ」と声を洩らしてました。
すると、山下さんは更に体を寄せてきて、
その手が僕の肩から背中に降りて撫で始め
ました。
僕は・・・「ああ・・・・。」と、溜息をついてました。その声音は、意識はしてなかったけど、
甘えるような媚びを含んだものでした。
「ふふ・・・永野くん・・いや羊くん、どうだい、
この部屋は?・・・君に貸してあげてもいいと
思ってるんだよ。」
と、山下さんが言うので、僕は小さなかすれ声で「え?・・な、なんでですか?」と彼の顔を
見ながら尋ねました。
「ふふ、それはね、君が可愛いからさ。
なあ、君は男が好きなんだろ?・・君を初めて
見た時からそう思ってたし、君を見てたら
・・・判るよ。まるで女の子みたいに思える
こともある・・・・。君は、女の子みたいに
男が好きなんだろうな、と見抜かれやすい
んだよ。」
と、囁くように言われました。
僕は・・・・媚びた上目づかいで山下さんを
見つめて
「男が・・・というより・・・僕は、ファザコン
なので・・・その・・・年輩の人に・・・憧れて
しまうんです。山下さんみたいな人に・・・。」
と小さな声で答えてました。
山下さんは僕の脇腹を抱き寄せて
「羊・・可愛い・・。お前を狙ってたんだ。」
と囁いて、正対して僕を抱き締め、熱い
ディープ・キスをしました。
それは「唇を奪われる」という感じで、僕の
舌は彼の舌に絡め取られ、僕の口内の唾液
を吸い取られる感じでした。
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