ひとりが大きな声で、隣の席まで聞こえるように言った。
「そうなのか?お前紗菜ちゃんが好きなのか?」
彼女の隣に座る親父が、私を指差しからかってくる。
顔を上げると、彼女の冷やかな笑顔で私を見ていた。
恥ずかしくて、私はその場にいる事が出来ず、居酒屋を逃げ出してしまいました。
近くの公園のベンチに座り、私は彼女に嫌われてしまったと涙が出てきました。
「もう、走るの早いよ」
いきなり、彼女に声をかけられました。
私は、彼女が何故そこにいるのか、わかりませんでした。
隣に座って、彼女が私の腕に自分の腕を絡ませて来ました。
「逃げる事ないじゃない、みるくちゃん(いつも牛乳を飲んでいたから彼女は私の事をそう呼んでいました)に好きって思われて嬉しかったんだよ!私も前からみるくちゃんの事、可愛いなって思ってたんだから。それとも違うの?私の事好きじゃないの?」
私は下を向いたまま、
「す、好きです。紗菜さんの事が大好きです。」
これ以上嫌われたくなくて、自分の気持ちが素直に口から出ました。
彼女が、下から私の顔を覗き込んで来ました。
「嬉しい」
そう言って、彼女が私に唇を重ねて来ました。
彼女の腕が私の首に巻き付き、彼女の舌が私の唇を割って中に入って来ました。
実際は一瞬のキスだったのだろうけど、私には長い長い夢のようなキスでした。
「私、みるくちゃんが思ってるような女じゃないわよ。それでも私の彼氏になってくれる?」
「はい!紗菜さんが魔女でも構いません!」
「嬉しい」
彼女がまた私に唇を重ねて来ました。
さっきよりも激しく舌を絡めてきて、私はそれだけで逝ってしまいそうでした。
「じゃあ行きましょう」
彼女が私の手を取り、立ち上がった。
「どこへ?」
彼女は微笑んだだけで、私の手を取り歩き始めた。
「ここよ」
目の前にあるのは、どう見てもラブホテルでした。
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