お店の開店は概ね夜9時ころにしてるそう
です。それより早い時間帯にはお客さんは
殆ど来ない、と哲男さんは言います。
もっとも、最近はコロナ禍もあって、やはり
来店客の数は以前よりかなり減ってる、との
ことでした。
夜の10時過ぎころ、今夜最初の来客があり
ました。
40歳代と思われるサラリーマン風の男性が
一人来店しました。
店内に足を踏み入れると、その男の人は僕を
見て、驚いたようにその場で立ち止まり、
絶句してました。
そこで、哲男さんが
「ああら、タカさん、今夜は早いわね。」
と声をかけました。
そのお客さんは、哲男さんに答えるように
「いやあ、びっくりしたよ。ママさん、この
子、新人さん? 」
と、僕を見遣りながら、哲男さんに尋ねました。ちなみに、店内では哲男さんはママさん
と呼ばれてるようでした。
哲男さんは
「そう・・・不定期だけど、時々お手伝いして
もらおうと思ってるの・・・。でもね、この子、
水商売なんて全然経験がなくて・・・まあ、
見習いさんなの・・・よろしくね。」
と言い、僕の方に目配せしたので、僕も
「全く見習いです。何にも知らないので、
よろしくお願いします。」
とだけ言ってペコリと頭を下げました。
紫色のブラウスに白い女性用パンツ姿の僕
を、しげしげと見ながら、
「うん、可愛いなあ・・・それに、何だか
色っぽいねぇ・・・・でも、君、未成年じゃ
ないかい?」
と言われたので、僕は自分が20歳であること
を伝えました。
「女っぽい男の子」と思われても、このお店
の中では恥ずべきことでなく、仲間として
会話をしてくれるんだ、と感じました。
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