その夜、私は狼狽えて、取りあえず映画館から逃げるように出ました。
映画館を出てすぐに
「おい、おい、小川くん・・・ちょっと待って。」
と呼び止められました。
「小川」というのは私の苗字です。
仕方なく振り返ると・・・やはり、あの、顔を
見知ってるおじさんでした。
おじさんは微笑みながら
「そんなに急いで帰らなくても良いだろ?
夜は長いよ。少しお話でも・・・。それとも、
明日の昼間に君の会社でお喋りしても
良いのかい?」
と言いました。
私はドギマギしながらも、職場でバラされるわけには行かないと考え、小さくコクリと頷いてました。
おじさんは私に寄り添いながら
「俺の住んでるアパートは近くなんだ。
ちょっと立ち寄ってくれよ。コーヒーも
ビールもあるからね・・・。」
と、私の顔を覗き込むように見ながら、
私の耳元に囁きました。
そして、もう私の返事を待たずに、私の肩を引き寄せて歩き出しました。
そうして二人並んで歩きながら
「おや、香水かな?・・良い匂いがするね。
色っぽい女の香りだ・・・・。」
と囁きました。
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