レズビアン体験告白

チェリーは幸福な飼い犬です。
お姉様という素晴らしいご主人様から、しっかり躾けしていただき、優しく可愛がっていただいて
大切に飼われています。
今日の朝から、優しいお姉様は出張です。お父様、お母様もお仕事先。
バイヨネットはお休み。
チェリー犬は何をすべきか・・。
お家のお掃除、片づけも終わっちゃたよ。
お勉強は・・夜しようっと。だって、夜は寂しいから・・。

カンカン照りの中をチェリー犬は水道の水をペットボトルに入れて歩行訓練。
暑いねー。これだけ暑いと人が出歩かないから、街が静かだよ。
駅の玄関前を通りかかった時、見たことのある野良犬、じゃなかった隣の中学のＡを発見。
チェリーの顔を殴った罰で、チェリーの膝を鳩尾に喰らって警察に引き渡されたおバカさんだ。
何やってんだろう。全然迫力ないや。本当に野良犬みたい。
こいつの仲間の高校生は初等少年院に送られたって聞いたけど、こいつだけ釈放されたか。
うーん、どうしてくれようか？
深く考えず、いつもの調子で行くおバカチェリーです。
ハイ、久しぶり。何やってんの？
振り向いたＡの顔、疲れてる？いや、やつれてるね。
チェリーの顔を認めてびっくりして、反射的に逃げ出し掛けたのを、手を掴んで引きとめました。
暑いし、どっか涼しいとこで話ししようよ。
マック入る？
「俺、金ねえよ。」
心配しなさんな。こっちが誘ったんだ。奢るよ。
「そんな腹に溜まらないもん、嫌だ。」
初めて気が付いたよ。
こいつ、本当に腹を空かせてるんだ。
理由は分かんないけど、空腹で行き先が無いって感じだ。
握った手を引っ張って、無理やり近くの牛丼のすきやに連れ込みました。
私はお小遣いもらったばかりだからね。
何でも頼んで。
Ａは特盛りを注文。チェリーは小盛りです。
牛丼が来た途端、Ａは飛びついたよ。
チェリー、男の子が本当にむさぼり食うところって初めて見ました。
もう本能的、原始的な行動。迫力さえ感じたよ。
あっけにとられて見ていたチェリーが半分も食べてないのに、Ａは特盛り完食。
チェリーが箸を置くと、
「残すんなら食べていいか？」
ってチェリーの食べ残しまで平らげました。
食べ終えて水を飲んでやっと落ち着いたみたい。
きまり悪げに俯いて小さな声で「すまんな。」って言いました。
うーん、理由は聞くまい。武士の情けだ。
きっと家庭的にも恵まれてないんだろうな。
身の上話は避けて、雑談しようとするけど、共通の話題がありません。
しどろもどろの会話の中で、こいつ「おれ、自衛隊に入りたい。」って
言いました。
こいつだって、自分の将来に希望を持ってるんだ。感心したよ。
「本当は中学を卒業して、自衛隊の学校に行きたいんだけど、試験が難しいから無理だ。
　高校を出てから入りたいけど、高校も行けないしな。」
確か、中学を出てすぐ入る自衛隊の下士官養成コースの学校がありました。
本当に全国から優秀な生徒が集まるそうです。確かにこいつじゃ無理だよな。
高校に行けない？家の事情ってやつだろうな。
公立は学力的に無理、私立は経済的に無理ってことか・・。
自衛隊に入ったら、戦争や有事の時、真っ先に死なねばならないよ。
って聞いたら、
「うん、俺それで良い」
って答えやがったよ。
ふと、つまらん事が頭に浮かび、良く考えず言葉に出ちゃった。
勉強、教えてやろうか？
全部は無理だよ。漢字や英語の単語は自分で暗記しなきゃね。
数学くらいなら、教えてあげられると思うけど・・。
「だめだ、俺、関数のグラフも分かんねえ。」
おーっと、２元１次関数出たよ。
大丈夫、そこなら教えられるから。
さっそく明日からだ。９時に児童館に来な。
２時間だけだけど、教えてあげる。
じゃあ、明日ね。
答えも聞かずにチェリーは帰っちゃいました。
さあ、明日、Ａのやつ一人で来るかな？
仲間と一緒かな？
うふふ、楽しみだな。


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