初めて交通事故で人が死ぬのを見てしまいました。
おばあさまが病院で亡くなる時立ち会ってるけど、突然の死は初めてです。
ベータと一緒に登校中、交差点手前で自転車の男子高校生がチェリー達を追い抜いて行きました。
前の信号がちょうど赤から青に変わって、自転車はそのまま進んで行ったと思ったら、いきなり右側
からすごいスピードの車が走ってきて、ドーンという音がして自転車が左の方へ飛んで行ったの。
続いてすぐガシャーンって音がした。
チェリーが急いで交差点まで走って行って左の方を見ると、交差点から10メートルも向こうのガード
レールの所に自転車と高校生が倒れているの。
車もその向かい側のガードレールに頭からぶつかって止まっていました。
近づいてみたら、自転車はタイヤもハンドルもぐにゃぐにゃです。
高校生は仰向けに倒れて全然動かないの。
もっと近づいてみたら、頭が切れていて血がどんどん流れてました。
チェリーは茫然自失。しばらくじっと見ているだけ。
やっと助けなきゃって思って、ガードレールを跨いで車道に出ました。いや、頭は切れてるんじゃなくて割れてたんだ。
傷口に白い物が見える。骨だよ。
なぜか片目が開いてるけど焦点が定まってない虚ろな目でした。
歩道に移そうと思って腕を握ったけど、重くダランっとしてる。
しかたないから両手を持って引きずろうとしたら、大人の人が足を持ってくれました。
とても重い。腕が抜けそうだった。
ベータも手伝おうとしたけど、途中で手を離して向こうで吐いてる。
しかたないよ。こんな怪我見たら皆そうなるよ。
歩道に仰向けに寝かせたけど、頭から血がどんどん出てる。
ハンカチで押さえたけど、すぐハンカチを通して温かい血がチェリーの手を濡らしました。
片手を胸に当ててみたら息もしてない。心臓が動いてるかどうかも感じられない。
運ぶのを手伝ってくれた大人の人が
「息は?脈は?」
って聞きます。
息してません。脈も分からない。
チェリーが言ったら、その人が周りの人に
「救急車呼んで。早く、119番だ。」
って言ってくれました。
その人がチェリーの代わりに高校生の胸に手を当てて
「心臓マッサージをしなくちゃ。
君、人工呼吸できるか?」
って聞きます。
前に学校で習っただけで実際にしたことないけどやらなくちゃ。
チェリーが肯くと、その人は
「俺が心臓マッサージするから、人工呼吸頼む。」
って言うと、すぐ高校生の胸を両手でリズムを付けて押し始めました。
チェリーも、前に習った事を思い出しながら、高校生の顔を反らして、
空気が逃げないように鼻を摘まんで、自分の口を相手の口に着けました
一回吹きこんで、相手の胸が膨らむのを目で確認して・・。
確かに空気が入っていってる。でも、吹きこむ間隔が分からない。
あせって3~4回吹きこんだら、マッサージしてる人から、
「もっとゆっくり。」
って言われました。
人工呼吸してる間も頭の傷口から血が流れてる。
膝まづいてるチェリーの足がヌルヌルした血に浸ってるのが分かるの。
血は出た時は温かいけどすぐ冷たくなるんだ。
チェリーの髪の毛も血に浸ったよ。
マッサージしてた人が手を止めて胸に耳を直接当てたから、脈が戻ったのか
と思ったけど、「だめだ、戻らん。」って言ってまた始めました。
叱られるだろうけど、チェリーは人工呼吸しながら
この男の子、多分もう死ぬ
って感じてたの。
でも、そう感じながらも
もうちょっと待って、お父様やお母様や彼女が駆け付けるまで、
もうちょっとだけ行くの待って。
って思いながら人工呼吸を続けたの。
何時救急車が来たか気がつかなかったよ。
いきなり、ヘルメット被った男の人が
「代わろう。よくやった。」
って言って、チェリーを男の子から引き離してくれたの。
救急隊員が男の子の胸に電極を張り付けて電気ショックをしてるの見てたら、
若いお巡りさんが、チェリーに毛布を掛けてくれました。
チェリー、全身血まみれでした。白の制服のブラウスも紺のスカートもソックスも。
髪の毛や顔にも血が付いてましたよ。
交通課のお巡りさんから簡単に話しを聞かれて、後から来た交番所長さんから
ミニパトで家まで送ってもらいました。
所長さん、あの男の子助かりましたか?
「今、病院に運ばれたけど、正直難しいんじゃないかな。
AEDでは心臓の鼓動が戻らなかった・・。」
「君は、良くやったよ。
でも、全力を尽くしても仕方ないこともあるんだよ。」
「学校には私から連絡したけど、もう一度した方が良いよ。」
はい、ありがとうございました。
家には、お姉様、お父様、お母様、皆留守です。
服を全部脱いでお風呂で手洗いしたけど、血はやっぱり落ちないよ。
クリーニングに出さなくちゃ。
残り湯で身体を洗った後、クリーニング店に制服を持って行きました。
事故の現場を通りかかったら、男の子の血の後に水が流されてました。
それを見たら、チェリー、急に吐き気がしてきたの。
必死に堪えて、近くのコンビニのトイレに駆け込んで吐きました。
コンクリートに流れる赤い血や傷口から見えてた白い骨が目の前から消えないの。
ダメ、チェリー。可哀想な男の子のことを気持ち悪いだなんて思っちゃいけない。
お姉様が怪我をなされた時、そんな態度が取れる?
そう言い聞かせるけどやっぱり駄目。
そんな自分が嫌になって泣きながら家に帰りました。
途中、携帯に学校から「今日は休みなさい。」って着信あり。
サブ、チェアマン、アルファ、ベータ、ごめん。
今日はチェリーはダメ。
特にベータ。一緒に登校したばかりに、辛い目に遭わせたね。
本当にごめんね。
家に帰ってお姉様のお部屋に入れてもらおうと思ったけど止めました。
忘れてた。死の汚れを払わなくちゃ。禊ぎをしなくちゃ。
浴室で唇が震える位に冷たいシャワーをずっと浴び続けました。
その後、お塩を身体に擦り込んで、またシャワーです。
交通事故に遭った男の子を汚れてるっていうわけじゃないの。
でも、禊ぎをしたせいか気分は大分落ち着きました。
ヒロ様、最近のチェリーはなんだかおかしい。
トラブルに巻き込まれすぎると思いませんか?
それとも、これが全てチェリーのための修行なんでしょうか?
きっとそうですよね。修行ですよね。
頑張ります。
明日は、学校に行くぞ。
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