鍛錬合宿、無事終了。
事故、遭難未遂?1件。負傷者、軽度ねん挫2名。
「死してお詫び」はしなくて良かったですよ。
お姉様から言われた事は全部したし、何故しなけらばならないかも分かりました。
初日に到着してすぐ、青年の家の職員さんに挨拶に回ったら、
「生徒さんに挨拶されるのは5年ぶりかね。」って言われました。
なーるほど、お姉様の事か・・。
「毎年、規則を守らなくて迷惑をかける生徒が多いけど、今年は大丈夫そうだね。」
そうか、まず第一印象ですね。
消灯の後に先生と見回した後、部屋に戻って2段ベッドを上がったりして、同じ部屋の子に
迷惑を掛けるの嫌だったから、ホールのソファーで寝てました。
何人かのカップルが、こっそり抜け出そうとしたけど、チェリーを見て諦めたみたい。
せっかく恋人同士がより親密になる機会を潰してごめんね。
でも、帰ってからにして頂戴。ここじゃまずいから。
二人で出て行こうとした若い男女の先生も驚いてたね。
「会長、なんでここで寝てるの?」
無断外出を警戒しています。現在まで異常なし。
「そう、どうも御苦労さま。でも、自分の部屋で寝た方が・・。」
いいえ、大丈夫です。ご心配なく。
先生も恋路を邪魔してごめんね。やっぱり帰ってからにしてください。
良い意味でも悪い意味でも、うるさいチェリーを印象付けたね。
朝5時に身支度整えて給食室の前で立ってたら、お姉様のおっしゃる通り
早出の職員のおばさんが来ました。
おはようございます。何かお手伝いさせてください。
ゴミバケツを運び出すお手伝いしたら気に入られちゃいました。
今日の夕食後の食器洗いは生徒でしますって言ったら、すごく喜ばれちゃった。
「毎年、遅れて帰ってくる生徒の分、私達も帰りが遅くなるのよ。助かるわ。」
洗った食器の置き場所や後の掃除の仕方を教えてもらい朝食後チェアマンに引き継ぎました。
6時30分が起床時間。すぐにグラウンドに集合です。
15分前に行ったら、すぐ校長先生がいらっしゃいました。
おはようございます。
「おはよう。会長、早いね。」
「今日は、頼んだよ。」
はい、先生方にご協力いたしますので、よろしくお願いします。
校長先生の顔色、若干悪いかな。不安があるみたいだよね。
あの担任先生の杜撰な計画と準備では、誰でもそうだよね。
一旦、任せたとはいえ、何で計画や準備具合を確認しなかったのかな?
8時、訓練開始。
各自、水のペットボトル2本、業者が作ったおにぎり3個、氷砂糖と
チョコとキャンディの入ったお菓子の袋を受け取って歩きだしました。
帰着予定は午後6時だけど、去年も大幅に遅れたもんね。
お姉様の教えの通り、マーチを口笛やハミングしたら、周りの皆も一緒
になって歌ったりで良い感じで歩けました。
皆の知ってるボギー大佐やロンゲスト・デイ、大脱走のマーチが評判良かったです。
軍艦マーチは出なかったけど、剣道部が「抜刀隊」を歌ってくれました。
昔の日本陸軍の行進曲って言ってたけど、日本の軍歌らしくないね。
歌詞の内容は「我が敵は古今無双の英雄で・・」って敵を誉めてたり、悲壮感がなくて明るい感じの歌でした。
午後4時、やっぱり付いていけない生徒が続出。
このままでは、全体の帰着が大幅に遅れます。
校長先生に先発隊、本隊、後続隊に別れることを意見具申。
校長先生の命令により、先生方も3つに分かれ、それぞれの隊についてくださいました。
先発隊はサブが指揮しましたが、早いこと早いこと。
半分走るようにして行っちゃいました。
サブって、運動部じゃないのに長距離走なら陸上部なみです。
頭脳肉体共にエリートですね。みんなが誉めるのも分かるわ。
それまで先頭を歩いていた担任先生は校長先生の指揮で、校長先生やチェリーと一緒に最後尾へ。
後続部隊は、歩けない生徒の腰に長縄とびの綱を結び、それを運動部員2人え引っ張ります。
3人の全く歩けない1年の女の子は、たくましい運動部員が交代でおんぶしました。
驚いたのが、夜和子ちゃん。後続部隊に志願して残ってるの。
歩けない1年生の手を引いてあげてる。
このままだと、1時間ほど遅れても、無事帰りつくかなって思ってた時、大問題発生。
道の脇に、先生、生徒20人ほどが坐って休憩している所に、チェリー達最後尾が追いつきました。
その部隊の先生が心配そうに「あの、あとの2人は一緒じゃないんですか?」って聞くんです。
良く話しを聞くと、その部隊の中で2年1人1年1人の女の子が、途中で少し休みたいって言うから、
チェリー達最後尾に合流するように言って休ませてたそうなの。
チェリー達は会っていないぞ。2人はどこに消えたんだ?
二人が休んだ所から、現在地まで分岐点が1か所あった。
二人は勝手に歩きだして、道を間違えたんだ。
さあ、大変。探しに行かなくちゃ。でも、さすがの運動部員も皆くたくた状態。
時間はもう6時、お昼がおにぎり3個じゃ男性陣は腹も空いてるでしょう。
担任先生「探しに行かなくちゃ。会長、すまんが生徒から一人出してくれないか?」
なんでチェリーに振るのよ。私が誰か指名しなくちゃいけないって言うの?
お姉様がおっしゃっていた泣きそうになる場面でした。
校長先生が「いや、私が一緒に探す。」っておっしゃいます。
チェリー、この時は疲れと怒りで切れそうになりながらも、何故か思考は正常でした。
校長先生はいけません。校長先生は早く戻って、最悪の場合の全体の指揮をしていただかねば。
探すのは、私が行きます。さあ、先生、戻りましょう。
チェリーも泣きそうだけど、この時の担任先生は本当に泣きそうだった。
それを見てたら、怒る気無くなって許してあげなくちゃって気になりました。
その時、見守る皆の中から「サー」って言いながら手を上げた子がいる。
テニス部主将、なんですか?
「会長殿、その捜索任務を是非それがしに命じていただきたく・・」
わーお、この局面、この疲労の中でも格好つけるのね。
いいわ、承認します。お行きなさい。ただし、会長も分岐点まで行きます。
後で捜索隊が来た時、分かりやすくするために、分岐点で待機します。
ずっと伝令として私に着いていたアルファに最後の命令。
一刻も早く帰着して先生、サブ、チェアマンに状況を知れせて。
体力に余力のある生徒で捜索隊を編成して派遣するように伝えて。
記録係として着いてきたベータも任務解除。
ここにいる生徒を守って一刻も早く帰着して。
ベータは私と一緒に行くって言ったけど帰るように強く命じました。
また泣きそうな顔になってる。
担任先生とテニス部主将と3人で分岐点に到着。
そこで、お姉様から言われたとおり手を付けなかったお菓子の包みを開けました。
二人ともお腹すいてるでしょう。これを分けて食べてください。
先生、驚いた表情。まさか、私から情けを掛けられるとは思わなかったな。
テニス部主将も戸惑ってたけど、すぐに受け取りました。
「これは閣下よりのご褒美、ありがたく頂戴いたします。」
いや、さすが大したもんですね。精神的には先生より大分ゆとりを持ってるよ。
ただし、チェリーは奴隷であって、閣下じゃないけどね。
その後、お菓子を先生も受け取ってくれました。
二人が探しに行った後、チェリー一人で分岐点に残ったけど、精神的には落ち着いてたかな。
お姉様、チェリーできるだけの事はしました。
私の行動に対する評価はお姉様にお任せします。
7時、少し暗くなってきました。
アルファが急いでも、捜索隊がここまで来るのは8時すぎかな。
あせらず待とう。少し寝るかな。
チェリーが道端に寝転んですぐ、坂の下の方から何か聞こえてきました。
口笛と歌声だ。ドイツ戦車兵の歌、パンツアー・リートだったけ。
サブが良く口ずさんでる歌だ。
起き上がって警笛を吹いたら、ワ―って歓声がして先生3人と
サブを先頭に男女30人位の生徒が駆け寄ってきました。
アルファもいる。でも来るの早すぎない?
後で聞きました。サブは先発隊が青年の家に到着して、夕食の支度などの
目途が付いたら、すぐに後続部隊受け入れのために、部隊を編成して先生
のお尻を蹴飛ばして?また青年の家から引き返してきたそうです。
サブ、あんた凄いよ。疲れてるのに遅れたみんなを助けるため、また来てくれるなんて。
サブはぶっきらぼうに、「ノブレス・オブリ―ジュ」(高貴なる義務・・だったかな?)
って言って、捜索に行っちゃいました。
30分位して、警笛の・・-が聞こえました。
無事発見のサインです。迷子の二人は怪我はなし。あー、よかったよ。
8時20分全員無事帰還。正面玄関には校長先生が待っててくれて労ってくださいました。
それとね、担任先生からも「ありがとう」って言われたよ。
これから、少なくとも敵じゃないね。一緒に苦労した仲間だからね。
もちろん先生に対する礼は失しませんからご心配なく。
夕食終わって、お風呂に入ろうと思ったけど、急に生理が始まっちゃいました。
皆が入り終わってボイラーが切れた後、そっと一人で入ろうとしたんだけど、
何故かべ―タと夜和子ちゃんが浴室の前で待ってるの。
二人の顔見た後、引きかえすのも変だから一緒に入りました。
チェリーがお人形さんなの見たけど、二人とも何も言わなかったよ。
いや、入浴中3人とも何もしゃべらなかったけどね。
ベータが黙ってチェリーの背中を流してくれました。
チェリーが一言だけ「ありがとう」って言ったら、顔を真っ赤にして俯いちゃいました。
前日同様、チェリーが見回りしようとしたら、サブとアルファが今日は自分達が回るって言い張ります。
折衷案で3人で一緒に先生のお供をしました。
ホールのソファーで休もうとしたら、今度はチェアマンとベータが今晩は私達がここにいるって言い張るの。
ここも折衷案、3人でソファー3つを占領しました。
もっとも皆疲れてるから、この夜は抜け出そうなんて人いなかったけどね。
朝は、もっと大変。
職員のおばさんが出勤してきた時は、女の子20人が集まってました。
何処かで見た子だなって思ったら夜和子ちゃんと付録の3人までいましたよ。
6時にはほとんどの生徒が出てきて、サブと一緒にグラウンドの草取りを始めました。
チェリーが命令したんじゃないからね。知らないよー。
合宿が無事終了して、青年の家所長さんから絶賛されたよ。
「最近の利用者のマナーが悪くなる中、皆さんは素晴らしいかったです。」
ああ、全てチェリーのご主人様であるお姉様の教えのおかげです。
チェリー、嬉しかったよ。
お姉様に恥をかかせずに済んだ。
皆の素晴らしい姿を見ることもできた。
サブの言うエリートの意味も分かってきた。
優れてるからちやほやされるからエリートじゃなくて、優れてるから他人
のために尽くせるのがエリートなんだ。
ちやほやされるからには、その分働かなくちゃいけないんだ。
うん、その考えなら反対はしないよ。
ますます、チェリーの家畜にしたくなったね。
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