俺にもタイプはある。
不潔な奴、我儘な奴、礼儀が全くない奴はNGだ。
エージェントも言っており、それを承知しているからこそオファーの段階で選別している。
それでも、時にそのフィルターを潜り抜け、質の悪い依頼者との対決に臨まなくてはならないときもある。
待ち合わせは上野だった。指定されたホテルはひなびたビジネスホテル。
場所がどこであろうと安全にしゃぶれるならかまわないが、事前に提示されたプロフィールと突きあわせると微妙にイメージと違い、不安がよぎる。
もちろんエージェントを信用していて、彼の調査をクリアしたのだから、身元は間違いないのはわかっている。
これは俺の勘に過ぎない。だが、その悪い予感は徐々に顔覗かせ、現実となる。
指定された部屋のドアをノックする。
ガチャと扉が開きまず漂ってきたのは酒の臭い。赤ら顔の男が充血した目で俺を舐めるように見る。
顔の黒さに比べ腹と左手の白さが不自然だ。肌の黒さはゴルフと思われた。
構わず部屋に入る。
べたっとした和室にせんべい布団が敷いてある。
枕元には吸い殻が貯まったスチールの灰皿といくつかの缶ビールの残骸。
「待ちくたびれちゃったよ」
男がもともとだらしなく緩んでぶらさがっていたネクタイを外しながら新しいタバコに火を点ける。
酒を飲むのはかまわない。
だが、このような客は往々にして勃ちにそれが影響する。
俺はデリヘルではない。
時間を切り売りしてるのではなく、しゃぶっていかせてナンボの商売。
とはいえ俺の事情と客の事情は別だ。
「シャワー、済ませてください」
にべもなく言い、俺は電子タバコに吸う。
「はいはい、規則ね」
なんとなくだが擦りきれた畳に腰を下ろす気にはなれず、掛け布団がめくられてもいない布団に上がり込むのも気が引ける。
立ったままタバコを吸い、男が風呂から出て来るのを待つ。
首にバスタオルをひっかけた男が部屋に戻る。
見た目通りの年相応に緩んだ身体。顔はどす黒く赤みが指している。酒とシャワーのせいだろう。
「始めます、お好きな格好で」
仁王立ちの俺ににべもなく言われた男は、
「サバサバしてんねえ」
といいながら布団をめくりあげ大の字に寝そべる。
股ぐらの間にこれもまた赤黒い男のチンポがだらしなく垂れている。
男の足の間に膝をつき右手でチンポをつまみ上げる。
まったく芯が入っていない。
……まあいい。たまにはフニャチンから、カチカチにさせるのもたまには悪くない。
予告もせずに男の亀頭をクチにふくむ。
「ほっ」
男がひょっとこみたいにクチを尖らせる。
クチに含んだ亀頭を中の舌でレロレロとねぶりまわす。
フニャチンのままではストロークはできない。
てっとりばやく芯を入れるために舌先でなぞるのではなく舌全体を使って揉みくちゃにする。
くちゃくちゃと音を立てて舐めていく。
徐々に男のチンポに芯が入ってくる。
五分勃ちになる。
そのまま亀頭のカリに唇をひっかけ「クポクポ」と舌で弾く。
小刻みな「クポクポ」という音と共に、更に芯が入る。
7分勃ちになる。
こういう客はチンポから口を離すと萎える場合がある。
裏筋舐めやチンポの根本ねぶりはやめておこう。
できるだけ口で絞らず口の輪っかを維持したまま、舌でカリを入念に弾くように舐めていく。
これをしばらく続けると、これはこれでたまらない。
起ちが悪い相手は、激しくしゃぶるのではなく、優しくしゃぶるに限る。
「こ、こういうの、お、お、お」
だらしなく開いた男の口。
執拗に舌で亀頭を弾く。
やがて本勃ち。
一度口から出すと確認すると目測で10cmほどのチンポだ。
そのまま深めにくわえこむ。
ズドンと一気に振り下ろされた頭とずるりとしたくわえ込みに男が喘ぐ。
「おーきもちいおー」
ゆっくりとストローク。
「おーおーおーおーおー」
唇のすぼめ方を狭くして更にストローク。
こういう客は雰囲気を異常に大切にしがちだ。
わざと涎を絡ませて「くちゃくちゃ」と音をたててやる。
出だし鈍かった男のチンポも完全に芯が入り、長さの割にはずんぐりとした量感を俺のクチに押し広げる。
長さのわりにぼってりとしたチンポだ。
こういうチンポは前立腺やGスポットを攻めやすいから、セックスには自信があるタイプかもしれない。
残念ながらしゃぶることにはそれは通用しない。
更に唇にちからを込めきつめのストローク。
あまりダラダラと尺っていては相手の気が緩む。
そろそろトドメを刺して終わりにしよう。
ストロークのピッチを上げる。
涎で「くちゃくちゃ」が「べちゃべちゃ」に変わる。
男のチンポが膨れあがる。
がくがくと男の腰が震える。
「あぁぁ、だめえ」
口に吐き出される精。
射出ではなくドロリとしたお漏らしのような射精。
じんわりと俺の舌の上に広がったドロドロの精の感触を確かめ、ティッシュを探す。
俺は滅多なことでは飲精はしないし、特にこの男のは特に飲みたくもない。
上体を引き起こして。
「以上となります」
と宣言し立ち上がる。
男は起き上がることもできないようだ。
そのまま無言で部屋を後にする。
フロントを抜けながらエージェントに連絡をする。
「次は断ってくれ」
御徒町まで歩くことにした。今の俺にはあの町の猥雑な空気が必要だ。
※元投稿はこちら >>