<<つづき>>
「・・羞しい日焼けのカラダなので・・銭湯には・・・・・・行けないです」
ついに堕とした、と思ったのでしょうか。
ニコニコ顔に変わって髪の毛をクシャクシャに撫でながら
「ゆうちゃん、おかえり。上がんなさいよ」
背を向け、ピッチリしたホットパンツのお尻を振ってリビングを歩きながら
頭を撫でた左利きの掌を嗅いで「くさっ!(笑)」と、責め言葉を忘れません。
ソファにストッキングの細い脚を組んだ前、フローリングの上に立たされます。
両手をどうしていいかの所在もないボクをジロジロ、ニヤニヤ見ながら
「ねえ、どんな日焼けだったっけ? おねーさん忘れちゃったわぁ~」
ウソです。先月末、このヒトの遊びで焼かされたのを覚えてない筈ないです。
ねめつける視線が痛いです。
エロ本で目にしても、いまいちピンときてなかった「視姦」という言葉を
受身でヒリヒリ実感するなんて思ってもいませんでした。
ポッテリとヌメるピンクの唇が動きます。
「脱ぎなさい」
だめだ、脱いだらまたココに引き戻されてしまう。そのことはわかっています。
でもそんな最後の理性は、転がり落ち始めた重みに、クシャリと潰されます。
「・・はい・・」
何かを吹っ切るような気持ちで汗臭いTシャツの裾に手を掛けてたくし上げ
裏返しで顎まで抜いて顔が隠れたとき
「さすが成長期ねぇ、10日で随分伸びちゃってるじゃない」
腋毛のことです。
もう、カラダも見えているはずです。
Tシャツを首から抜いたとき一瞬目と目が合いましたが
思わず視線を外して沈黙に耐えていると、クスクス嗤いがやがて音色を含んで
「あはははは、そーだったわねー。キミには『解けない縄』かけてあげたんだっけ」
・・あざとい!わざとらしい!・・オネエ言葉の甚振り、もうやだ!
ボクの肌は、サーファーの人くらい焼けています。
顔はそうでもないので、服さえ着ていれば海以外でも不自然ではないです。
ただ、焼くときに2cm幅のテーピングテープで前夜の縄痕をなぞるようにマスキングされて
しまったため、言葉通り亀甲縛りの縄目のカタチで日焼け痕がくっきり白く残っています。
日焼けが褪せるまで、解けない縄です。
その2日間はゲイビーチって呼ばれている海岸に連れて行かれました。
ふんどしやキワどい水着の男のヒトが大勢で焼いていて、たしかに女性はいませんでした。
「こうやって縄痕を隠してあげないと、キミが緊縛大好きの変態マゾなの、
ホモ仲間のおじさま達にバレちゃうわよ」
ココナツ香料の、すぐに濃く焼けるタイプのオイルを塗り拡げる手指で
乳首を弄ばれながら聞いた、ひどい詭弁です。
「我ながら傑作ね。ゆうちゃんのカラダ、すっごくいやらしいわぁ~。」
変態日焼けの上半身を晒しているボクに歩み寄り、白いところを指でなぞり
自然にビクッ!と動いてしまうカラダに顔を寄せ、腋の近くを嗅がれます。
「さっきはイジワル言ってごめんね。突然いなくなっちゃうんだもん。
ゆうちゃんの匂い、嫌いじゃないよ。」
腋臭の体質ではないので刺激臭はしてないですが、トロ味のあるような
ヘンな感じの体臭なのが、自分の感覚です。
身長はボクのほうが少し高いので、背中から抱き付かれると、唇が肩口に触れます。
「き、きたないから、シャワーを・・」
「んふふ・・」
細い指先で乳首を下から撫でられると、この幾月で知った色々な感覚の記憶が
下腹の疼きになって蘇ります。
ようやく空気が緩んだとき、さっき閉めたキーシリンダーがガチャリと回りドアが開きます。
「ただいまでーす!」
「店長、おじゃましまーす!」
聞き慣れたふたりの声に、漸く落着きはじめた心臓がドン!と破れるくらい一打ちします。
・・・なんか、きっと、まずい。
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