彼『何か食い倒れツアーだなw』
俺『俺だってまだ数ヵ月しか居ないからさ…ごめん。』
彼『謝ることねーよ。別に観光に来た訳じゃないし、お前と一緒なら何だって構わないさ。』
彼は笑顔で、真っ直ぐな目で俺を見つめた。
俺は照れ臭くなり、バケツアイスをひたすらほじっていた。
彼『今度会うのは長くなりそうだな…』
俺『ん?なんで?俺おクリスマス~正月の間は日本に帰る予定だよ。後3ヶ月だからすぐだよ?』
彼『いや…俺もさ…留学先決まってさ…まあ、お前と違って語学学校?からだけどさ。』
彼は俯き、少しタメ息ついていた。
俺『え?でも行き先はここ(MA.Bos)じゃないの?』
彼『…NZに行くんだ…』
俺『…なんだよそれ…』
俺は不満げ、怒りを感じさせる様な態度で言った。
彼『ごめん。本当にごめん。』
彼は俯いたまま地面を見詰めていた。俺は初日に彼がひたすら『ごめん』と言った意味を理解した。
俺『え?なんで?語学学校ならわざわざNZじゃなくたって…それに俺が居るから、お互いの面倒だって見れるし、勉強だって俺が教えられるし…』
俺は焦った。自分の感情を押し付けるように矢継ぎ早に捲し立てた。
彼『…もう決めたんだ。そろそろ、卒業しよう。お互いのために…さ。』
彼は俺と目を合わさない様にずっと俯いたまま。彼は嘘を付いてる、そう直感した。
俺『卒業って…もう会わないって事か?これっきりなのか?』
彼『いや…まあ…』
俺『嘘だ。何が有っても、お前俺の側にずっと居るって言ったじゃん。』
彼『ごめん。その約束は…守れない。』
俺『じゃあなんで来たんだよ?本当にそのつもりならそのまま連絡絶てば済むことじゃん。』
彼『……』
俺『何が有った?俺だって子供じゃない。聞き分けだって有るつもりだし、でもそんな理由じゃ納得できない。』
彼『なあ…俺達ってなんなんだろ…友達?親友?恋人?』
俺『そんなの大切な人に決まってるじゃん。友達であり、親友であり、恋人…以上の存在だよ。』
俺は少し言葉に詰まり、何とか絞り出した。
彼『それは…そんなのはただの奇麗事だよ。』
彼は目が暗くなった、まるで壊れた人形のような平淡な口振で呟いた。
俺『お前…』
俺は怒りがこみ上げてきた。彼が本心で言ってないと解っていても、聞きたくない言葉だった。俺に嫌われようとして居る、まるで昔の俺だった。
彼『ただ好きな人と居るのに、なんでこんなにも失うものが多いんだろうね。俺達のどっちかが女なら…』
俺『やめろ!俺はお前が男だから、女だから、とかは関係無い!お前が好きなんだ。ヤマトという人間が好きなんだ。お前だってそうだろ?少しの好感と友達ってだけで俺のためにあそこまで出来ないはずだ。』
彼が『何かに』悩んでる、苦しんでるのは解った。
彼『なんでそうやって見透かす様なこと言うんだよ!そういうところが…無神経で自分勝手なところが大嫌いなんだ。』
俺『うん。解ってる。でも、それでもお前は俺と一緒に居た。今も一緒に居る。俺にとってはそれが全てだ。』
俺のことがほっとけない、好きって言ってる様にしか聞こえなかった。
俺『なんと言われようと、今度は俺が支える、俺がお前の側にずっと居る。だから心配しないで正直に話せ。俺が受け止めてやる。』
彼はひたすらに俯いたまま黙っていた。
ここまで来ると『何かに』をほぼ確信していた。だけど、その重荷を彼に背負わせてはダメだと思った。俺が彼を好きになったのが全ての始まりだから。
意を決して俺は切り出した…
俺『親が子供の心配をするのは当たり前。逆もしかり。ヤマトは選ぶ必要なんてない。』
彼は涙をこぼしながら、俺を見た。
彼『なんで…』
俺『お前の性格で、悩み俺に対して嘘を付く、それにはそれ相応の理由が…例えば…親に反対されたとか…な?お前は優しいから。』
彼はようやく全てを話してくれた。
俺が日本を発ってから、俺との関係が親に知られ、周りの人にバレたこと(俺が原因で別れた元カノ?が元凶)、悩み、苦しんだこと。そのせいで、所謂島流し的なことでNZへの留学が決定されたこと。
俺は彼を抱き締めた。
彼は震えながら、泣きじゃくっていて、大きい身体の彼が、凄く小さく、幼い子供の様に見えた。
俺達は大人にもなれない、子供にもなれない、そんな中途半端な存在だと痛感した。
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