携帯を手に取り、何度も消そうとして消せなかった
お姐さんの番号に電話をかけた。
それでもまだ心の中で抵抗するオレがいて、
呼び出し音が5回なったら切ろうと決めた。
ツーッ、1回、ツーッ2回……ドキドキする。
携帯を持つ手が微妙に震える。
ツーッと5回なった。
やっぱり縁がなかった。切ろう!
と思ったけどもう一回だけと
なかなか踏ん切りがつかなくて切れない。
7回目の呼び出し音が鳴ったときに
「はいっ」とハスキーなお姐さんの声が聞こえた。
「あ、あの…まことです…」
ドキドキで声が震える。
「ふふふ、絶対かかってくると思った」
オレはそのあと何をしゃべったらいいのか
頭に浮かんでこなくてしばしの沈黙……。
「会いたいんでしょ」とお姐さんから言ってきた。
「あの…いえ…」しどろもどろになるオレ。
「私に会いたいんでしょ!」と強い口調で言われ
「は、はい…」と返事をした。
「人間素直にならなきゃダメよ」と嬉しそうな声のお姐さん。
次の日が休みでゆっくりできるからと土曜日に会うことになった。
土曜日は最後のショーが1時半に終わるから、
それでお店を早引けするというので
お店の近所の深夜喫茶で夜中の2時に待ち合わせをした。
土曜日が来た。
まだオレは悩んでいた。
会いたい気持ち半分、会ったら今までの世界に
戻って来れないんじゃないかという恐怖半分……。
それでも会いたい気持ちが勝り、
勇気を出すために11時頃から居酒屋で飲み始めた。
飲んでいる間も何回も「やっぱり家に帰ろうか…」と悩む。
気がつくと1時半を過ぎていた。
いい感じで酔ってきたので覚悟を決めて深夜喫茶に向かった。
2時前に店に入るとお姐さんはもう待っていた。
「ショーが早く終わったから、早めにきちゃった」
嬉しそうにオレの手を握ってくるお姐さんに
(ちょっとカワイイ)と思ってしまった。
「お腹すいちゃった。焼き肉か何か食べてく?」というお姐さんに、
ここに来る前に居酒屋で飲んできたのでお腹がいっぱいだといった。
「じゃ、コンビニで何か買って帰ろう」というと
お姐さんはアイスコーヒーを一口啜って立ち上がった。
繁華街のコンビニは深夜でも人が多い。
お姐さんはオレと腕を組んで色々と食べ物をカゴに入れている。
ヒールを履いているから180センチ近い。
すぐにニューハーフと分かる体格と容姿は店内でもよく目立つ。
お客さんたちがチラチラとこちらを見る視線が痛い。
お姐さんはまったく気にせず「まこちゃん、何か食べたいものない?」と
わざとなのか大きいお釜声で聞いてくる。
オレは恥ずかしくてうつむいたままだった。
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