過去2度にわたって、今から、二十数年前に実際にあった、初心者女装子さんとの出会いについて記して来た。
今回も、同じ頃のエピソードを紹介しようと思うのだが、今回は、事後に、本人から聞いた心の内や思いを、本人になり代わって記していこうと思う。
彼は、長野県から上京して、都内で一人暮らしをしながら、大学に通う渡辺浩介君(仮称)22歳。
一人暮らしをするようになってから、女装に目覚め、夜な夜な、室内で、一人で女装をしていた若者である。
私とは、ネットの掲示板で知り合い、例によって、池袋の喫茶店で待ち合わせることになった。
以下からは、渡辺浩介君の一人称で、話しを進めていく。
僕が、その喫茶店に入ると、その男性は、既に、入ってすぐ左側の席に、座っていました。
短い角刈りの頭と、やや薄い色の入ったサングラス、がっしりとした体型、どう見ても、ちょっと怖そうな関係の人に見えました。
僕が、どうしようか躊躇していると、その男性が、こちらを見て、微笑みながら、手招きして、目の前の椅子に座るよう、促されました。
彼は、Kと名乗り、簡単な自己紹介の後、私のために、コーヒーをオーダーしてから、単刀直入に切り出しました。
「浩介君は、どのくらい、女性になりたい?」
僕が、返答に困っていると、
「ああ、そうか、こんな聞き方されたら、困っちゃうよな。女性になって、何をしてみたい?」
僕は、益々、返答に困って、ただ、下を向いていました。
「うーん、じゃあ、もっと、直球で聞こうか?女になって、男に抱かれたい?」
僕は、うつむいたまま、小さくうなずきました。
そうなんです。
一人で女装している僕は、女として男性に抱かれたい!という欲望が日増しに募っていたのです。
始めのうちは、一人で、女の子の洋服や、下着を身に着けているだけで良かったのですが、次第に、メイクをし、ウィッグを被って、どんどん、女性に近付くようになっていました。
今思うと、それは、かなり幼稚なメイクと、服装センスだったのですが、それでも、鏡に向かって、女性になった自分を見ていると、激しく欲情していました。
女性の姿で欲情している時、自分のペニスは激しくいきり起っているのですが、それでも、女性にそれを突っ込みたい、という欲望ではなく、このまま、男性に抱かれたいという、願望の方が強くなっていたのです。
そんな僕の心の中を、すっかり見透かされたような気がして、思わず素直にうなずいていたのです。
「よし!そうなら、話しは早い方がいいな」
そう言うなり、K氏は、レジで会計を済ませると、喫茶店のすぐ前から、僕を連れて、タクシーに乗り込みました。
僕の恐怖心が、再び、頭をもたげて来ました。
一体、どこへ連れていかれるんだろうか。
連れていかれた先に、どんな人たちがいるんだろうか。
次から次へと、頭の中に、恐怖のネタが浮かんで来ました。
そんな僕の不安をよそに、K氏は、タクシーの運転手と、昨日の松井のホームランはすごかった、とか、これで巨人の優勝は固いな、といった野球談議に花を咲かせていました。
ほどなく、タクシーは駒込駅からほど近い、高級マンション(1Kのアパート暮らしの僕の目には、充分過ぎるほど高級でした)の前に停まりました。
エントランスのオートロックを解除して、K氏は、どんどん中に入って行きます。
僕も、小走りで、彼に続きます。
8階の角に位置するK氏の部屋は、驚くほどの広さでした。
玄関を入って、廊下の突き当りがリビングルームになっており、30畳ほどはあろうかという広さでした。
左側はダイニングコーナーになっていて、カウンターと、8人ほどは座れるダイニングテーブルが見えました。
右側は、リビングになっており、中央に、大きなソファセットが、フカフカの大きなラグカーペットの上に置かれていました。
そこに座るように促された僕は、あたりをきょろきょろ眺めながら、遠慮がちにソファに腰を下ろしました。
テーブルを挟んだ反対側のソファに腰を下ろしたK氏は、
「じゃあ、今から、君を、望み通り、女の子にしてあげよう、ここには、君が女の子に変身できる全てのものが揃っているからね」
と、笑顔を交えながら話してくれました。
僕は、何だか、変身する前から、心の中が、女性化して来たような感覚に陥っていました。
「あの、僕、そんなに、本格的に変身しなくても、簡単にメイクさせてもらえれば、いいんです。それで、Kさん、僕と、そういうこと、したいのなら、僕は、それでも構わないんですけど」
途切れ途切れに、僕は、絞り出すようにK氏に訴えかけました。
K氏は、笑いながら、諭すように、僕に向かって言いました。
「浩介君ねえ、私は、決して、同性愛者ではないんだよ。男性を抱く気には、これっぽっちもならないんだ。私の、性的対象者は、あくまでも女性なんだよ」
僕は、ちょっと、意外な感じがして、
「えっ?でも、僕と・・・」
と、言いかけた言葉を遮るようにK氏が、
「でも、ただ一つだけ、他の男性と違うのは、私が好きなのは、ちんちんの付いている女性だという点だね。いいかい?だから、君には、これから完璧に女性になってもらう。完璧にっていうのは、見た目がっていう意味で、そのまま、外出しても、誰もが女性と見てくれるように変身してもらうんだよ」
更に、K氏は続けました。
「君が、完璧な女性に変身しない限り、私が、君に欲情することはあり得ないんだ。だから、君もそのつもりで、うんと、イイ女になってくれよ」
そのまま、僕は、K氏に連れられて、洗面室に入っていきました。
この洗面室も、驚くほど広く、ざっと四畳半ほどはありそうでした。
大きな鏡と、これまた大きな洗面台があり、その前には、場違いな大きな椅子が置いてあり、そこに座るように言われました。
そこで、まずは、ヒゲを、ものすごく丁寧に剃られました。
僕は、もともと、毛深い方ではなく、ヒゲも、ほとんど生えないのですが、それでも、K氏は、えらく丁寧にヒゲを剃りました。
剃り終えた顔に、化粧水、乳液、栄養クリームが塗られます。
K氏は、相当手馴れているようで、どんどん、作業が進められていきます。
こうして、僕の、女性変身がスタートしたのです。
(以下、その2へ続く)