高校の頃、女装してオナニーする興奮を覚えて、いつからか男に責められる妄想をするようになった。
そんな妄想にふけるようになっても、実際に男とする勇気はなくて、アナルオナニーをするようになった。
気付いたら22歳になっていた。
その間、何度か男とメールして会う約束をしたこともある。
だけど、いつも直前で怖じ気づいて約束を破ってきた。
そんな僕は最近、ソラ(仮)と言う21歳の女装子とネットで知り合った。
男としてみたいのに出来ない、僕と同じ臆病者。
知り合ってすぐにLINEを交換をして、暇さえあれば通話するくらい仲良くなった。
先週の土曜日。
昼間から通話してると、暇なら遊ぼうと提案された。
断る理由はないし、会ってみたいと思っていた僕は、すぐに準備を済ませ待ち合わせ場所に向かった。
ただの男友達と遊ぶだけなのに、狙ってた女とやっと遊ぶ約束が出来た時のような高揚感のなか、ソラの到着を待った。
駅前のロータリー、あきらかに浮いてる中性的なイケメンが一人、キョロキョロと周りを見回していた。
女装してなくても、すぐにソラだとわかった。
僕がソラの方に歩き出そうとした時、ソラも僕に気付いたみたいで、こちらに向かって歩いてきた。
「「凄い、わかった?」」
初対面の第一声が、同じセリフで被ると言う奇跡に思わず吹き出して、それまでの緊張も一気に解れた。
街を彷徨いて、食事をして、カラオケに行って、あっと言う間に時間が過ぎた。
「家で女装して飲もう」
「なにも持ってきてないよ」
「僕の貸すよ」
初めておじゃまする女装子の家。
家具、小物、匂い、全てが普通の男の部屋。
僕や、いつも遊んでる友達と何ら変わらなかった。
「ずっと着てほしいと思ってたのがあって」
そう言いながら、クローゼットから取り出した、なんのキャラクターかわからない、なかなか際どいコスプレ衣装を渡された。
「網タイツですか?」
「網タイツなのです」
「ちなみにソラは?」
「僕はこれ」
やっぱりなんのキャラクターかわからないけど、これまた、なかなか際どいコスプレ衣装を取り出して、恥ずかしそうに笑っていた。
コスプレの決心がついたところで、そのまま衣装を借りるのも申し訳なくて、僕はシャワーを浴びることにした。
シャワーを浴びて衣装に着替えたはいいけど、スカートの丈は短いし、思ってた以上に際どい衣装で恥ずかしい。
極めつけは、ボクパンがスカートの下から顔を出していた。
「これ、恥ずかしいのですが」
「ヤバい、似合いすぎる」
女装で人前に出るのが、こんなに恥ずかしいとは思わなかった。
本当に隠れたい気分だった。
「あ、パンツ出てる」
「そこは触れないで」
「ちゃんと洗ってるから好きなの穿いていいよ」
「申し訳ないから洗ってないのでいいです」
「なるほど、クンカクンカする気だな」
自分がとんでもない変態なことを言ったことに気付いて死にたくなった。
大人しくクローゼットの中の下着を借りて、ソラがシャワーを浴びてる間に化粧を始めた。
「ヤバい、可愛いすぎる、写メっていい?」
「今、鼻血を抑えるのに必死ないので遠慮願う」
シャワーを終えて戻ってきたソラにスマホを向けられて咄嗟に顔を隠したけど、視線だけは、なかなか際どい衣装に着替えたソラをとらえていた。
二人ともメイクを済ませ、ウィッグを被ったところで乾杯した。
目の前には画像で見てたままの可愛い女装が座っていて、男だとわかっていても、女として意識してしまう不思議な感覚におちいっていた。
僕は酒に強くない。
缶チューハイ2本空けた時には、気持ちよく酔っていた。
「あーん」
たぶん、ソラは僕より酒に弱い。
つまみにしてたお菓子を、やたら僕の口に詰め込んできた。
気が付くと、二人の物理的な距離も近付いていた。
体を揺らせば、肩が触れ合うくらいに。
そして酒の力は凄い。
お菓子の端だけを口に咥えてソラに差し出すといった、普段なら絶対に出来ないようなことをやっていた。
「今度は僕の番」
僕の口に咥えたお菓子を、反対側から食べたソラが、同じ要領でお菓子を差し出してきた。
僕もそれを反対側から食べながら、もう少しで唇と唇が当りそうだとドキドキしていた。
でも、相手は男友達である。
「ミナトのせいで、変な気分になってきた」
うつむき気味に呟いて、股関を抑えるような仕草をしたソラに、僕も下半身の疼きを抑えられなくなった。
「キ…ク、キス…してみる?」
興奮し過ぎたか、肝心なところで壮大に噛んでしまった。
それをソラが笑い始めたせいで、余計に恥ずかしくなった。
「ミナト、僕とキスしたい?」
「まぁその…してみたい…かな」
「ヤバい、その可愛さ反対だよ」
しどろもどろの僕のどこがよかったのかわからないけど、ソラの唇が僕の唇に触れていることだけは、ハッキリわかった。
キスしちゃった。とでも言いたげな顔で僕を見つめるソラに対して、僕は目を見開いた間抜けな顔だったと思う。
「勃った?」
「ずいぶん前から勃ってるみたいです」
「僕も、そのようです」