俺は俗に言うところの男の娘で、女の洋服を着て出歩くのが趣味だ。
俺は別に男が好きな訳でも、自分の心が女な訳でもなく、単に女の格好が似合うだけの普通の男だ。
でも、いつもの自分と違う人格になれる事は楽しく、特に性別が違うとなお更だった。
その日も部屋で女装を済ませ、夜のドライブを楽しむ事にした。
目的地は隣の市の繁華街。
態々隣の市まで行くのは、知り合いに会わない為で、バレれば今の地位を失う可能性があるからだ。
車に乗った俺は、ハイヒールでペダルを踏む感覚や、シートベルトが胸の谷間に食い込む感覚が新鮮に感じ、信号待ちで隣に停まった車の男達の視線を感じながら高速道路の入り口まで車を走らせた。
俺はそこで、ETCカードを持ってきていない事に気づいた。
普段は財布に入れているカードを、女物の財布に移し替えるのを忘れてしまっていた。
普通の人は女装というと、女の洋服を着るだけだと思うかも知れないが、実際に女装で外出すると、洋服や靴以外にも財布やバッグや携帯のカバーまで女物にする必要があり、愛人を一人囲うくらいの費用が掛かるものなのだ。
俺は家まで帰るのが面倒臭かったので、料金所のゲートでチケットを取り、目的地に向かった。
繁華街の駐車場に車を停めた俺は、街を歩き始めたが、やはり、女の格好をしていると、周りの反応が違って面白い。
俺自身はナンパをした経験はないが、世の中にはナンパをする男が多くいて、俺を女と勘違いして声を掛けて来た。
意外かもしれないが、ナンパされる事は嬉しい事で、特に並んで歩いている若い女がスルーされて、俺がナンパされた時の優越感は癖になる。
勿論、男に興味のない俺は、ナンパ師達を無視していたが、自分が苦労して女装した事を評価してもらった気分になり、隣を歩く本物の女達を見下して歩くのも気持ちいい事だった。
俺の女装は、男の俺が良いと思う洋服を着ていたので、見た目がどうしても男好きする格好になってしまった。
普通の女は、目立つ格好をする事を避ける傾向が強く、流行りでもない限り露出の多い格好をしないものだが、俺はブラやパッドで寄せ集めた胸の谷間や、脂肪が少なく細く引き締まった長い脚を露出させ、腰の括れや体のラインを強調した洋服を好んで着ていた。
そう、丁度キャバ譲の格好に近いものだった。
普通に売っている流行りの洋服は、男が望んでいる形ではない物が多く、もし、街中で露出の多い洋服を着ている女を見つけたら、それは自分から望んで態々その格好をしているので、男を誘っていると見て間違いないだろう。
その日も何人もの男にナンパされ、女としての優越感に満たされた俺は、家に帰る事にした。
途中、高速のサービスエリアに寄ってトイレで用を足したが、繁華街とは違い、女子トイレにいる女のレベルは更に低いもので、俺は女らし過ぎて浮いていた。
たまに、女子トイレや女湯に侵入して逮捕された男のニュースを聞くが、俺は怪しまれた経験がないので、逮捕された奴等が、どんな酷い女装をしていたのか見てみたいと思っている。
因みに、俺は女装で女湯に入った経験もあるが、性器さえ隠していればバレることはなく、簡単に出入り出来たが、男が思ってる程、女湯は良いものではなく、ババアの汚い裸を見るのは苦痛で、楽園ではなく相撲部屋に近い所だったので、もう行く事はないと思う。
サービスエリアの女子トイレから出た俺は目立っていたが、繁華街とは違いナンパしてくる男はいない状態で、羞恥心を失くした爺さんが俺の脚をガン見して来たり、用もないのに俺の周りをうろつくトラックの運ちゃんがいるだけだった。
俺は肉食系ではない彼等の為に、着ていたカーディガンを脱いで、肌の露出を増やし、ベンチに座って彼等を挑発して遊んでいたが、思いのほか男が集まりだしたので、自販機でジュースを買う事を断念してサービスエリアを後にした。
そして、高速の料金所に着くと、チケットを受け取った料金所のおっさんが、俺の胸の谷間を凝視していたので、俺はおっさんをからかう事にし、助手席に置いたバッグ中から財布を探す振りをして、股を開きおっさんにスカートの中を見せた。
俺の視界の端にいるおっさんは、窓から身を乗り出して、俺の体を見る事に必死になっていて、おつりを渡す時には、必要もないのに俺の手を握って来た。
男の俺に興奮しているおっさんが面白くて、俺は笑いながら一般道に出て、飲み物を買う為に大きな駐車場のあるコンビニ立ち寄った。
俺は、露出を抑える為にカーディガンを羽織ろうと思ったが、深夜の郊外のコンビニには客がいない状態だったので、ノースリーブのタイトミニのワンピのまま店内に入った。
コンビニには若い店員が二人いたが、二人ともシャイな感じだったので、缶コーヒーの他にタンポンとコンドームを籠に入れてレジに持っていくと、彼等は俺と目を合わそうともせず、茶色の紙袋に生理用品と避妊具を詰めて、会計の最後にレジの赤い19と書かれたボタンを押した。
店員のお兄ちゃんは、俺を10代の女の子だと思った様で、俺は若く見られた事が嬉しくなった。
俺は気分よくコンビニを出て、自分の車まで戻って来ると、隣にワゴン車が停まっていて、車のない広い駐車場なのに態々隣に駐車している車が気になったが、運転席と隣のワンゴ車に間に体を滑り込ませていると、突然、ワゴン車の後部ドアが開き、俺はワゴン車の中に倒れると、男達に腕を掴まれて車内に引きずり込まれてしまった…