その当時の僕は、自分が普通の人間だと思っていました。
都会でも田舎でもない普通の地方都市に住み、普通の公務員の父と、普通の主婦の母と、普通の中学生の弟と、普通の四人家族として、郊外の普通の住宅地に暮らしていました。
この春入学する予定の高校も公立の普通科…
普通科って、なんか気に障る名称ですが、普通の自分にとっては、その名称を受け入れるしかありませんでした。
そんな僕も生まれた時から普通だった訳ではありません。
幼少の頃の僕を表す形容詞は「可愛い」でした。
親戚や近所の人だけでなく、道行く人からも「可愛い」と言われ続けて育ってきました。
「可愛い」と言うだけで優遇さることが多く、小学校の担任だった女性教諭から贔屓されたり、学校の女子からはアイドルの様に扱われてきました。
同級生と比較して、体の小さかった僕は、イジメの対象になりそうなこともありましたが、そんな時はいつも女子が味方をしてくれて、本格的なイジメに発展することはありませんでした。
また、カメラが趣味の叔父が、僕を被写体に撮った写真が、新聞社のコンテストに入賞したり、テレビに出ている子役やアイドルよりも僕の方が「可愛い」から芸能界に入った方が良いとまで言われていました。
僕は自分が特別な存在だと思っていました。
しかし、中学生になった頃から、体の成長に伴い徐々に僕の可愛さは失われ、今の普通の男子になっていました。
とは言っても、全くの不細工になった訳ではなく、普通にモテていました。
そんな普通な僕は、中学生でも高校生でもない春休みに、普通にゲーセンに遊びに行くことにしました。
着替えの為に開いたクローゼットの中には、普通の男物の洋服に混ざって「可愛い」ワンピースが一枚入っていました。
僕は、そのワンピースが大学受験の為に、先月家に泊まりに来ていた従姉妹のモノであることが、すぐに分かりました。
きっと洗濯したワンピースを、母が間違って僕のクローゼットに入れてしまったのでしょう。
そのワンピースは、普通の男物の洋服の中で、僕には輝いて見えました。
平日の昼間、家には誰もいない状況だったので、僕はそのワンピースに袖を通すことにしました。
僕はドキドキしながら、着ていたスエットを脱いで、ボクサーブリーフ一枚の姿になり、ワンピースを手にしました。
そのワンピースは、青と白のチェックの半袖で、ポリエステル特有のサラサラした感触が如何にも女物の洋服と言った感じで、スカートの部分にだけに白い裏地が付いていました。
僕は、そのワンピースをTシャツを着る様な感じで、頭から被ってみました。
しかし、伸縮性の乏しい素材のワンピースのウエストの部分が引掛り、両腕を通すことが出来ませんでした。
僕は、体型的に男には着ることが出来ないものだと思い、また、これ以上無理をして破いてしまってはイケないと思ったので、ワンピースを着ることを諦めることにしました。
しかし、そのワンピースの持ち主である従姉妹は、お世辞にも痩せている体型ではなく、むしろ僕の方が痩せているくらいでした。
僕は改めて、そのワンピースを観察してみると、左の脇の下から腰のあたりにかけて、ファスナーが付いていることに気付きました。
僕はファスナーを下ろし、先程と同じ様にワンピースを被ってみると、すんなりと着ることが出来ました。
ダボッとした筒を着た感じがしましたが、左脇のファスナーを上げてみると、そのワンピースは体にフィットし、スカートの部分だけがフワッと広がっていました。
初めて着た女物の洋服は、不思議な感じで、特にスカートが揺れる感覚が新鮮でした。
僕は自分の姿を見たくなり、姿見がある玄関まで行くことにしました。
誰もいない家の中なのに、自分の部屋を出ただけで、心臓の鼓動が大きくなりました。
そして、歩く度に揺れるスカートが太ももに擦れ、階段を降りる時にスカートの裾がフワフワと広がりました。
玄関に着いた僕は、ドキドキしながらコート掛けの扉に付いた大きな鏡の前に立ちました。
そこには、少し顔を赤くした「可愛い」女の子が立っていました。
鏡の中の女の子は、恥ずかしそうにこっちを見ていて、胸元の開いた襟からは綺麗なデコルテが見え、トップス部分がウエストにピッタリと貼り付いていて、裾の広がった短いスカート部分が、ウエストの細さとスラっとした脚の細さ強調していました。
僕は生まれて初めて女の子を可愛いと思い、鏡の中の女の子を好きになってしまいました。
鏡の中の女の子は、色んなポーズを僕に見せてくれて、体の動きに合わせてスカートの裾がヒラヒラと揺れる感じがとても可愛く感じました。
しかし、鏡の中の女の子には胸の膨らみが無く、時折見えるスカートの中も可愛いショーツではありませんでした。
すると、家の門扉の開く音がし、玄関ドアの磨りガラスに人影が映りました。
ガラス越しのシルエットで、母が買い物から帰ってきたことが分かりました。
僕は我に返り、急いで二階の自分の部屋に戻り、着替えを見られない様にベッドの中で着ていたワンピースを脱ぎました。
そして、ワンピースを布団の中に隠し、スエットを着る為にベッドから出るとボクサーブリーフの前が大きく膨らんでいることに気付きました。
僕は慌てて、スエットを拾うと、またベッドの中に潜り込み、布団の中でスエットを着ました。
服を着終えると同時に母が僕の部屋に入って来ました。
母は、お昼ご飯を買ってきたので、いい加減に起きる様にと言って部屋から出て行きました。
僕は布団の中から返事をしましたが、母の前に出る前に、下半身の状態を平常時に戻さないといけないと思い、ティッシュをとりベッドの中で処理をすることにしました。
履いたばかりのスエットとボクサーブリーフを脱ぐと、今まで見たことが無い程に大きくなった僕のモノがそこにはありました。
破裂しそうなくらい大きく膨張したモノを触ると、とても熱くなっていました。
3月下旬で、まだ肌寒い時に半袖のワンピース一枚でいたので、指が冷たくなっていて、自分の手で触られている感じがしませんでした。
僕は、鏡の中の女の子の事を思い出しながら処理をしました。