ずいぶん昔、本格的な女装に目覚める前のことです。
女装といっても当時は室内でセーラー服を来たり、せいぜいブルマーやスクール水着を下に着込んで出かけるくらいしか出来なかった私です。
ある夏の日の晩に上半身はグレーのタンクトップ、下半身は緑色のブルマー(中体連推奨のcat's eye)を穿いて愛用のミニバイクで夜のドライブに出かけることにしました。ブルマーなんてサドルに股がれば短パンくらいにしか見なされないと考えてたんですね。それに居住地の学校では濃紺色が主流でしたから、「まさか緑色のブルマーだとは誰も気づかないだろう」という読みはありました。
まだノーヘルの時代、アポロキャップを目深に被り素顔を分かり辛くして、交通量の少ない通りを選びながら人通りも気にしつつ、とあるアダルトグッズ店に向かいました。
時間は夜10時過ぎ、目的の店横の駐車場にミニバイクを停め中に入りました。入り口でアラーム代わりの音楽が鳴り、奥から店長らしきオジサンに「いらっしゃい」と声をかけられました。
コの字型に並んだガラスケースを囲むような通路の間取りでしたが、店内はかなり狭かったです。それでも壁の棚はエロ雑誌や写真に覆いつくされてて、店内は仄かな香水と共に華やいだ感じがしてました。
客は私一人でしたし、雑誌よりもアダルトグッズに興味があったので、通路内側のガラスケース内が気になり一歩ずつ歩いて何があるのか確かめることにしました。しばらくすると『ガラス浣腸器(100㏄用)』と書かれた長細い箱が目に止まり、私は自分自身何となくソワソワ、ワクワクし始めるのを感じました。
さらに進むと何種類ものバイブレーターが並んでおり、その中のコード付きリモコン『ナポレオン』というストレート型が気になり、店長らしき男性にケースから取り出してもらい間近で見せてもらいました。
意外に愛想良く応じてくれ、本体に新品の乾電池を入れて間違いなく動くのを確認してから細々と説明してくれたので、私は早速これを買うことにしました。
そして先ほどのガラス浣腸器もケースから取り出して見せてもらいましたが、高額だったため買おうか買わまいか悩んでいたところ、不意にアラームが鳴り他の客しかも男女のアベックが現れてしまいました。
こういう店は他に人がいると気恥ずかしくてなかなか購入する気になれないもんです。特に若い女性客がいると余計ですね。しかも私の場合、相手らは気づかないかもしれませんが、短パン代わりとはいえ女子学生用のブルマーを穿いてましたからね…なかなかの変態さんだったと思いますよ(笑)。
狭い店内、今ならソーシャル・ディスタンスですか。最初の内は近づき過ぎないようお互いショーケースの周りを反対向きに一歩ずつ進むような流れでした。
しかし壁側の雑誌をキョロキョロしながら見て歩く彼らと最後は出会い頭になってしまい、私は仕方なく道を譲るようにお尻を向けて彼らを背にして、女性からは小声で「すみません」と言われました。
とはいうものの、振り向きざまに目をやると何だか怪訝そうな顔してるではありませんか。私は不審に思いつつガラスケース内を物色し続けてました。
店長は奥のレジカウンターで私が頼んだバイブを箱に戻し包装し始めるところでしたが、見るとガラス浣腸器は出しっ放し。私は「(このせいか?)」と察し、急に小恥ずかしくなり「これもお願いします!」と精算を頼みました。
高い買い物でしたが一刻も早く店を出たくなり、代金を払って商品を受け取り急ぎミニバイクに。バイクの籠に入れると振動で破損の恐れがありましたから、ハンドルに買い物袋を垂れ下げて、あまりスピードを出さないようにして帰路につきました。
自転車小屋にミニバイクを置き、自宅アパートのドアを開けてこれで一安心。荷物を床に下ろしてスニーカーを脱ごうとしたらビックリです。よく見るとブルマーの太股から白い下着がはみ出てるではありませんか。私はその時になって赤面せざるを得ませんでした。何故なら白い下着の正体は穿き口にフリルの付いた女性用でしたから。
女子高生や女子中学生らが恥ずかしがってたブルマーからのいわゆる “ハミパン” 。恐れながら身をもって体験させて頂きました。