18歳の時の話を書きます。
私は東京の短大に入学しました。田舎の静岡から一人見知らぬ土地で一人暮しを始
めたばかりの頃の事です。
私は慣れない土地で慣れない生活をしていたせいか、体調を崩して2日程入院して
しまいました。実家から母がやって来たりして一時は本当に大騒ぎでしたが幸い大
事には至らず、点滴を数本してもらい薬をもらってすぐに退院することができまし
た。退院した日の夕方、東京駅まで母を見送った後アパートに帰ってくると、ポス
トに何か入っていました。それは、短大で同じゼミを受けていた奈々さんからの手
紙でした。奈々さんとは何度か話をしたことはあったのですがあまり親しくない関
係の人だったので驚きでした。そういえば先日奈々さんと住所の交換をしたっけ、
とふと思い出しました(当時は携帯なんてありませんでしたから)。
手紙を見てみると、私が入院したと聞いて大変心配している、退院したら是非電話
をかけてほしい。という内容の文章と、その下に奈々さんの自宅の電話番号が記さ
れていました。私は早速奈々さんに電話をかけました。
電話には奈々さんが出ました。「奈々さん、今日退院したの。わざわざお手紙あり
がとう。心配かけてごめんね」言うと奈々さんは「本当に大丈夫?無理しないで。
あ、そうだ。恵ちゃんち、うちから結構近いじゃない。体調よければ今日うちに来
ない?」と言いました。私はうれしくて「本当に?いいの?」と聞くと奈々さんも
うれしそうに「いいわよ、じゃ、決まりね。あー楽しみ」と言っていました。
奈々さんのお宅は閑静な住宅街にあり、私のアパートから徒歩で5分ほどの場所に
ありました。その日私は奈々さんと奈々さんのご両親と夕食をご馳走になり、奈々
さんのお部屋で一泊することになりました。
奈々さんのお部屋は女の子らしい奈々さんのイメージとは違い、殺伐としていて男
の子のような部屋でした。着ている服も普段は女の子らしいのを着ていますが、休
日は男の子のような格好が好きだそうで。「へえ、奈々さんって意外と男の子みた
いなんだ。もっと女の子らしいかと思ってた」と私がつぶやくと、奈々さんはなぜ
か涙目になっていました。「えっ?」と思うとほぼ同時に奈々さんが言いました。
「ねえ、もっと女の子らしいほうが恵ちゃんは好き?こんなんじゃ嫌?」
その言い方がすっごくセクシーで、上目遣いで、私が男の子だったらぎゅ-って抱
きしめていたのに・・・なんて一瞬のうちに思っちゃいました。あわてて話をそら
しましたが、あのとき黙ってみつめあっていたら、と思うとちょっと複雑です。
それから奈々さんは変な行動をよくするようになりました。おふざけでキスしよう
としてみたり、普段男の子にも見せないような甘えた声を出してみたり、抱き着い
て来たりしたり、二人で並んで歩く時はいつも手をつなごうとしたり・・・奈々さ
んの気持ちがよくわからないまま時は経って、私にも彼氏ができました。彼氏が出
来たことを奈々さんに報告すると、奈々さんは大粒の涙を流しながら私に言いまし
た。
「・・・私、恵ちゃんのことが好きだったの・・・」
どうすればいいのかわかりませんでした。と同時に今までの奈々さんの奇行の意味
がどういう意味だったのかを知ってしまいました。奈々さんはごめんね、ごめんね
と何度も私に謝りました。なんで?なんで奈々さんが謝るの?むしろ奈々さんの気
持ちに気づかなかった私が謝るべきなのに・・・うつむいて涙を流している奈々さ
んを見ているうちに、私の中でなにかか弾けるような感覚がありました。そし
て・・・奈々さんにキスしてしまいました。 奈々さんは泣きながらキスに応えま
した。舌も入れて、吐息が甘く感じられ、我を忘れて奈々さんの唇を奪いました。
どれくらいの時間キスをしていたでしょう。あんなに濃厚でときめくようなキスを
したことは後にも先にもそのときだけでした。その後奈々さんはいつもと変わらず
接してくれ、とてもうれしかったです。それから数年後、私はそのとき付き合って
いた彼氏と結婚し、子供も設け今に至ります。 もう20年も前の話でつまらない
文を長々と書いてすみませんでした。