あの子は優しい子だった。私の悩みをいつも聞いてくれた。私はそんなあの子がい
つの間にか好きでたまらなくなってた。つらい事があったらいつも、あの子の事を
思い出して立ち直っていたから。あの日、あの子の家に遊びに行ったら、鬱病の私
を慰めるためにいっぱい綺麗なCDを聞かせてくれた。ああ、隣に大好きなあの子が
いるんだ。私より小柄で、可愛くって、でも頼りになって暖かくて。
「抱きついていい?」あの子は戸惑いながらも受け入れてくれた。きっと拒否すれ
ば、わたしの精神状態がどうなるかわからない状況だったからだろう。そんなあの
子のうなじにそっと唇をあてて舐めた。いとおしかった。胸をまさぐると、驚いて
逃れてしまった。でも、結局決定的な拒否はしなかった。いや、出来なかったのだ
ろう。今ここにあの子がいる。私の腕の中にあの子がいる。私はそれだけで幸せだ
った。どんな男の愛撫より、どんな男のキスより、ずっと気持ち良かったのだ。た
だそれだけの事でも。
もうあの子とは二度とあえない、会わないけれど。
「鬱は愛情をこの上無き憎しみへと変えた。」
私のカラダにはあの子への届かない思いが、叫びが、何百本もの傷跡として。
もし私の事を知っている人が、あの子がこの文を見たら・・・軽蔑するだろうが。