大学時代のこと。
大学入学で、田舎から東京に出てきたものの、兄弟が多かった我が家では毎月仕送りできるほどの余裕はなかった。
奨学金とバイトで何とかやりくりしていたものの、やはり支出が多かったりする月は家賃が払えないこともあった。かといって、次の月に2倍払えるほどの収入もなく、少しずつ滞納分が増えていった。
2年契約の2年目の8月頃、バイトはなかなか増えず、家賃は30万円分ほどたまってしまっていた。
大家さんは優しい人であまり催促に来ない人だった。元スポーツ選手で大成しなかったために30代半ばで引退して、現役時代にためたお金でアパートを買って生活の足しにしているらしかった。
まあ、独身で、今考えるとガッチリとした「いかにも」という感じの人だった。
アパートの隣の敷地に大家さんの家があった。
そんな8月の家賃を払う日に、大家さんが家に来た。
「ちょっと、入れてもらえるかな」
断る理由もないので、上にあげた。大家さんは少し申し訳なさそうな顔で切り出した。
「すごく言いにくいことなんだけど…ちょっと滞納金が多いから、大家の僕としてはそろそろ払ってもらうか、出て行ってもらうかしてもらわなきゃいけないんだよね。シュンスケ君が苦労してるのはすごくわかるから、悲しいんだけど。」
予感はしていたものの、実際通告されてみると事態は深刻だった。
金はないし、バイトもなかなか入らない。仕送りは頼めない。でも、出ていくとさらにバイト見つけが大変になる。
「もう少しだけ、待ってくれませんか?来年の3月までにちゃんと滞納金がなくなるようにしますから。」
難しいと思ったが、とりあえずお願いしてみた。答えは意外なものだった。
「できないことはないけど、なんていうか、代わりにお願いがあるんだよね。」
なんとか突破口がありそうだった。ただ、次に大家さんの口から出てきたのは衝撃的な一言だった。
「もう、まあ、出てくかもしれないから打ち明けちゃうし、別に隠してるわけでもないから聞きたいんだけど、シュンスケ君って、同性同士のセックスとか興味ある?」
「…は?」
思わず聞き返してしまった。が、心当たりがゼロではなかった。カッコいいのに独身だし。
「もし興味あるなら、しばらくシュンスケ君を好きなようにしてよければ、それで家賃の相殺してあげられると思うけど。」
「愛人になれってことですか?」
思いのほかすんなりと愛人という言葉が出てきた。
「うん。でも別にホントに脅してるわけじゃなくて、断ってもすぐに出てけとか言わないけど。シュンスケ君かわいいと思っててさ。」
言われてみると、自分に興味があるのかわかんなかった。大家さんはカッコいいし、さわやかな人だったので、そんなに抵抗感がないのも事実だった。
「どんなことするんですか?」
内容を聞いてみようと思った。
「そうだな…変態に聞こえるかもしれないけど、シュンスケ君をどんどん調教していきたいかな。痛いこととかはしないけど、俺、少しS気味だから。」
「…少しだけ、考えてもいいですか?」
とりあえず、考えてみようと思った。
「わかった。興味なければ、忘れてもらっていいからね。もし、決心できたら、家まで来てくれ。」
その日の夜、大家さんの家の前に僕はいた。
(もし、やっぱり無理なら、断って、出ていこう。でも、大家さんみたいな人なら…)
そう思っていた。インターホンを押す。待っていたかのようなスピードで大家さんがドアを開けた。
「来てくれたんだ。」
彼は嬉しそうだった。中に入ると、小ざっぱりとした部屋で、整理整頓されたきれいな部屋だった。
部屋に入って、すぐに僕は言った。
「まだ決心がついたわけじゃないんですけど、物は試しと思って…」
大家さんは普通に笑って、
「そりゃ急じゃ無理だよね。今日で嫌なら、やめていいから。」
「はい…」
「じゃあ、始めようか」
大家さんは大きなベットのある寝室のドアを開けた。