妹が全てを俺に話してくれるのは俺に全部を委ねたうえで生きていく覚悟ということなのかも知れない。
別れたDV亭主は結婚当初は妻を殴ったりする男ではなかったようです。勤めていた会社が倒産して無職になり、バイトをしながらの仕事探しもなかなか進まず、ようやく見つけた就職先がコロナでまた廃業。酒を浴びるように飲む毎日、人間が変わって行ったと言います。
酔っては大声で喚き妹を殴り、ものを投げつけ、ひとしきり治まると今度は娘の前で妹を犯した。せめて隣の部屋でと頼む母親にヘラヘラと笑いながら固まっている娘に向かって
「ちゃーんとみてろよお~?、パパのチンポ、ママのオマンコにいれるからなぁ~?」
悲鳴をあげながら暴れて嫌がる妹を押さえつけて…………
体育座りで壁に寄りかかり膝を抱えてうずくまっている幼い娘と目が合ったとき、◎◎◎のために亭主から逃げなければならないと思ったという。でも、酔いから覚めた亭主はまるで別人のように優しくなり、蛮行を謝罪もするために踏み切れずにいたのだと。
その頃から
「にいちゃんの事を考えてたなぁ……」と言う。その時になぜ直ぐに俺に、と、言う言葉は飲み込んだ。したくてもできなかったんだろうと思ったから。
酒に入れる氷を取りに冷蔵庫を開けようとキッチンに来た亭主は妹の調理中のフライパンで火傷をする。娘が足に絡んだためよろけて手をついた所に焼けたフライパンがあった。
風呂上がりでキャミとパンツだけの娘の背中にフライパンを振り上げると叩きつけた。
肉が避け、血を流す◎◎◎を抱き抱えてアパートを飛び出した妹。
「救急車とかは?」そう俺が聞くと、直ぐにでもあそこから逃げなければ◎◎◎が殺されると思ったという。
幸いにアパートのすぐ近くに夜遅くまでやってる整骨院があって、そこに抱えた娘を連れ込んだ。
簡易的な応急処置のあと、医者が自分の車に乗せて友人の開業医へ電話をして受け入れさせてくれた。
傷を縫い、出血を止めてレントゲンを撮ったけど幸いに骨までは行っていなかった。
ただ、もちろん病院から自動的に警察に通報があり、亭主は連行。
妹はとうとう離婚を決意したんです。
その時も俺の事を考えていたと言います。その後の辛い日々の中でも、苦しいたびに俺に助けを求めたいと考えていたと……。
娘の学校給食費すら払えなくなったとき、◎◎◎のためにようやく俺に援助を求めてきた妹。
旅費もないという。仕事を休んでソッコー迎えに行ったアパートは家賃も滞り、電気もガスも止まっていた。辛うじて水だけは出ていた。
妹は激しい目眩と脱力感、そして極端な視力の低下、つまり急性の栄養失調になっていた。
アパートの不動産屋に滞納した家賃を払い、ガスと電気代を払い、水道代も払ったその日は三人でホテルに泊まり、翌日には産廃を手続き、全てを廃棄して俺のワンルームに二人を連れて来た。
取りあえずホテルに泊まるように勧めたけど妹が俺のところがいいというので、リサイクル屋で見たことのある組み立てのベッドを買ってきて、ホームセンターで毛布や枕など買い込んで、マジで忙しかった。
姪っ子の転校手続きなど転出先とこちらの市役所を往復し、その週はほとんど会社を休んでいた。
そして、ようやくいま、三人で落ち着くことができている。
こんなアホな兄を、叔父をパパと呼んでく!ている。
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