千佐子は多分、沙絵からは何も聞かされてない。
とすれば、真実は私の口から聞き出すしかないけど、
聞き出すことに、真実を知ることに意味があるのかな。
あるなら何とかして確かめるけど、大して意味が無いなら今更ほじくる話でもないですよね。
私が知る限り、沙絵が私の前で泣いたのは一度だけ。
私の女の子へのイタズラで責められた時に言った
「そんなことゆーならおねーちゃんだってさぁ……」
あの男と……と、言いかけてやめたときに
「かによっ!私が何だってゆーのっ!」と凄んだあと、急に顔を歪めて泣き出して
「私が、、わたしが、あんたたちのために……どんなにさぁ……、、」
あとは涙で喋れなくなり手にしたノートか本だかを私に投げつけると
「デテケーツ」と叫んだ、あの時が最期です。
一言一句忘れられません。
もし、幼いときに既に叔父である父親に何かをされていたなら、そんな母親のルーズさから招き入れたあのクソッタレと、……
始めての男が母親の兄だとしたら、しかもそいつが自分を作った父親だとしたら、それを知っていたとしたら、沙絵の地獄は想像も出来ない苦しみだったに違いないんです。
そして、今も何一つ傷は癒えずに血を流し続けているとしたら……
私の思い過ごしであって欲しい。
もし、万が一、その通りだったなら、
私達の罪は……
私たちは、この血をどこかで断ち切らなきゃならないんじゃないのか。
母は、その罪を背負い苦しんで生きる事が償いでしょう。
でも、私達は違う。
沙絵と私に流れている汚れた血は……
優美は千佐子の血を受け継いだ者です。
きっと……幸せになる。
推測では何も始まりません。
確かめないと、 何とかして確かめないと。
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