だけど妻は自分に自信がなかった。
周りには沙絵に憧れる女の子達がいつも取り巻いていて自分など相手にしてくれる筈がないと勝手に思い込んでいたようだ。
それでもバレンタインデーには一生懸命に手作りのチョコを手渡すことに成功、沙絵から言葉をもらった。
「ありがとう、たしかチ◯コちゃんて言うんだよね」
自分の名前を知っていてくれたことに嬉しすぎてその夜は眠れなかったと言う。
「いつもバスケを見に来てるみたいだけど、バスケが好きなんだ」
そういう沙絵の言葉に思いきって言ったのだと……
「うん、沙絵ちゃんを見に来てる……」と。
沙絵が(あ?)と言う顔をしたので慌てて「あ、ごめんなさい!私なんかが、邪魔ですよね、気を付けますね」
沙絵が笑って頭を撫でてくれながら「邪魔ってなに?そんな事ぜんぜんないよ」
そして髪を手にして「長い髪だなぁ、きれい……」と。
もう舞い上がってしまいそのあとの会話など殆ど覚えていないと言う。
それからも部活を見に体育館へ足を運んだがレズの相手に悟られると困るのでなかなか大胆には近づけなかった。
もうすぐ2年へ進級するころ、いつものように体育館で寒い中でも汗だくで走る沙絵を見ていると沙絵が明らかにボールを故意に投げてきた。
走り寄る沙絵にボールを手渡すと沙絵に囁きかけられた。
「あした、うちに来いよ」
「え?、あ、はいっ!」
目を見開いて顔をみるみる赤らめた妻に笑顔を見せると「じゃあな、昼頃な」
走り去る沙絵の後ろ姿を見ながら嬉しさと、いつも来ている沙絵を取り巻くファン達への優越感でイッパイだった。
その翌日、目一杯のお洒落をして、手作りのケーキを持って玄関のチャイムを押したのでした。
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