「二人で飲むのって初めてだっけ? 」
滑川さんがジョッキを一気に半分空けてから言った。私が、そうだ、と答えると、
「イエーイ! お初だお初だ」と、かなりのハイテンションでまた乾杯を求めてきた。
「滑川さんて、前はこんな感じじゃなかったよね」
「前って、いつ」
「一回生の前期」
「うわぁ。いつの話をしてるんだ、君は」
タコわさが辛かったのか、変な顔をしながら彼女が言った。
「女は変わるのだよ、常にね。そういう池田くんは変わんないね」
「そう? 」
「うん。ずぅっとこんな感じ。ね、ね、彼女とかいないの」
早くも二杯目のジョッキに入っている彼女は、よく飲みよく喋った。
「いないよ。二回生の最初に少しだけ付き合っていたけど、すぐに別れて。それからは全く」
えー!?、誰誰、と滑川さんは私の恋愛話に食い付いた。
あまり広がらないよ、と断り少しだけ説明し、ちょっとだけ盛り上がった。同じ学部の目立たない子と付き合っていたのだが、滑川さんはその子を知っていたのだという。
「俺のことより滑川さんは誰と付き合っていたのさ」自分の話が照れ臭くなり、彼女に話題を振った。
「あたしは外部が多いからなぁ。同じ大学だと・・・」
腕を組み天井を見上げ勿体ぶって考えている滑川さんをみて、ちょっと可愛いな、と思ってしまった。
今の今まで本当にそういう目で見ていなかったのだが、彼女のペースで飲んでいたのでいつも以上に早く酔いが回ってきたのかも知れなかったが、彼女の次に発した言葉に、酔いは何処へと消え去った。
「公平くん。あ、沢木くんて言った方がいいかな」
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