まだ、独身で、セリカSS-ⅡTRDsportsMという特別仕様車に乗ってた頃の話。
毎朝、幹線道路に出る交差点で、俺は右折レーン、彼女は直進レーンで、週に2~3回隣になる女性がいた。
可愛いなあと思ってたけど、どこの誰かはわからなくて、声をかけようにもかけられない状態だった。
ある日、会社の先輩の結婚披露宴会場で、新婦側で出席してた彼女を発見、席次表で愛美さんというのが分かったけど、いkなり声かけても誰?ってなるよなあと思ってチラ見するにとどめてた。
二次会で俺は受け付けを遣ることになってて、入口の受付の椅子に座ると、新婦側の受付が愛美さんで、
「朝、時々お見かけしますよね。青いセリカの方ですよね。」
俺の一方的なことだと思ってたら、向こうも気になってたみたいだた。
当時はまだラインは無くて、メルアド交換して、二次会でも少しお話して、セリカに乗りたいってなって、翌週末、二人で会った。
あのセリカ、フロントがマルチリンクのスーパーストラットサスで、峠道のコーナリングがスパッと切れて、しかも地を這うようにあまりロールしなくて、でも、お世辞にも乗り心地がいいとはいえない車だった。
何度か会ううち、少し遠方にドライブに行って、メルヘンなラブホに入った。
清楚なイメージの可愛らしい愛美、脱ぐと華奢な身体で、形はいいけど小ぶりな胸は、ちょっとロリっぽい感じだった。
少しづつ焦らすかのような服の脱ぎ方は、恥じらいだろうが、かえって興奮させた。
清楚なイメージだけど、ラビアが明らかに使用感があり、開くと綺麗なピンク色。
一生懸命にフェラ、そのあとはお返しのクンニ攻撃。
まずは正常位で挿入した後は、騎乗位、しかも開脚で結合部が丸晒し、最後は正常に戻って見つめ合うと、うっとりする恍惚の表情は、さぞかし気持ち良かったのだろう。
最後、素肌の上にシャツを羽織るなど、可愛い女の子がやるからこそそそられるという物だなあと思った。
凄く楽しいお付き合いで、年齢は愛美が2歳年下、甘え上手な女の子だった。
とても尽くしてくれる女の子だったんだけど、俺の方が尽くされ下手というか、そこまでやってくれなくても、自分でできるからみたいな感覚になってしまってた。
尽くしてくれるのは、ありがたい話しなんだけど、
「ああ、大丈夫。自分でできるから。」
って何度も言うようになってて、ある日、
「もしかして、私、ウザい?」
って愛美が口にしたとき、しまったと思ったけど、愛美から笑顔が消えたんだ。
あの日から、愛の終わりを感じ始めた。
次に会ったのが最後になって、セックスしてても、愛美の身体が冷たく感じたんだ。
ラブホを出て、夕食を食いに行って、セリカで愛美の家のそばのコンビニの駐車場まで送って、愛美が車を降りるとき、
「今までありがとう。無理して付き合うことないよ。もっとウザくない女の子、見つけてね。元気でね。さよなら。」
「ま、愛美…さよなら…」
ドアが閉まる寸前に行ったから、俺の声が愛美に届いたかは分からないけど、あれが俺たちの2年の愛の終わりだった。
アパートまで帰ってきて、部屋に入って、電気をつけてカーテンを閉めた。
カーテンを握る手が震えた。
薄い緑のカーテン、愛美が選んだカーテン、もう、愛美はこのカーテンを見ることが無いんだなと思ったら、涙が溢れた。
あの後、1度だけ愛美を見かけたことがあった。
愛美と別れて更に2年、俺には新しい彼女がいて、愛美の時よりも燃え上がる恋ではなかったけど、穏やかで、安らぐ恋だった。
その彼女が後の女房になるんだけど、その時はまだ結婚話は出てなかった。
土曜のお昼、サッポロ一番みそラーメンを作って、上にレバニラ炒めをのっけて食い終わり、キッチンで洗いものしてたんだ。
キッチンの窓って、外に鉄格子があるから10㎝くらい開けておくんだけど、そこから、俺の部屋を眺めてる女の子がいたんだ。
一目で愛美と分かったよ。
道路の向こう側だから、距離はあったけど、身体つきと仕草は昔のまま、2年間愛した人だからわかった。
駐車場にセリカがとまってたから、俺がいると思って眺めてたんだろう。
5分くらい眺めてた愛美、ポシェットからハンカチ出すと、涙を拭いて、ゆっくり俺の部屋に一礼して、去っていった。
携帯電話を開いて、愛美のメルアドを見て、でもやめて携帯を折り畳んだ。
もう、姿が見えなくなった真美に、キッチンの窓から、
「さよなら。幸せになりなよ…」
と呟いたら、俺の頬を涙が伝った。
好きだったんだよ、間違いなく愛美のことは好きだったんだよ。
でも、俺と愛美は相性が合わなかったんだなあと思って諦めたんだ。
愛美を見た半年後、愛美と別れてから避けてた、共通の友達と仕事の帰りに立ち寄ったショッピングモールで顔を合わせて、避けたらわざとらしい距離でバッタリだったから、軽く会釈して通り過ぎようとしたら、呼び止められたんだ。
「あのさ、一応教えとくよ。愛美ちゃん、2か月前に結婚して、この街を出て行ったよ。優しそうな旦那さんで、愛美ちゃんを凄く可愛がってたよ。だから、安心していいよ。じゃあね。」
「そ、そうだったんだ。ありがとう…」
半年前、愛美は結婚が決まって、俺に最後のお別れに来たんだと思った。
その日の夜、ショッピングモールからの帰り、ウィスキーを買って帰って、部屋でひとり、しみじみと飲んだ。
ガラケーに残る、愛美の写真を眺めて、m並みに哀しい思いをさせてしまったことを詫びた。
愛美が選んでくれた薄緑のカーテン、グラス片手に手のひらで触って、部屋を見渡すと、愛美が俺の歓ぶ顔が見たくて買ってきてくれたものがあちこちにあって、愛美に愛されてたんだああと、目頭が熱くなった。
実家済みの愛美だったから、この部屋で一夜を明かしたことはなかったけど、押し入れを開けると、愛美が好きだったクッションがあって、それは今の彼女には触らせてなかった。
今の彼女には、今の彼女用のクッションがあった。
女房と結婚して、あのアパートを出た。
その時、愛美が好きだったクッション、愛美が選んだ薄緑のカーテンは処分した。
愛美が俺のために買ってきてくれた、コースターなどの小物類は、愛美の思い出に、箱にしまった。
結婚するとき、セリカから、モデル末期になってたアルテッツアに乗り換えた。
もう、2ドアクーペじゃない方が、いいと思った。
子供が生まれて、その子供たちが育ってきて、部屋を与えるべく郊外に移り住んだ。
今は結婚して20年、子供たちも手がかからなくなってて、俺もアラフィフ、女房とは仲のいい夫婦やってる。
先日、セールのチラシが入って、十数年ぶりに、昔仕事帰りによく行ってたショッピングモールに行ってきた。
ここで、愛美の結婚を知ったんだっけなあと、ふと、愛美のことを思い出していた。
20代前半の若かった俺は、愛美の愛を受け止めきれなかった。
帰り、ちょっと回り道して、結婚するまで住んでたアパートの前を通ってきた。
「懐かしいわね。ここ、あなたが結婚する前に住んでた街よね。あのアパートだったよね。薄緑のカーテンだったっけな。」
女房は、俺の恋人だった頃の思い出に浸っていた。
俺は、哀しい思いをさせてしまった愛美の思い出に浸っていた。
だから、先に結婚した愛美が幸せでいてくれることを信じて、ここに愛美との思い出を書き込み、愛美に懺悔したい。