去年、転勤で12年ぶりに戻った本社のある県庁所在地、やっぱり都会は便利でいいや。
12年前はまだ独身で、一人でこの街を出たけど、今度は嫁さんと子供たちを連れて戻ってきたよ。
12年前まで住んでた懐かしい私鉄沿線に、家を借りた。
12年前に住んでたアパートの最寄り駅より、市街地まで三駅遠くなっちゃったけど、でも、郊外に借りた家は小さいながらも庭があるし、嫁さんは家庭菜園始めて楽しそう。
去年、昔住んでたアパートがあった駅で降りて、懐かしい街をブラついたんだ。
12年前と変わらない風景がそこにあったよ。
途中、昔よく行ってたコンビニで週刊誌を読んでたら、昔恋人だった君がやってきた。
君はまだあのピンクの自転車に乗ってて、コンビニの前にとめた。
左手薬指の指輪で、結婚してることは分かった。
このコンビニに来るってことは、君は、実家の近所に住んでいるのかな?
色々話したいことや、ききたいことがあったけど、声はかけなかったよ。
君が飲物のコーナーに行ったのを見届けて、週刊誌を買ってコンビニを出た。
この街で、君と過ごしてた頃を思い出しながら歩いた。
出会いは合コン、僕は大学出て1年目、君は短大出て1年目のOL、勤め先は違ったけど、二人とも新入社員だった。
僕の住んでたアパートが、君の実家のそばだったことで意気投合して、連絡先交換して、後日二人で会ったのが始まりだったよね。
河原の橋の下の公園で初キス、その河原を見下ろすリバーサイドホテルで初エッチ。
初めて裸を見せ合ったのに、一緒にお風呂に入ってイチャついたっけなあ。
21歳の君のオマンコ、可愛くてずっと舐めてて、
「もう勘弁してぇ・・・」
って真っ赤な顔で言われたっけ。
君がしてくれたフェラ、ジュルジュル唾まぶしてイヤらしくて、元彼の仕込みを感じたよ。
コンドームして挿入、初めて一つになった二人なのに、息がぴったりだった。
僕の律動にシンクロさせた君、おっぱいが上下に揺れてた。
君の喘ぎ声と愛液の奏でる淫らな音が、部屋に響いてた。
僕の背中に腕を回して、唇を求めてきた君と、キスしながら射精した。
二人とも汗だくだったっけ。
会うたびセックスして、君はクンニでクリイキをするようになると、淫乱が開花していったんだ。
いろんな体位も試したし、鏡の前で結合部を見ながらとか、エロいセックスしてたよね。
お互いの性器を見せ合い、弄り合い、羞恥と快感を分かち合う特別な関係が嬉しくて、いつしかコンドームをしないで生挿入して、君のお腹に射精するようになってたっけ。
君は、君のお腹にビュービューと射精する様子を眺めるのが好きだったよね。
付き合いも3年目になると、安全日には君の中に射精して、可愛い君のアソコからドロドロと精液が流れ出るのを見るのが、僕は大好きだったんだ。
僕のアパートと君の実家は、例のコンビニを挟んで500mくらいの距離で、いつも君を送りながらコンビニで買い物して、コンビニの前でさよならしてた。
僕も君も、あのまま結婚すると思ってた。
君は凄く優しい女の子で、僕に尽そうとしてくれた。
その愛情は凄く感じたけど、それがだんだん重く感じてきたんだ。
気持ちはありがたいんだけど、もう十分尽くしてもらっているから、もういいよっていう態度でいたら、君、涙を流して・・・
「どうしてわかってくれないの・・・」
って言ったんだ。
尽すこととおせっかいの差が、君には分からないように僕には思えたんだ。
僕は、君の気持がよくわからなくなっていった。
君は、そんな僕に気持ちを伝えようと、益々おせっかいな尽し方をするようになった。
ある日、僕は言ってはいけないことを言ってしまった。
喫茶店でランチしてるとき、君の世話焼きにイラッとして、
「大丈夫、自分でできるから。」
「でも、ほら、こうした方が・・・」
「だからいいって!鬱陶しいんだよ。それ以上されるとウザいのっ!」
この後の十数秒の沈黙は重たかった・・・
「あたし、ウザいんだ・・・鬱陶しい女だったんだ・・・知らなかった・・・」
しまった!と思ったけど、一度言葉にしたら、それを取り消すことはできなかった。
「ごめんね・・・ウザくて鬱陶しい女と3年も付き合ってて、辛かったね・・・3年間、ありがとう・・・もういいよ。無理しないで。お別れしよ・・・」
「あの、俺・・・」
「もういいから。気持ち、わかったから。ここでお別れしよ。すぐにお店、出ていって。ひとりにして・・・さよなら・・・」
僕は、何も言えなかった。
黙って席を立ち、伝票を握ってレジに行って、支払いをして店を出たんだ。
通りに出て、ふとガラス窓から店の中を覗くと、椅子に座った君が両手を膝の脇について、テーブルに顔が付くぐらい俯いて、肩を震わせて泣いていた。
歯を食いしばったその表情は、とても悔しそうで、テーブルに涙がポタポタ落ちていた。
僕は、胸が抉られる思いで、その場から走って逃げたんだ。
最低だった。
僕は、きっと最低の元彼として、君の記憶に残ったんだ。
君との付き合いは、3年で終わりを迎えた。
君と顔を合わせるのが辛いから、例のコンビニにはいかなくなった。
通勤も、一つ早い電車にした。
それでも、同じ生活圏にいたから、たまに君を見かけて辛かった。
別れて半年後、転勤の打診を受けて、県庁所在地を去った。
君との思い出の品々をすべて処分して、
「さよなら・・・さよなら・・・」
と泣きながら荷造りした。
昔住んでたアパートの前に佇んで、いろんなことを思い出してた。
あの部屋で君を抱いたこと、そして泣きながら荷造りしたこと、若くて、器の小ささで君を傷つけてこの街から逃げた僕の情けない過去・・・
コンビニで君を見かけて、今でも同じ街に元気で住んでると知ったら、嬉しくなった。
二人とも別な人と結婚したけど、お互い、幸せになれればいいな。
そんなふうに思いながら、懐かしいアパートを後にしたよ。
君のことは、嫌いになって別れたわけじゃなかったから。
切ない思い出として、少し美化されてるかもしれないけど、そんな気分に浸れたひと時だった。
でも、やっぱり思い出すと哀しいし、切ないや。
だから、あの喫茶店に行く勇気はないかな。
たぶん、君には贖罪の念が残ってるんだと思う。
それでも、街で偶然出会ったとしても、声はかけないと思うな・・・
さよなら・・・そして、ごめんよ・・・