起きたら、枕をぬらしてた。
実はね。
もう彼女が4年いなくて。
だいぶ前の事。
俺は、ファミレスで夜のバイトをしてたの。
勿論、ホール。
いつもくるキレイなお客さんがいて、いつしか毎週来てくれるようになって、話しとかもするようになってたの。
ある日、そのキレイな女性のお客さんが
『わたしね、実はね風俗で働いてるの。よかったら来て!!』
半額チケットを頂き、次の休みに行ったんです。
そうです。
いいなぁって思ってましたから。
そりゃ、行きますよ。
勇み足も軽快に。
源氏名…千恵佳ちゃん
通ってしまいまして…
毎月2回。
12月から、5月まで。
なんで5月かと言うと、そのファミレスが5月に閉店となった為なんですが、通ってる内にメアドをもらっていて、メールは続いていたんです。
次の仕事が決まって、早速、千恵佳ちゃんにメールしたら、又半額チケット
お給料貰って速攻いきました
何て言うか…
千恵佳ちゃんって、しゃべり方がおっとりしてて、いいんですよ。
で、キスがね…
なんというか、いかにもプロっぽいキスじゃないというか…優しいんですよね…胸の奥底から熱いモノを込み上げさせるというか…
つい、千恵佳ちゃんとキスしていると強くだきしめていて、キスだけで時間おわっちゃう。みたいな感じで。
俺、千恵佳ちゃんの本名も知らなきゃ本人のアドレスも知らない。
でも『好きになっちゃった』だよね…。
千恵佳ちゃんだって仕事だから、俺をお客として接してくれているんだってのも、よくわかっていた。
だからね、生まれて初めて『フラれる為にコクる』
お店に行って、千恵佳ちゃんを指名。
千恵佳ちゃんと個室へ移動して、ドリンクがくる。少し話しをして、さてって時に俺、『千恵佳ちゃん、あのね?聞いてくれる?』
『どうしたんですか?』
『多分ね、わかってると思うけどね…敢えて口にだして言いたいからね、言うよ』
ちゃんと普段から、相手の気持ちを察しようと接してきた千恵佳ちゃん、ちゃんとわかってる。
『はいっ』と答えると、真っ正面に俺を向いて正座になおした。
『俺ね…お客とかの立場じゃなくて。男としてね、千恵佳ちゃんの事が好きになった。でもね、ちゃんとわかってるからね。付き合ってくれ!!とか、こうして欲しいとかは言わない。』
そこまで話すとそれまでウンウンって頷きながら俺の言葉を黙って聞いていた千恵佳ちゃん。
聞き終わって、手を胸の前で拝むみたいにして、上を向いて、黙って涙を溢した。
『ありがとう…。このお仕事しててね、初めて、お客さんに本気でやさしくして貰えて嬉かったから、そうなのかなぁとは、思っていたの。とっても嬉しい!!…でもね…ごめんなさい…お応えできない…』
千恵佳ちゃん、今度は俯いてしまった。
俺は、千恵佳ちゃんが流した涙の気持ちで充分だった。
元々、こうなるってわかっていてコクった。
『いいんだよ。千恵佳ちゃん。いつも大好きな人をお客に無理矢理重ねてお仕事してたんでしょ?』
相変わらず、俯いている千恵佳ちゃんはコクンと頷いた。
『大丈夫だよ。俺は、もう来ないから。メールもね、今日まで。明日からしないから安心してね』
だってさ…
マジでコクりにきた男をフっておいて、嬢として接客はキツいよ。
メールもさ、営業とはいえ気をつかうし。
それからたった一度だけ。
一年くらいたった春先
見ず知らずのメアドで
『私です。ありがとうございました』
名乗りもせず、それだけのメールが来た事があった。
ピン♪ときた。
でも、返信しなかった。
名前も件名も、何もないのだから、そう言う事なんだ。
そんな千恵佳ちゃんが、夢の中でずっと笑ってた。
俺にむかって、何か話しながら、嬉しそうに…。