もう30年近い昔になる。
休日の昼間、出かけた先のラブホテルに彼女と入った。初めて使う場所だったのだが、風呂を入れるために風呂場のドアを開けると何やら声が聞こえて来る。
どうやら隣の部屋でいたしている声が聞こえて来るらしい。
彼女と 気をつけようね、などと小声で話たりしていたのだが、お隣さんの声はどんどんエキサイトして大きくなっていく。主に女性の声だ。
「… お兄ちゃん… お兄ちゃん… 」
思わず彼女と顔を見合わせてしまった。
(お兄ちゃんって言ったよね?)
(兄妹ってこと?)
(いやいや、そういうプレイなのでは?)
「いっちゃう! いく! お兄ちゃん!」
「うぅ、僕もいきそう!母さん、母さん!」
(え?)
(どおいうこと?)
彼女と二人してついつい聞き入る。
自分たちのコトより隣の二人の関係が気になる。
すっかり隣に気をとられてしまい、隣の部屋のドアが開く音がしたタイミングで、こちらの部屋のドアを薄く開いて彼女と覗いてしまった。
廊下を歩く二人の後ろ姿は兄妹には見えなかった。
恐らくは若い男の子と年上のご婦人。。。
彼女が なるほど、と呟いた。
「あたしも家ではお姉ちゃんって言われてる」
なるほどね、そういうことですか。
我が家では、家族を名前で呼び合うように心がけている。