高校生になり小学生から野球をやってた俺は当然のように野球部に入部した。
あまり野球が強い学校ではなく、一年生は俺含めて12人。
入部2ヶ月ほどで他校と一年生だけの練習試合が組まれた。俺はセカンドで先発で出た。控え三人のうちの一人Nは俺と同じキャリアの持ち主。監督は秘密兵器みたいな感じでそいつの起用を考えていたらしい。
Nは高校生離れした濃い顔で、歌舞伎役者か時代劇俳優のような雰囲気の奴で、見た目は貫禄ある奴でした。
練習試合当日、俺の高校が二点リードで迎えた最終回、一死三塁で代打は秘密兵器N。監督のサインは初球スクイズ。しかし相手がそれを読み外した次の瞬間信じられない光景が。
普通なら外したボールに無駄とわかってても飛び付き何とか球に当てようとするのが普通なのだが、何とNはバットを引いたのだ。
ベンチは口アングリ。
相手バッテリーも一瞬「え?」と動きが止まった。
三塁ランナーはタッチアウト。Nは本当に野球やってたんか?と言う話にまでなった。この日からNは練習試合はもちろん紅白戦でも出番がなかったのは言うまでもない。