電車内はそんなに混雑してはいなかった。
とは言っても、座席はほぼ埋まっていて、数人が立ってつり革につかまっ
ている程度。
とある駅で電車が停車し、親子が乗車してきた。
母親は30代前半くらい、子供は4~5歳くらいの男の子。
仲良く手をつないで立っていたが、
しばらくすると男の子が
『ママぁ、おなかすいたよぉ・・・』
母親は『もう少しで着くからね、我慢してね』と優しく言いながら
飴玉を男の子に差し出した。
男の子は飴玉を頬張りながらも、満足しない様子。
周りの乗客たちは、このなにげない親子の会話を微笑ましく眺めていた。
『ママぁ、おなかすいた!』
先程よりも強い口調で、男の子は握られた母親の手をグイグイと引っ張
る。
『もぉ、あと少しだから我慢なさい!』
ぐずり始めた子供に、母親の口調も少しきつくなっていた。
『じゃあ、おちんちん食べちゃおーかなぁ』
子供はふざけたような口調で自分の股間を眺めながらつぶやいた。
『そんなこと言っちゃダメでしょ』
母親は嗜めるように子供に言った。
『食べちゃダメなの?』
不思議がって母親を見上げながら問う子供に、
『ダメよ、食べられないんだから。それに、そんなこと言っちゃいけませ
ん』
と、強い口調で言い放つ母親。
すると子供は、
『ママだって昨日パパのおちんちん食べてたじゃん・・・』
母親は次の駅で、子供の手を強く引き、逃げるように電車を降りて行っ
た。