身仕度を整えて林道を抜け出した。
幸い帰路も対向車に出合うこともなく、無事国道に出ることができた。
一時間程走り、観光地でもある街に着いて、私達は腕を組み身体を寄せ合って歩いた。
周りを行き交う人々は全て見知らぬ人ばかり憚ることなく二人だけの世界に浸っていた。
笑顔を絶やすことなく、常に明るい美智代を見ていると、彼女を苦しめる日常などとても想像することなどできない。
この幸せよ、いつまでも続けっ!
私は胸の中で叫んでいた。
「2泊目はこの街にすれば良かったね」
「ホントだなぁ、失敗したね」
しかし私には連泊にした理由は解っていた。
旅館の広い露天風呂付きの部屋で、ゆっくり二人だけの時を過ごしたかったのだ。
「こちらが良いのなら、今から連絡して変更してもいいよ」
「ううん、良いの、この次の楽しみに残しておくわ」
これで又、次の逢瀬の約束を取り付けたのも同然だった。
「それに、あなたと二人なら、どこにいても美智代は幸せだから…」
ヤバいっ!私はどんどん惹き憑かれていく。
絡み合わせた指は、どちらの汗か解らないがしっとりと湿り気を帯びていた。
美智代がドラッグストアに立ち寄り、その後アリバイ工作を手伝ってくれた友人の為に、二人でお土産を選び、再び旅館に向かった。
市街地を抜けて川沿いの国道を走っていると
「ねえ、これを見て…」
ピンク色の何かを手にしていた。
「それは何?」
「…………」
よく見るとレディスシェーバーだった。
頬を染めながら…
「少し伸びてきたから…お願い…」
すぐに美智代の意図を理解した私は、平静を装ってはいたものの、ハンドルを握っている手が震え掌が汗ばみ、心臓が高鳴っていた。
また一つ、親爺の初体験が増える…。
遠い…本当に遠かった…旅館迄の道のりが…。
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