私は、とても地味な女性に惹かれた。何故、その地味な女性に惹かれたのかは、今から１６年前まで遡る・・・。


当時、２３歳の彼女が看護婦として勤めていた病院は、小さな病院でベッド数も少なかったと記憶している。看護婦は彼女を含めて６名、その人数で日勤と夜勤のシフトをローテーションしていた。彼女も最低、週に一回以上は夜勤をこなしていた。その病院に２週間ほど入院した私は、彼女が当直する夜勤を入院中に三度も体験した。簡単に言うと夜の病院で彼女と二人きりになるチャンスが三回あったということだ。


《看護婦さんと二人きりになれるかも》と考えただけで興奮した事を、今でもハッキリと覚えている。が、そんなに物事は簡単ではなく、なんとか二人きりで話せたのは、彼女が三回目の夜勤。消灯時間はとっくに過ぎていたが、彼女と二人きりで話せるのは、深夜の病室見廻り中だけ。私は、病室を抜け出し、待合室のところで、彼女を待ち伏せた。そこに彼女はあらわれた。会話時間は５分程度だったと記憶している。病院の非常灯だけが光る待合室の椅子に二人で並んで座り、話しかけた。


『俺が退院してから、時間作って、岡山県のチボリ公園に、二人で遊びに行かない？できれば一泊二日でさ』


彼女は、とても驚いた表情を見せたが、まんざらでもない表情も併せて浮かべ、小さな声でこう答えた。

『突然だね、でも考えとくね』

彼女は仕事中。交わした言葉は少なかったが、大事な会話は、次に逢う約束。彼女と電話番号を交換し、私は病室に戻った。

それから数日後、退院した私は、彼女とデートの約束を取り決め、ホテルを予約した。ホテルの名前は《倉敷アイビースクエア》彼女にとって初体験となる場所だ。


続く