目覚めると、朝になっていました。
バルコニー側のカーテンの隙間から、まぶしい陽射しが差し込んでいます。
時計を見ると、もう8時でした。
ぐっすり眠ることができたので、爽快な気分です。
全裸のまま、オーシャンビューのバルコニーに出ました。
文字にするのが難しいぐらい『美しい青色』の海が、太陽の光に輝いています。
最高の眺めでした。
暑いなりにも、気持ちのよい風が吹いています。
イケメン君のことが気になりました。
横のベランダ窓に近づいて、厚いカーテンだけ開けてみます。
レースカーテン越しに、向かいの様子を見てみました。
向こうもカーテンがかかっていて、部屋の中を窺い知ることはできません。
(もう、チェックアウトしたのかな)
私は、もう1泊して明朝チェックアウト予定でした。
今日まる一日、この地でのんびりリゾートステイするつもりです。
もう決めていたことがありました。
昨晩あのあと、
(明日は、ビーチに行ってみよう)
ベッドの中で悶々としながらそう思ったのです。
一連の流れから、すっかり『いけない気持ち』に火がついてしまっていました。
(ちょっとぐらい、いいじゃない)
(こんなにうずうずしてるんだから)
まずは水着の調達です。
ホテルの敷地内にはプールがあって、その途中にテラスふうのお店があったのを覚えていました。
(まだ開いてないかな)
行ってみると、オープンしていました。
いちおう専従(?)の売り子さんもいる店ですが、中はただの売店レベルです。
水着も少し置いてありました。
品物としてはまったくの安物だとわかりますが・・・
値札がついてないので、直接聞いてみるしかありません。
水色のビキニを持って、
「Quanto custa?」
たぶん若い(?)その女性に尋ねました。
人種が違うので、ぱっと見たところで年齢がよくわからないのはお互い様です。
言われたのは、
「○○○○」
想像よりかなり安い値段でした。
(日本円にして○○ぐらいか)
もし吹っ掛けられていたとしても、まったくわからないのですが・・・
仮にそうだとしても、値段的にはどうってことありません。
買うことにして、タグのようなものはすべて外してもらいました。
いっしょにパンとドリンクも買って、自分の部屋に戻ります。
簡単な朝食を済ませてから、さっそく買ってきた水着を試してみました。
いちばん小さいサイズを買ってきたのですが、それでも私にはちょっと大きいようです。
(あー、やっぱりか)
でも、別にかまいません。
どうせ今日一日だけしか使わないつもりですし・・・
(まあ、大きいぶんには好都合か)
時計を見ますが、まだ早すぎました。
あまりに人が少ない時間帯にビーチに行くのは、やはり治安上の怖さがあります。
とりあえずプールに行って時間をつぶしてみることにしました。
敷地内の中庭には、大きなプールがあります。
実際、宿泊客は・・・
わざわざビーチに行くより、プールで過ごす人のほうが多数派でした。
(行こう)
水着のうえに、Tシャツとショートパンツを着て部屋を出ます。
ひとりぼっちの旅行なのに、なんだか楽しくてなりませんでした。
(どきどきしてきた)
廊下を歩いていって、エレベーターに向かいます。
そのエレベーター前で、ばったり鉢合わせをしていました。
横向かいの部屋の、あのカップルです。
イケメンくんに挨拶されました。
「Guten Morgen」
「○○○○○○○○○・・・」
ドイツ語のようですが、私はまったく理解することができません。
微笑みを浮かべて、
「Good morning」
無難に英語で挨拶を返します。
今からチェックアウトなのでしょう。
ふたりとも、大きなキャリーバッグを引いていました。
やって来たエレベーターに3人で乗りこみます。
(いいなあ)
彼女さんが、イケメンくんにべったりしがみついています。
幸せそうでした。
1階について、
「Have a nice day」
ふたりとは別の方向へ歩いていく私・・・
中庭につながる出口を探します。
(私のことを見てたくせに)
エレベーター内でも、チラチラ私を見ていたイケメンくんでした。
あれは、きっと『向かいの部屋のあの女だ』って気づいていたにちがいない顔です。
ちょっと嫉妬の気持ちがありました。
私には・・・
幸せそうな人に対する僻みのような気持ちが無意識のうちにあるのかもしれません。
部屋のキーをフロントに預けて、プールへと歩いていく私でした。
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