そして、夕方・・・
ホテル内のレストランで早めの食事をすませた私は、ひとりで部屋にいました。
少し前には、沈みゆく夕日をぼけーっと眺めていた私です。
待っていました。
照明もつけずに部屋を真っ暗にして・・・向かいの部屋の宿泊客が帰ってくるのを。
どんな人があの部屋の宿泊客なのか、見当もつきません。
それでもどきどきしました。
(男だったら)
もういちど、さっきみたいなことをしたい気持ちでいっぱいです。
そう・・・ルームクリーンの人にやってみせたみたいに。
(私はいったい)
(何をやっているんだろう)
そんな虚しい気持ちにもならないわけじゃありませんでした。
せっかく異大陸の果てにまで旅行して来ているのに・・・
でも、ひとりぼっちで今から外出するわけにもいきません。
日本に比べて圧倒的に治安が悪いので、こんな時間になってそんなことは論外でした。
ベッドで仰向けになったまま、いろいろ考え事をして・・・
どれぐらい待っていたでしょうか。
そんなに遅くはなかったと思います。
カーテンの外から『さっ』と明るさが差し込みました。
(あ・・・)
反射的に飛び起きます。
ベランダ窓に近づきました。
こちらはカーテンを閉めたままで、様子を窺います。
(あー)
微妙でした。
白人の『カップル』です。
外国人なので見た目でははっきりわかりませんが、たぶん20代でしょう。
部屋の照明がつけっぱなしで・・・
窓は開けていませんが、あっちのカーテンは全開でした。
(んー、カップルか・・・)
(微妙。。。)
楽しそうにしゃべり合っているのがまる見えです。
見るともなしに、見ていました。
覗き見をしているなんて悪趣味だって、そんなことは百も承知です。
だけど、どうせ・・・
テレビを見ようと思ったって、わけがわからない番組ばっかりだし・・・
(わかってる)
(こんなことしちゃいけないって)
備え付けのリラックスチェアを窓際に持ってきました。
私は、厚いほうのカーテンを開けっぱなしです。
閉めてあるのはレースの薄いカーテン1枚だけですが、こちらは電気をつけていませんからバレる心配はありません。
(楽しそうだな)
ちょっと寂しくなりました。
私は・・・ひとりぼっちです。
(日本に帰ったら)
(私も、新しい出会いがほしいな)
覗かれているとも知らずに・・・
いきなり濃厚なキスをしている、幸せなおふたりさん・・・
と、そのまま・・・ベッドの上になだれこんでいます。
イケメンくんが、彼女さんの服を脱がせていました。
彼自身もはだかになって・・・
あっという間に、アレをしはじめています。
(うわうわ)
見ちゃいけない・・・
わかっていますが、目を離せませんでした。
他人が、まさに『ヤって』いるところをまじまじと見てしまっている自分がいます。
正直、すごいと思いました。
私があの子だったら・・・
他人にあんな場面を覗かれるなんて・・・
(ぜったいイヤだ)
息を殺して覗き見ながら、いつのまにか自分のパンツに手を突っ込んでいました。
はっと我にかえって、
(なんで、私は・・・)
あまりの切なさに涙ぐみそうになってきます。
(なんで私は、幸せになれないんだろう)
ずっと見ていました。
彼氏に組み敷かれながら、幸せそうに喘いでいるあの子のことを。
嫉妬というか、悔しさというか・・・
いつもひとりぼっちの自分が虚しく思えてなりません。
やがて・・・事を終えたふたりが、そのままぐったりしていました。
ベッドに寝そべったまま・・・
と思ったら、すぐに彼女のほうが立ち上がって部屋の照明を消しています。
相変わらずカーテンが開けっ放しだったので、薄暗いながらもふたりのからだが見えていました。
ベッドの上で抱き合ったまま、まどろんでいるカップル・・・
私は、ぼけーっとしていました。
なんともやりきれない気持ちを抱えこんでしまって、立ち上がる気もおきません。
そのまま、20分・・・30分ぐらい?
向こうの部屋の奥のほうに薄明かりがつきました。
彼女さんが、ひとりでバスルームに入っていくのが見えます。
イケメンくんは、ベッドの上に座ってタバコを吸っていました。
ちょうどこっちを向いて腰かけています。
それは、『衝動』でした。
衝き動かされるように、立ち上がっている自分がいます。
身に着けていたラフな服を脱ぎ捨てて・・・
大急ぎで、シャツとジーンズに着替えました。
UVサングラスをかけます。
日本のチェーン店で買った安物ですが・・・
レンズが無色透明なので、一見普通の『眼鏡』にしか見えません。
(どきどきどき)
心を落ち着かせて、気持ちを演技モードに持っていきます。
部屋の照明をパチッとつけました。
すぐ正面にあるベランダ窓の電気がついたのです。
こっちを向いてタバコを吸っていた彼が、気づかないわけがありませんでした。
いかにも『いま帰ってきた』という感じで、おもむろにシャツを脱ぎはじめます。
そして、ジーンズを下ろしました。
(どきどきどき)
レースカーテンを閉じたままで照明をつけたので、私のほうから彼はまったく見えません。
でも彼の目には、明るい部屋の中にいる私の姿がまる見えのはずでした。
靴下を脱ぎ捨てて、ブラを外します。
(絶対見てる。。。)
眼鏡を外しました。
目が悪くてよく見えていないという感じで・・・
壁のスイッチに、ふらふらと手を伸ばします。
「パチッ」
再び部屋が真っ暗になりました。
イケメンくんから私の姿を見ることはできません。
パンツを脱ぎました。
全裸のまま、
「シャーッ」
レースカーテンを全開にします。
正面のベランダ窓の向こうに、イケメンくんがいました。
目の悪い『この女』は、彼のことが見えていません。
「ガッチャ・・・ガッチャッ・・」
観音開きのベランダ窓を、全開にします。
わずか10メートル先にいる男の存在にも気づけずに・・・
外の空気にあたって、
「くうーぅ」
その場で気持ちよさそうに全身伸びをする私・・・
すっぽんぽんのまま、堂々とベランダ窓の前に立ってみせていました。
お互いに部屋の照明は消えたまま、向き合っている格好です。
眼鏡を外したこの女には、自分が見えていないと勘づいたのでしょう。
イケメンくんが、ニヤニヤこっちを眺めていました。
本当の私の視力は、両眼とも1.2です。
ぜんぶ見えていました。
(こんなに『美人』な私・・・)
そのアジア女性の全裸を目の当たりにしながら・・・
イケメンくんが、ニヤニヤ自分のお○んちんを握りしめています。
(ひいん、変態。。。)
夜風を身にあてながら、ぼーっと突っ立っているふりをしていました。
白人男が、手を上下に動かしているのが見えています。
(ひいいいん)
(私を見ながらしてる)
それが限界でした。
もとどおり窓を閉めて、厚いほうのカーテンをしてしまいます。
悶々とした気持ちで眠りにつく私でした。
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