趣味の風景写真撮影を目的とした一泊旅行でした。その帰りの日です。旅館をチェックアウトしてから、レンタカーで帰途の高速道路をひた走っていました。ハンドルを握りながらも、頭の中はやましい気持ちでいっぱいです。(帰るまで待てない)帰宅するだけの今日は、もうトレッキングの服装ではありませんでした。普通にシャツとジーンズとスニーカーです。持ってきていたアウターが・・・たまたま、ひざまで長さのある『あの』ロングダウンでした。そのことが私の感情を昂らせます。(ミニスカートが欲しい)(またカフェめぐりやりたい)〇〇県の〇〇市に差しかかっていました。時刻は午前10時半をまわっています。まもなく・・・11時頃になれば、たぶん衣料量販店もオープンするはずでした。まだ帰路の途中ですが、高速の出口へとハンドルを切って下道に降ります。昨夜の旅館での出来事が・・・朝からずっと脳裏をよぎったままでした。(どきどきどき)脱衣場の暖簾をまくりあげたまま、(ああ、私)男の人たちの前であんな格好・・・(泣いちゃう)前屈みになっている自分を思い出すだけで赤面してしまいそうです。一晩たっても、あの興奮の余韻に衝き動かされていました。しばらく幹線道路を運転していると、彼方に大型ショッピングモールが見えてきます。(暖簾の向こう側で)(ふたりともどんな顔してたの)その駐車場に車をとめて、車外に降り立ちました。ひんやりした空気の冷たさに包まれながら、黒のロングダウンの前を閉じます。ちょうど開店直後のようでした。お客さんの姿はほとんどありません。案内板の店舗一覧をざっと見ました。名前を聞いたことのある安い店があったので、そこを目指して歩いていきます。(なんでもいいからはやく)(時間がもったいない)安物のミニスカートと・・・襟ぐりの広いカットソーがあったのでそれも購入してきました。すぐ着れるようにと、お会計のときに値札などはすべて取ってもらっておいてあります。そのままトイレに直行しました。買ったばかりの服に着替えます。タイトなラインの超ミニでした。カットソーはスカートにインしないで着こなします。その上にロングダウンをまといました。(ひいー)(短いなあ)自分の姿を出口の手前の全身鏡に映します。ストッキングはないのでつけていませんでした。黒のロングダウンがひざまであって、生脚がすらっと伸びています。ダウンの内側は股下数センチしかないスカートでした。こうして見ると、全体としてはファッショナブルなコーデになっています。あえて言うならスニーカーがちょっと合っていませんでした。でも、まあそこまでは仕方ありません。(どきどきどき)ダウンのフロントジップを閉じました。自分が自分ではなくなったみたいな気持ちです。いちど車に寄って、もともとの服は車内に置いてきました。(どきどきどき)ダウンの前を閉めておけば、何も目立つところのない服装です。知らない町でした。私のことを知っている人もいません。年初の初詣帰りのときのことを思い出しながら、カフェを探して歩きはじめていました。
...省略されました。