面白いものでした。浅井さんでオナニーが出来ない。過去には知り合った女性は、すぐにオカズにしていた僕でした。
しかし、リアルにデートをしている彼女ではそれが出来ないのです。リアル過ぎて、すぐに萎んでしまうのです。女性恐怖症から来るものでしょうか。
三度目は居酒屋デートとなった。彼女はテーブル席ではなく、あえてカウンター席を選んだ。対面ではなく、隣り合って座ることでお互いを知ろうとします。
僕自身、アルコールが強いわけではない。ビール1本開けられるかどうか。浅井さんはベースこそ遅いが、長々と飲むタイプ。最後は日本酒でした。
二人ともにお酒が入ったため、車を運転することがことが出来ず、帰りは代行となります。ところが代行を呼ばす、浅井さんは駐車場に飛び出しました。
田舎ですが、駐車場はやたらと広い居酒屋でした。隣には電車が走っていて、境目の柵にもたれ掛かって、彼女が語り始めます。
『ああ~、飲んだぁ~。タダシさんもいっぱい食べた?』、そう切り出した彼女。そして、『どうする~?お付き合いする~?』と迫られました。
『浅井さんは?お任せします。』とここでも経験の無さから、他人任せにしてしまいます。
『タイプじゃなかった?おばさん過ぎる?』と聞かれ、自分の返事が彼女が求めていたものでないことに気づきます。
つい数分前までお店で仲良く話しをしてのに、突然の真剣トーク。それには経験の少ない僕は対応が出来ず、ただただ気まずく思えました。
『男としてちゃんと告白しなきゃいけない時がある。』、そんな場面に遭遇をしたことがない僕には、それが分からなかったのです。
その後、数分間当たり障りのない合いの手を打ち続けたと思います。結果、『楽しかった。ありがとう。』と車に乗り、浅井さんに立ち去られました。
フラれたことにすら気づかず、また連絡してくるだろうとのんきな僕でした。飲酒運転して帰った彼女の心配ばかりしながらです。
その後、もちろん連絡が途絶えました。フラれたと気づいたのは、もっと後になってからのことです。冷静に考えてからです。
居酒屋で彼女は、ちゃんとアプローチを掛けてくれていたのです。狭いカウンターで腕を組んでくれて、僕の肩に頭をもたげてくれてもいました。
僕の飲んでいるグラスを取り、『ちょっと飲まして。』と飲みかけのビールも飲んでくれていました。
とてもいい気分でした。大人の女性って、そんなことをしてくれるものだと勘違いもしていました。しかし年上の彼女からの精一杯のアプローチだったのです。
浅井さんに電話を掛けたのは、それから一週間以上のことでした。『そろそろ連絡を取らないと。付き合ってるんだから。』、自分に言い聞かせていました。
偽りなのは分かっていて、それでも電話をする理由が欲しかったのです。
『浅井です。』と彼女は出てくれました。途端に、頭は真っ白になり、喋ろうと考えていたことは全部飛んでしまいました。
そして出た言葉は、『好きです!ごめんなさい!好きです!』でした。『会ってください!好きです!』とほとんど危ない病人のように話していました。
気づきませんでした。僕、悩んでいたんですねぇ。失恋とかではなく、女性に何をしてあげたらいいのか、どうすべきなのか、知らない間に悩んでいたんです。
自分の意思とは関係なく、勝手に涙が溢れているのを見て、それが分かりました。
『ああ、そう。なら、今日会える?』と彼女のアッサリとした返事に拍子抜けをします。泣いている僕のことには触れず、ただ約束を交わすのでした。
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