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〜まえがき〜
⚠書いた人はオタクです⚠某刀ゲームの二次創作夢小説です⚠暴力などこじらせ性癖の描写多々⚠自分オナニ用自己満作品です⚠ゲームやキャラご存知のかたは解釈違いご容赦ください⚠誤字脱字ご容赦ください⚠たぶんめちゃくちゃ長くなります⚠未完ですが応援もらえたらがんばります優しいレス歓迎⚠エロじゃないストーリー部分もがっつりあります⚠似た癖かかえてるかた絡みにきてください⚠ —---------------------- 女がひらひらと手のひらを振る。 「今日チケット買ってないです。」 はぁ、と光世がため息をついた。 「…なにを、いまさら…」 女の肩を抱いて裏口から入店する。 カウンターの中の征羽矢と目が合う。 「おっ、なんか、やっとそーゆーカンジ?」 光世がまぶたを伏せた。 「…こうでも、しておかないと、すぐになにかやらかす…」 客に酒を出してから、征羽矢が光世に尋ねた。 「もーちょい時間あるぜ?飲む?」 「…いや、疲れた…なにか、甘いものを…」 ジャケットを脱ぎながら椅子に座る。 「甘いものぉ?なんだろ、なんかあるか?」 冷蔵庫をごそごそと漁る。 「あっ、アイスあるぜ!」 大きなスプーンで手早く丸くまとめてカクテルグラスに盛り付けた。 「…そのままでいいんだが…」 「だーめ!テーブルの上に出すならちゃんとする!」 適当にナッツとミントとはちみつをあしらい、デザートスプーンを添え、コースターにものせる。 「てんちゃんは?」 「生で。」 ナチュラルに光世の隣の椅子を引いた。 その関係性が征羽矢は単純に嬉しい。 「ぶれねーな!」 ジョッキになみなみと生ビールを注ぐ。 「伊藤サン、どーだった?」 「契約は決まってはいますし、ほんと挨拶だけですよ。」 それを受け取り、ありがとうございます、と視線を交わらせる。 「イケオジじゃね?」 「あー…まあ…でも策士というか、太公望感…?一周回ってギャンブラー感…」 喋りながら征羽矢を手招きする。 何事かと身を乗り出した征羽矢のエプロンのポケットにおもむろに手を突っ込み、伝票の冊子を引っ張り出した。 征羽矢は観念してボールペンを手に取る。 しかし、たいこうぼうかん、が分からない。 「ギャンブラー感あるかな?」 Bの文字を書き入れ女に見せて、1枚を千切ってカウンターの内側に引っ掛けた。 「わたし、これだけやらかしててまだ投資しようってところが。」 「そーゆわれてみれば?」 トントン、とテーブルを人さし指で叩き、そうして征羽矢を指差す。 だから中グラスにビールをつぎ、かちん、と乾杯する。 その流れが、一切会話に現れず、小さな動作と目線だけで成り立っている。 なんだかんだ、思考回路と行動パターンは近しい。 どういうわけか恨めしそうに光世が睨んではくるが。 「目立ってなんぼ、みたいなことは言われましたね。」 すいっ、とジョッキをあおる。 みるみるうちに中身は半分以下になる。 「そろそろ真面目に練習行かなきゃなーって思いました。」 「目は?どう?だいぶ見えるようになってきた?」 征羽矢が顔を覗き込んでくる。 痣はかなり薄くなっているので、眼帯は今朝から外しているのだが、まだまぶたがぽってりと腫れてはいる。 「ぜんぜん見えますけど、コンタクトがきついですかね、もうしばらく。」 眼鏡でももちろん日常生活には不足ないが、レースとなると、横目でコースや状況を確認をするのに、縁が邪魔になったり、頬骨の先の景色にラグができるのがネックだ。 汗でずれるのもいただけない。 「…なんかさ、当たり前かもだけど、なかなかに危険な仕事だよなぁ。」 征羽矢がグラスに唇を寄せて、独り言のように呟いた。 「どっかーん、ってぶつかったらさ、死んじゃうかもしれないじゃん?」 「そう、ですねぇ。」 女は、これまでにフレームごと大破させて廃車にしてきた車両たちを回顧している。 「でもそれなら飛行機のパイロットの方が怖くないです?」 「飛行機の事故率ってすげー低いんだぜ?」 征羽矢がなぜか自慢げに言う。 「うーん、それか、あの、高層ビルの窓拭いてる人とか。」 「高所恐怖症なだけじゃね?」 横で会話を聞いていた光世が、テーブルに肘をついたまま、スプーンで女を指してじっとりとねめつけた。 「…さっきの…ああいうのは、やめた方が、いい…」 「えっ?なになに?またなにしでかしたの?」 征羽矢が前のめりに食ってかかる。 「だって…シロート相手にサイド引くとか、悪質過ぎるんですもん。」 ふてくされたように、ビールを飲み干した。 「…そのわりには、楽しそう、だったが…?」 「そうですか?ムカついてただけですけど。」 なんの催促をせずとも、新しい冷えたジョッキが提供される。 「…『かっちーん』って言っていたぞ…?」 「…うそ?…忘れてください…」 顔が赤くなったのは、子どもじみた発言が恥ずかしいからであって、酔いが回ってきたからではない。 「ねぇ!?仲間に入れて!?なにがあったの!?」 征羽矢がくねくねと身悶えた。 それには答えず、光世は席を立つ。 そろそろスタンバイに入るのだ。 ふわ、とジャケットを羽織った。 「そのかっこで出んの?」 白シャツとジャケットにチノパンの、ごく地味なファッションで、実際のところ普段の光世はこんな感じではあるのだが、ステージに上がるときには意識的に派手な衣装を選んでいた。 「…なんでもいい…」 そう言い残し、バックヤードへと姿を消す。 「な、ほんと、なに?」 征羽矢がカウンターに突っ伏すように屈んで、女の顔を見上げた。 「港の、3車線道路のT字路のとこ、あの古本屋があるとこ、分かります?あそこ全力ドリフトで突っ切ったんですよ、なんか煽られて、腹が立っちゃって。」 公道でのハコノリの興奮を思い出して、表情筋が緩む。 ミッドシップの直線的なドリフトは相性が良くて好きだった。 征羽矢が肩をすくめた。 「いつか事故ってマジで死んじゃっても知らねーよ?」 「本望ですね。」 うっとりと薬指で自分の下唇をなぞった。 それが本心であることがまざまざと突きつけられる、幸せな夢を見ている時のようなかすかな笑みに。 音と光が錯綜する。 征羽矢は兄の作る音楽を気に入っていた。 既存のレコードのミックスももちろんだが、光世が書いた旋律にも、気分で適当に掻き鳴らされる調べにも、何度も救われてきたと思っている。 小学生の頃、夏休み、神社の裏でこっそりと面倒を見ていた捨て犬がある日急にいなくなってしまったとき、涙が止まらなかった。 言葉少なに、 「…だれか、やさしい人に、拾われたんだよ…」 と言って、背中をさすりながら、小さな声で、大好きなヒーローアニメの主題歌を歌って元気づけてくれた。 中学生の頃、もう一歩のところで予選通過が叶わなかった最後の大会のあと。 電気の消えた部屋で虚無になっていたとき、隣の部屋から聞こえてくる穏やかなギターの音。 高校生の頃、カツアゲされていた同級生をかばったがために売られた喧嘩を買っただけなのに、停学になり、助けたはずの同級生にも怯えられて柄にもなく傷ついた。 自宅謹慎などクソ喰らえと、いっしょに深夜にカラオケに出かけて、朝まで喉が枯れるまで汗にまみれて歌った。 光世の音楽には、力があると信じている。 だから、光世が、趣味と実益を兼ねてバイトで通っていたDJバーの店長に、才能あるよ、とおだてられて喜んだとき、じゃー自分たちでやってみねー?と、さらり、と提案したのだ。 兄の音楽は、なにかを変えられる、なにかを救える、疑わない。 審神者である女が時空を越えて?記憶をなくして?それでもここで出会った。 審神者の、おそらく、なにかを、変えるか、救うために。 征羽矢は、そう、信じて疑わないのだ。 希死念慮? バカバカしい! 死んで本望? 冗談キツい! そのひねくれた根性を、ぶちのめして、ぶち上げて、大口を開けた大爆笑をさせてやる、と目論んでいる。 ミキサー周りのメンテナンスをするという光世を店に残して帰宅する。 「やっぱり慣れない格好してると疲れますね。」 パンプスを脱いで、ふくらはぎをマッサージしつつ、女がぼやいた。 「レーサーの正装がツナギになる世界線はどこにありますかね…」 気怠げに立ち上がり、ブリーフケースを床に放り投げるように置く。 「…そお?俺は、スーツ、いーねって思ってた…」 征羽矢が背後からジャケットの襟口に手を差し入れてきた。 乳房を持ち上げるようにして揉みしだく。 首筋に顔を寄せて深く息を吸い込み、脈打つ下半身を臀部にぐいぐいと押し付けながら、シャツのボタンを外していった。 「…ずっと…ガマンしてたんだぜ?…このまま、ヤりてぇ…」 タイトなスカートをまくりあげ、ストッキングをずり下ろそうとするがもたつき煩わしく、力任せに穴を開けて破ってしまう。 「そんなんだから、AVの見過ぎって言われるんですよ?」 「うるせーなぁ、そんな見てねーよ…」 女の身体を壁に押さえ付け、自身の膨らんだそれを擦り付けてくる。 シャツの首元をはだけさせ、肩を噛む。 「スーツ着衣立ちバックは実在しないんですよ?」 腰に回した手のひらが、いやらしい手つきで腹をまさぐり、そのままパンティの中へと侵入する。 女は肩の関節を柔らかく回して上げて、征羽矢の頭を撫でた。 「ミツヨさんに怒られないですか?」 心配して聞いているのではない、面白がっているだけである。 「てんちゃんがね。」 舌を硬く尖らせて、喉の横を舐めあげる。 「あー、ネトラレものっぽくて、たぎるかも…」 カチャカチャと音を立ててベルトを外し、窮屈なチノパンのファスナーと下着を下ろすと、すっかり高揚したものが勢いよく跳ね出した。 是非を問わず押し込む。 「…ぁ…」 女が身震いしてよがる。 「…きもちー…」 征羽矢が恍惚として音吐艶めかしく漏らした。 「ね?兄弟の名前、呼んでよ?」 自分でも、どうかしていると思う、けれども、抑えられない。 今朝、あの男の名を呼びながら光世に抱かれて絶頂を越える女を、見ていた。 兄のしていたことを、全部、征羽矢自身が、再現してやりたい、衝動。 「俺にレイプされてるみてーにさぁ、ここにいない兄弟にさ、助けてってゆって、泣いてよ?」 ズン、と、下から乱暴に突き上げる。 腰を抱いていた手を、わき腹から腕を滑らせていき、手首をとらえる。 「…萎えないです?それ?」 女がムードなく聞き返すけれど、征羽矢は下腹部を打ち付け続けながら、低い声で繰り返した。 「…呼んでよ?」 すうっ、と女の纏う空気の温度が下がる。 「…あっ、や…た…み、つよさんっ…みつよさんっ!たすけてっ!やだぁ…やめて…」 鼻にかかる鳴泣き声が、震えている。 「…みつ、よ、さん…ぁ…ぅ、やめ、やめてぇ…」 征羽矢が、ますます激しく攻め立てた。 「それ、じゃ、兄弟が、犯してるみてーじゃん…ちげーんだよなぁ…」 征羽矢の発声に合わせた喉の振動が、女の後頭部に当たっている。 しかし、違う、と言われると、ムキにもなる。 ぜったいその気にさせてやる、頭の片隅でチカっと何かが光る。 「そは、や…」 名前を呼んではいけないのだったっけ、と、ふと思い出すけれど、ここは、別にあの本丸じゃない。 あの本丸? わたしなにをかんがえてる? 「…そはやさん、も、やめ、て…ぁぁっ!やだっ!たすけてぇっ、みつよさんっ、たすけ、たすけてっ!みつ…」 あからさまに征羽矢の鼻息が荒くなる。 手首を握りしめる力がぐっと強くなり、ぶるぶると震えた。 重い痛みが腕を走る。 ギリギリと歯ぎしりするの音が聞こえる。 煮えたぎる欲望を、それでもこらえようと、ふーっ、ふーっ、と何度も息を吐いている。 そんなに優しいんじゃ、やっぱりだめだなぁ、と脳の奥の奥で、妙に冷静な女が首を振っている。 もっと、めちゃくちゃにひどくして欲しい… 「…たす、け、てぇ…お…おおで、んた、さんっ…」 咄嗟に口をついて出た、その名前が、なんだったか、一瞬、行き当たらない。 だれ? だれ? お、お、でんた、さん? 快楽に溺れた精神が迷う。 自分が口走ったのに答えに辿り着けない。 ぞわっ、真冬の深夜に風邪を引いたときの寒気がした。 征羽矢の気配が人ならざるもののそれへと変わったのだ。 「…なんで?…いま、俺、俺が、抱いてる、んだ、ぜ?」 切なげに、それでいてヒステリックに、征羽矢?では、もう、ない?ソハヤノツルキががなる。 「…そんなに、兄弟のがいーの?…俺…」 みしっ、手首の骨がきしんだ気がした。 手を折られるのは困るなぁ、運転できなくなっちゃう、危機感なくぼんやりと思考が巡る。 そうはいっても、のぼせ上がった興奮をいなせない。 「…いやっ、はな、してっ、そはやさ…」 「…離さねぇ、兄弟も来ねぇよ!このまま…」 ソハヤノツルキは女の胎の最奥を独りよがりにこねくり回した。 「…愛してるんだ…俺を、見てくれ…!」 掠れた絶叫とともに、積憤にも似た熱を女の中へと放つ。 ごぽ、と卑猥な音を立てて、たっぷりとほとばしった精液が接合部から溢れ、太ももを流れ落ちていく。 「…ぁ!や…ご、めんなさ…ごめん、なさい、おお、でんたさ、ん…」 ぽろりと、涙が一筋、頬を伝った。 これが、作り物? ソハヤノツルキには、判断できない。 「…俺が、なんだって…?」 部屋のドアに寄りかかって、光世が腕を組んで、ふたりの情交を眺めている。 その視線は氷のように冷たい。 つかつかと歩み寄り、顔を青ざめさせている征羽矢、ではなくソハヤノツルキの頭を上から掴んだ。 「…兄弟…いいんだ、憤ってるんじゃない…」 ぺろ、と舌なめずりをして、斜め上から顔をぐっと近づけて静かに言葉を続けた。 「…兄弟は、俺と違って聡明な刀だ、理解している、はずだろ…?」 ソハヤノツルキが女から身体を離す。 女はその場に崩れ落ち、怯えた瞳で光世を見上げた。 光世?それはもはや光世ではなく?大典太光世の紅く燃える目にはソハヤノツルキの姿が、そしてソハヤノツルキの紅くぞぞめく目には大典太光世の姿が、映っている。 「…お、おでん、た、さん…?」 取り憑かれたように、無意識に、呼ぶ。 「…ああ、あんたもだよ…優秀な審神者だ、分かっている、だろ…?」 頭を掴んだ片手で、ソハヤノツルキを後方へとぶん投げた。 フローリングに打ち据えられ、小さくうめく。 光世は、パンパン、と両手を埃を払う動作で叩き、一国を滅ぼす魔王のごとき微笑みで女を見下ろした。 「…ごめ、なさ、い…」 征羽矢に剥かれたシャツとジャケットを手繰り合わせて肌を隠し、その手で胸を押さえて、とぎれとぎれの贖罪の言葉を紡ぐ。 なにかが押し寄せてくるのを感じている。 なにかが、激しく、女の、頭の中にある扉を、殴りつけている。 なにか、叫んでいる、けれど、聞き取れない、耳を、澄ませ、たく、ない… 大典太光世がしゃがんで、女と目線を合わせた。 「…こんなに、汚されて…またこんなやりかたで歓んでいたのか…?」 「…ごめんなさいっ、ゆ、るして、くださっ…」 けたたましくノックする音が鼓膜の内側で反響している。 大きな手が、女の髪を鷲掴みにする。 「…あっ…ゆ、ゆる、して、おおでんた、さん…」 その扉を開け放ってしまえば、楽になれるような、気がした。 それなのに、取っ手が見当たらない。 わずかなすき間に爪をかける。 聞きたくない、のに、知りたくない、のに、そこに、探しているものが、あるような、恐怖、好奇心、苦痛、切望。 「…あんたを、意のままに、なんて、容易い…いつでも、殺せる…」 触れるように口づける。 そしておもむろに、女の額を床に叩き付けた。 「…だっ…!」 女が激痛にもだえた。 ふっ飛ばされて朦朧としていたソハヤノツルキ?いや、征羽矢に戻った征羽矢が、こめかみを押さえながらゆるりと立ち上がった。 「…悪かったよ、ちょっとふざけ過ぎた…」 それをまったく無視して、大典太光世は女にのしかかり、後背位で挿入した。 「…ゃっ…ぁ…!」 女が背中をのけぞらせる。 腰の横から腹に手を回し、臍の下あたりをぎゅうっと圧迫してやると、悲鳴と紙一重の嬌声をあげる。 「ひぁ…っ!」 征羽矢が額に手を当て、諦めたようにベッドに腰掛けた。 あれは征羽矢の兄ではない。 「…兄弟に抱かれて、よくなって…さかりのついた猫じゃあるまいし…」 息のひとつも乱れさせず、何度も同じ部分を突いて擦る。 女の視界が白くけぶっていく。 「だ、めぇ、イくっ…!」 女は這いつくばって髪を振り乱した。 「…ほんとうに、ここが、好きだな、あんた…」 大典太光世が女の背中に体重をかけて、一定のリズムと深度で律動を繰り返す。 「…んゃ、ちがっ…ぃ、も、イくっ…」 「…ああ、何回でも、イけ…」 執拗に、変化を付けずに、腹側の肉の壁を殴りつけ続けると、女が腕を突っ張って激しくのけぞった。 「ん、ぁああ…!や、やめ…!とめ、てぇっ…!いっ、イッてるっ、からっ…!」 「…ん?」 大典太光世は甘くとろける響きで唇を歪め、首を傾げる。 「とめてっ、とめて、おねが、とめ、とめて…」 女が拳で床を強く叩いた衝撃で、部屋の空気が震える。 「やだ!やだ!なんか…でちゃう…出ちゃいそうなのっ!」 必死に顔を振って訴えるが、聞き入れられるわけがない。 「…出せよ…?」 「やぁぁっ、やだっ、やだぁ…まっ、まって、まって…!」 腕の力ががくりと抜け、上半身は崩れ落ちた。 両腕で頭を抱えて掻きむしる。 「…待たない、楽に、なれよ…」 「んぁぁぁぁっ!」 それは、ほぼ、絶叫だ。 透明な粘度のないさらりとした体液が大量に噴き出す。 「…別に、いいんだ、兄弟と、ヤッたって、そういう契約だ…」 大典太光世は自身に言い聞かせるように言葉を吐き、すっかり引けている女の腰を強く掴んだ。 「ごめっ、ごめんなさっ…!だ、だから…だからっ、もうっ、ゆる、してっ…!」 「…許すも、許さないも、ない…契約、だっ…!」 走る気持ちをこらえ、刺したてる深さを保つ。 油断したらすぐにでも最奥へと突き通してしまいそうになる。 「そ、しょ、こぉっ!…だめっ!ま、たっ…イッちゃうよぉっ…!」 顔が見えないから大典太光世には分からないが、汗か、涙が、唾液か、なにかの雫がポタポタと床を濡らす。 「…だが兄弟は、こんな風に、しては、くれないだろう…?」 はたでそれを聞いた征羽矢は頬を膨らませた。 「もぉっ、しょこ、やめて、はなしてっ…いやぁっ…!」 ひくひくっと膣が収縮して大典太光世のものを締め上げた。 「…!」 思わず歯ぎしりして舌打ちする。 「…嘘を、言うなよ…!」 うっとりと斜め上を見上げ、それから我に返ったように虚空を睨む。 「こんなに…!こんなに…食いついて離さないのは、あんたのほうだ…!」 喉が張り裂けんばかりの雄叫びを噛み殺し、一気に奥底の究竟へと、下腹に渦巻く欲をぶちまけた。 おおでんたさん、と光世のことを呼んだ。 そんな話はまだしたことがない。 女とも共鳴しかけている? シャワーから戻った女が、頭からバスタオルをかぶったまま、メッセージを打ち込んでいる。 「日曜日シオハマ予約しました。積車貸してくれたらひとりで行けます。」 バックハグしている征羽矢が、その文面を読み上げた。 「プライバシーの侵害です。」 「じゃー今このじょーきょーでやんなっての。」 ビールの缶を傾ける。 「えーと、あした…もう今日か、金、あさって…」 ベッドサイドの棚に手を伸ばしてスマホを取り、カレンダーアプリを立ち上げる。 「え?今度はちょっと構ってあげられないかもしれないですよ?」 女が、あからさまに顔をしかめた。 「構ってもらいたいんじゃねーんだよなぁ、ひとりで出歩くなっつってんの、分かる?」 ぶつぶつとひとりごちながら、シフト表のスクショと見比べている。 女が振り向いた。 タオルがずり落ちて肩にかかった。 「なんでですか?」 そう問われて、征羽矢は素っ頓狂な声を上げた。 「えっ?まさかの展開…」 あんぐりと口を開け、途方に暮れる。 なんで、分かってくれねーの? 苛立ちが抑えられない。 「なんにもできないじゃないですか。」 「だーかーら!護衛するっつってんの!」 思わず空き缶を握り潰す。 「護衛、ね…ものものしいことを…」 馬鹿にしたような、嘲笑を浮かべる。 「もし!俺らがいないとこでてんちゃんになんかあったら、もしそんなんなったら自分が許せねーよ!」 「なんかってなんですか、イミフ。」 不機嫌に征羽矢の腕を振りほどいて、ベッドに横になる。 征羽矢が踏んでいるタオルケットを引っ張って、無言で、どいてくださいよ、と圧をかけた。 「ゆっ、誘拐とか!?監禁とか!?」 征羽矢が少し身体を浮かせると、タオルケットを引き寄せて、かぶって目をつぶってしまう。 「…」 「おい!ちょっときゅんとしてんじゃねーよ!?」 そこへ覆いかぶさり詰め寄るが、まぶたをきつく閉じたまま、あくび混じりにむにゃむにゃと言う。 「えー、でも今日も、出ますよ?予定入ってますもん。」 「は?初聞きなんだけど?」 征羽矢が額を押さえた。 「…なんでいちいちスケ報告してもらえると思ってるんです?」 のしかかってくる体重を片手で押し返しつつ、ごろりと壁側へ寝返りを打つ。 「えぇ…ドン引き…」 この期に及んでまだこんな辛口な物言いをされることが、まあ、ショックでないことはない。 悔しげに揺れる征羽矢の気配が後ろめたく、女はポツリと呟いた。 「…今日は、撮影…」 「撮影?なんの?雑誌とか?」 くったくなく聞き返されて、言い淀む。 「…次のレースの、ブ…」 「ぶ?」 しばしの沈黙。 「ブ、ブロマイドの…」 女の顔がみるみる真っ赤に染まる。 「げっ、ブロマイドとかあんの?」 「げって言いましたね?そんなんわたしがいっちばん思ってますけどね?」 恨めしそうに、薄く目を開けて睨みつける。 「もはやアイドルじゃーん?」 からかうネタが見つかったとでも思っているのか、征羽矢は声をワントーン上げてにやついた。 「いわゆる推し活?ブーム?にも困りましたよ、ほんとに。」 ため息をつく。 「あと本人の了承なくイメカラピンクにするのやめてもらいたいです…」 「ほっ?イメカラとかもあんの!?」 すぐに検索画面で過去の大会のグッズを調べる。 パンフレットは、分かる。 公式Tシャツも分かるし、ステッカーやボールペンなどのステーショナリーも、まだ分かる。 しかし他に選手個人のブロマイド、名前入りのタオルなんかも並んでいるではないか。 知らない世界だ。 『空知由希』をタップすると、派手なショッキングピンクのマフラータオルの画像が出てくる。 「かわいーじゃん?」 それをのぞき込んだ光世は、先日のレースのときに履いていたハイカットのスニーカーが確かこんな色だったじゃないか、と思い出している。 「わたしが?ピンクって顔してます?女だっていうだけで。頭、悪そうじゃないですか…」 「それ世の中のすべてのピンクにすげー失礼だかんな?」 征羽矢も大きなあくびをした。 「んで、それ何時にどこ?何時まで?」 「…1時、富駅の近く…たぶんすぐ終わるけど、せいぜい4時か5時くらいじゃないですかね…」 観念したように投げやりに答える。 「駅近なら地下鉄で行けば?付いてくし、待ってるぜ?なぁ、兄弟?」 光世が黙って頷いた。 「地下鉄て、ここからだとモノレールから乗り換えないとじゃないですか、めんどくさいです。」 「うえー、こーきょーこーつーきかんの民を敵に回すよね?」 女は頭までタオルケットの中へと潜り込んでしまった。 仮にモノレールと地下鉄を乗り継いで13時までにその駅まで行くとなると、早く寝たほうがいいのは事実だ。 「兄弟、店はなんとでもするからさ。」 「…2部までには戻れると、思う…」 女は眠っていない。 腹が立つ。 自分が、他の人間に影響を与えるのが嫌だ。 兄弟の仕事の邪魔など決してしたくない。 ボディガードなど必要ない、ひとりで平気だ。 なにかあったら、と征羽矢は言ったけれど、なにかってなんだよ、とむしゃくしゃしている。 誘拐されて監禁されて、たとえ強姦されて麻薬漬けにされても、本来、兄弟には関係のないことだ。 殺されてバラバラにされても、コンクリに埋められたとしても、関係ない、本当の恋人なわけじゃない、別に友人ですらない。 だからビジネスカップルなんて気が進まなかったんだ、なにを浮かれていたんだろう、愕然とする。 店にも部屋にも入り浸るべきではなかった、居心地が良くて手放しくないなんて、女の独善的な願望であり、その荷を兄弟に負わせるべきではないと、分かりきったことであった。 嘘でも公認になってしまえば、この怠惰な生き方と性格が引き起こす問題が、真面目に努力してきた2人を滅ぼし得るのだ。 ぞっとする。 昨夜のように、車で迎えに行くと言われたら、つい誘惑に負けてしまうのだが、電車移動など面白くもなんともない。 光世がどれだけ良い男で注目を集めても、そもそも女にとっては土俵が違うのだから。 「目、腫れ、だいぶ引いたな、良かったな。」 征羽矢が寝起きの女の顔を至近距離で見つめていた。 吐息が鼻先をかすめていく。 ぎょっとしてそっぽを向いた。 「もう少し眠ったらどうです?」 ベッドから抜け出そうと半身を起こしかける。 「待てって、行かないでくれ。」 征羽矢が女の腕を掴んで引き、ぎゅうっと抱きしめた。 「キスしてもい?」 「…いいですけど、いまさらですけど、たぶん、ほんとはダメなやつですよ。」 軽く、ついばむように唇を尖らせて、数度、喰む。 「そうだな、オニーチャンのカノジョだもんなぁ。」 胸元におでこをこすりつけてくる。 硬く逆だった金髪が顎をくすぐった。 「…ごめん、もーしないっては、ゆえねー…」 筋肉質な腕の力をするっと緩めて、女を解放する。 女は半裸ですたすたと部屋を横切り、洗面所へと入っていった。 すぐに光世がのっそりと体を起こした。 あくびを噛み殺し、がしがしと頭を掻く。 立ち上がるとき、ミシ、とベットが軋んだ。 「…兄弟…」 「ごめん兄弟。」 光世がなにか話そうと口を開いたのに食い気味に、征羽矢が謝罪した。 「兄弟のゆうとーり、分かってんだよ、でもさ…」 光世が口を挟む隙は与えられない。 「俺、けっこーマジで、てんちゃんのこと、好き、かも、なんだよな…」 それを聞いて、光世はため息をついた。 「…それは、審神者だから、だろ…?」 征羽矢は寝床に横になったまま、ごろんと仰向けに転がり、両手で顔を覆った。 「…ちげーし…」 消え入りそうな声で精一杯の否定をする弟を、冷ややかな視線で見下ろしている。 「…それは、すまなかったな…」 光世が何に対して謝ったのか、定かではない。 あの夜、既成事実を作るかのような、強引な口づけをしたことだろうか、女の後を追って部屋を出る兄の背中をぼんやりと眺めながら、征羽矢は考えた。 陶器の洗面台に跳ねるかすかな水の音、おはよう、おはようございます、の声、それから、ドライヤーの駆動音が聞こえてくる。 まだ眠い。 とろとろとまぶたが重力に負ける。 ドライヤーの強のボタンを押して、タオルの積まれた棚にそれを置いてから、光世は女の腰を抱き寄せた。 振り向きざまに間髪入れずに唇を奪う。 片手は女の後頭部を支えるように押さえ、逃さない、と圧をかける。 歯の隙間に舌をねじ込み、女の舌をとらえてきつく吸い付いた。 「んっ、んーっ…」 なにか言いたげに呻く声はくぐもって、歯磨き粉のミントの偽物の匂いがした。 女が、諦めたように濡れた両手で光世の頬を挟んで、応える。 舌を絡めて、唾液を混ぜる。 たっぷりと、呼吸がやや苦しくなるほどに口唇を押し付け合ったが、光世はやがて気が済んだのか、つい、と顔を離した。 「…どうしたんですか?」 「…兄弟と、しただろ、さっき…」 むすっとした態度で、視線をそらす。 「え?それだけですか?」 「…それだけ、だが…?」 手櫛で髪を雑に整えて、ヘアゴムで適当にくくる。 「…情緒…」 女は呆れて首を振って、ごうごうとうるさいドライヤーのスイッチを切る。 「…なんのために…?」 バラけたコードをくるくると巻きながら、問う。 「…兄弟が訝しがる…」 「…情緒…」 その答えに、女が皮肉のこもった笑みをわずかに浮かべて、先と同じ単語を繰り返した。 鏡に、斜め下を睨みつける光世が映っている。 「ね、わたし、ちょっと次のレースに集中しようと思ってます。」 するり、と両腕を光世の首に巻きつけ、薄暗い顔を見上げた。 「…ちがう!そうじゃない…」 光世が喉の奥から、苦しげに声を絞り出す。 「うん、そうじゃないのも、知ってます。」 いじわるを言うのではない、どうすればいいのか、女にも、正解が導き出せないのだ。 征羽矢の気のせい的な恋心も、光世の度を超えた執着も、スキャンダルも、後援広告の申し合わせの根拠がとてつもない虚構である不安も、ストーカーチックな男の存在に対する憂虞も、ここに来なければ解決する、という問題では、もう、なくなっている。 「…兄弟は…いいんだ、いや、よくは…よくは、ないんだが…」 「へぇ、よくないんですね、それは知らなかったです。」 からかうように、くすくすと、作り物めいた声で笑った。 「…あんたを、閉じ、こめ、たいん…だ…」 ゆっくりと、腕を女の背中へと回す。 「…危険なレースなんて、しなくていい…仕事なんて、辞めてしまえ…」 腕の力はだんだんと強くなる。 「…どこかへ行くなど、言わないでくれ…誰かと、楽しそうに話すなよ…」 顔を肩と首の間にぎゅうっと埋められると、汗の匂いに混じって、紙?書籍?のような香りがした。 図書館や古本屋のような、不思議な体臭がある。 「…簡単に触れ合うなよ、投げやりに抱かれたり、ぜったいに、するな…もう、耐えられない…見ていられない…」 薄いキャミソール越しに爪を立てて、女を酷く掻き抱く。 「…繋いでおきたい…それか、それか、足を、切り落として、やろうかと、思う…耐えられないんだ…!」 夕焼けよりも赤く染まる目に溜まった涙が、ぼたぼたと、せきを切ったように流れ落ち、女の肌を濡らしていく。 だだをこねる子どものように、わがままな言葉が止まらないし、どうもだんだんと内容は治安が悪くなっていく。 「…走るのは、いのちのじゅうでん、です。」 なるべく柔らかく喋ろうと試みてはいるのだが、ふだんの淡白な物言いが抜けきらない。 「ミツヨさんが音楽から離れられないのと同じですよ。」 「…いのちの、じゅうでん…」 なだめるように、うなだれて体重をかけてくる光世の頭をわしゃわしゃと撫でる。 「…なにとも比べられません、走れなくなるくらいなら、死ねます。」 光世は、女が身バレしたときの自身の思考を思い出している。 人間関係や店や財産や、平穏な暮らし、明るい未来、他のなにを捨てても、手放したくないと、そう結論付けたけれど、女のそれとは根本が違う、音は体があれば生み出せる。 捨てようとしたものが命でさえなければ、本当に夜逃げみたいなドラマチックな展開に身を任せるとしても、きっと、光世は音楽だけは捨てられないだろう、身ひとつで、声で、きっと、なにかを、奏でるだろう。 また、女の家で、あの男と邂逅したときに女が吠えた言葉を反芻する。 自分の車に手を出したら、殺す、と。 解せない。 が、仕方ないのかもしれない、所詮は、他人の趣味嗜好と思考回路。 「…わたしは、ミツヨさんのこと、すごく、なんてゆーか…好き?うーん、好きですけど、ちがくて…」 ゆっくりと、言葉を選びながら話す。 「…気に入ってる、相性がいいと思ってる、この関係がこのままであればいいと願ってる、てな感じで…」 ポンポン、と、光世の背中を叩いた。 「心配してくれるのはありがたいんですけど、過干渉は、お互いのためにならないと思う、と言いますか。」 「…あんたが、関わり合いを嫌うのは…知ってるんだ…」 光世がさめざめと、言葉を紡ぐ。 「…あの頃から、そうだった…信頼はあったが、けっしてなれなれしくしないんだ…」 知らない景色の話をされると、頭の中に、テレビの砂嵐のような、白黒のモザイク模様が吹き荒れた。 光世の小さな囁きが雑音に紛れて聞こえにくい。 「…とはいえ、今日はいっしょに出かけましょう、今日なんにもなかったら、もう、ひとりで平気。ね?」 年上らしい余裕のあるムーブを見せてやる。 光世は納得はしていない表情で、頷きもしない。 同行の許可を得た、その事実の確認だけだ。 いつまでも狭い洗面所でまごまごしているわけにもいかない。 涙が乾いた頬を、光世は冷たい水で洗い流した。 女が澄ました顔で部屋へ戻ると、征羽矢はすうすうと寝息を立てている。 明るく振る舞っているが、おそらくメンタルの疲労が限界だろう、どれもこれも、女と光世のせいではある。 ここで光世が付いてくるというのを突っぱねてみようものなら、そのくっきりとした秀麗な目の下にクマでもできかねない。 「車で行きましょうよ。」 「…あんな、街のど真ん中…」 光世が眉をひそめた。 道が細く信号も人も車も多い市内の中心部は、このあたりの郊外よりの繁華街とは様相が違うのだ。 「…地下街を少し、見て歩こう、言っただろ、指輪を…」 「…分かりましたよ、もう。今日は、譲りますよ。」 ハンガーにかかっているブルーグレーのワンピースを外しながら、つまらなさそうに口を尖らせた。 「じゃ、これ着ていこ。デートみたいですもんね。」 体に当てがって、ひらり、とターンする。 「…化粧、してやろうか…?」 光世もジャージを脱ぎ、衣装ケースをごそごそと探る。 引っ張り出したのは黒のパーカーにケミカルウォッシュのダメージジーンズ。 ステージに上がるときには、革ジャンだったり、やたらスタッズだらけのパンツだったりするのに。 「や、どうせ撮影の前にメイクしてもらえるので、今日はテキトーでいいですね。また今度してくださいよ。」 一般的に女性は出かける支度をするのに時間がかかりがちだというけれど、女はするするっと手早く着替えを済ませ、バッグの中を整理している。 「朝食、食べてきます?」 「…兄弟がまだ眠っているからな…起こしては悪い、出よう…」 デニムの後ろポケットに無造作に札入れを突っ込み、音を立てぬように玄関の扉を開けた。 靴箱の奥に仕舞い込まれてしまっているパンプスを引っ張り出して、女の前に跪いた。 「…ん…」 女の驚いた顔を見上げた。 「…ほら、足…」 女が言われるがままにおずおずと片足を持ち上げると、恭しくそれを履かせる。 「え?え?」 まるでお嬢様かお姫様のような扱いに、困惑が隠しきれない。 「さっきまで足を切り落としてやるとか言ってた人が?」 光世が口をへの字に歪めさせた。 そこまでは言ってない、とでも否定したげである。 そうして、静かに鍵をかけて、階段を下りる、そのときも、無言でそっと女の手を取った。 これは… 女は思う、分からせにきているわけだな、と。 新たなスポンサーを得て初めてのレースのために練習走行をこなしたいのは真実ではある。 が、それが距離を置きたいと認識されていることは否めないし、実際その意図もあった。 以前、征羽矢に縋られてたまらず出ていこうとしたとき、あのときは光世としての理性はほぼ吹っ飛んで大典太光世が喋っていたのかもしれないけれど、逃さないと言って物理で縛り付けた。 だがそれではあまりにも現実的でない。 だから、分からせにきているのだろう、と。 何度でも改めて咀嚼する、光世は、とりわけ自分に好意を抱いているのではない、これは、執着… それ以上の感情はない… そして、自分は…? ここから先を突き詰めてはいけないと首を振る。 「自宅張られたりとかはないですね。」 「…撮られたところで、支障ない…」 光世が女の手首を掴んだ。 手を繋ぐという概念がないのか、と女は呆れる。 「いやいやいや、兄弟ふたり一緒に住んでる部屋に半同棲って、なかなか不品行ですからね?」 その手を振り払って、ぐい、と腕を組んだ。 こっちのほうがよほど自然だ。 「…そういう、ものか…?」 「イメージですよ、イメージ。」 眩しい日差しの中をぶらぶらと歩いていく。 アスファルトからは陽炎が立ちのぼり、行く先の道がまるで大きな水たまりのように見えた。 「電車乗るのめっちゃ久しぶりです。」 モノレールの駅の階段を上りながら、女がバッグからパスケースを出した。 あの日、征羽矢が審神者証を抜き取った、あのパスケースだ。 そういえば、審神者証を自身の札入れの中に隠したままである。 どこかで隙を見てもとに戻した方が良いのだろうか、と思い至り、光世は憂鬱な気分のまま、自動改札を通り抜けた。 「…明後日は、どこへ…?」 「シオハマサーキットですよ、隣県との境、海沿い。こないだ行ったところが本番走るとこなんですけど、遠いので、Rが似てるとこへ行くんです。」 構内はすいている。 地下鉄との乗り換え駅に着けば一気に混雑するのだが、モノレールは毎年赤字だと地元紙が報じている。 「…あーる…?」 「カーブの半径のことですよ。同じくらいの曲がり具合ってことです。」 タイミング良くやってきた車両に乗り込む。 車内もガラガラで、柔らかなベロア生地の椅子に並んで腰掛けた。 「…帰りが遅くなるのだろう…?」 「ラスト5時まで走って、7時くらいですかね。」 「…それは、同行しては、いけないのか…?」 光世が、さみしげに問いかける。 向かいの座席の制服の女子高生が、光世の整い過ぎた顔面に見惚れている。 サボリなのか遅刻なのか定かではないが、こんな場面で理想の異性像を捻じ曲げられるとは思ってもみなかっただろう。 「いけないっていうか…あなたたちの生活に影響してしまうのが、嫌なんです。」 女はつっけんどんに答えた。 「…えいきょう…」 光世がオウム返しに呟く。 「外出のたびに連れ回して時間的に拘束することが、その最たる事案です。」 窓の外を見ている。 座っているだけで景色が後方へと流れて千切れていくのは不思議な感じだ。 心地よい振動と、タタタンタタタンと繰り返される音が意外と悪くは無い。 「…そんなの、なんでもない…」 「なんでもなくはないんですよ。」 非生産的な会話を続ける気力が失せて黙る。 次のレースまでは光世をサーキットへ連れて行く予定はないし、その後も、どこへでも追陪させるつもりもない。 終点は地下鉄の接続駅である。 案の定ここのホームは混雑している。 「軽く食べません?おなかすきませんか?」 乗り換えのためにいったん改札を出たので、レストランやカフェが立ち並ぶ区画を通りすがると、世の中はちょうどランチ営業が始まる時刻だから、食欲をそそるいいにおいが漂ってくる。 女は、全国チェーンのドーナツショップの前に出ているサインボードを見ている。 ゲーム原作のアニメとコラボしたメニューが紹介されているのだ。 「ね、ドーナツ食べましょうよ!」 キラキラとした眼差しで光世を見上げてくる。 会計金額によって特典で愛らしいキャラクターのイラストが入ったカトラリーセットが貰えるようだ、下心は丸見えである。 ホットコーヒーをふたつ、それといくつかのドーナツとパイをイートインで注文したけれど、特典入手まであと少し金額が足りなくて、テイクアウトを追加した。 「ソハヤさんにおみやげってことで!」 ドーナツの入った紙袋を光世に押し付け、熱いコーヒーにふうふうと息を吹きかける。 もらったカトラリーセットの箱はとっくに自身のバッグにしまい込んでいる。 光世は大きな口で、バナナ味のチョコがたっぷりとかかった、キャラクターの顔をかたどったドーナツにかぶりついた。 これ!これにしてくださいよ!と女が決めたのだ。 ちゃっかり写真も撮っていた。 それなのに。 「甘いもの好きなんですね、意外です。」 あんたがこれにしろって言ったんじゃないか、という台詞をドーナツといっしょに飲み込んだ。 実際、甘いものは、かなり好きだったから。 女はいわゆるおかず系、トマトソースのパイをかじった。 「…あんたは、予想通りだな…」 高カカオポリフェノールのチョコレートの毒の味を思い起こす。 「嫌いではないですよ、それ、ちょっとくださいよ。」 指についた赤いトマトソースをペロリと舐め取って、光世の手の中のドーナツに視線を送った。 「…ん…」 光世がそれを女の方へと差し出した。 あーん、と口を開けるので、そこへ近付けてやると、がぶ、と噛み付いた。 「あ、バナナ嫌いでした…」 もぐもぐと頬を動かしながら、コーヒーを流し込む。 「…バナナの味、するか…?」 「しますよ!」 トレイの上にこぼれて散らかったパイの欠片を、人さし指でついついと角に集めている。 特に意味のない行動、癖、仕草。 下を向いたまつ毛は思いのほか長い。 女性らしい丸めの輪郭と、とがらせた小さな唇をじっと眺めた。 わずか2週間も経たぬほどのことではある、表情が硬い女だと思っていたが、見慣れてくると、そうでもないのがよく分かる。 口元の動きが少ないためか、笑顔を察することが難しいが、目全体、特にまぶたの閉じ具合と視線の飛ばし方で感情が読めるようになってきた。 今は、お目当てのキャラクターグッズを手に入れてご機嫌だ。 別段美人というわけではない。 ろくに化粧もしないし、ファッションにも興味なさそうだから、年齢の割には垢抜けず街になかなか溶け込めない。 逆に言えば、妙に若く、いや、幼くは見える。 特に手入れされてはいない黒髪の癖毛、化粧っ気がないためか肌はつややかで、気取らないラフな格好で。 歳を気にするようなことを言っていたが、光世と並んで不自然ではない。 トレイと食器を片付けて店を出ると、地下鉄のホームへと向かう。 雑踏の中、先を歩いていた光世が女をふり返った。 むんず、とぶっきらぼうに手を繋ぐ。 乗り込んだ車両は、通勤ラッシュの時間帯でもないというのに、ほぼ満員状態である。 だから電車は嫌いなんだよな、と心の中でぼやいたけれど、光世が人の波から庇うように立ってくれている、そのシチュエーションはとても良い。 よく少女マンガにあるやつだ。 生ぬるい冷房が肌をかすめるが、鎖骨のくぼみにはじわりと汗がにじんでいた。 目的地は乗り換えなしで数駅のところである。 主要駅ではないが夜の店の多い繁華街の中心部で、他の鉄道との連結駅でもあるから、ほとんどの乗客はそこで同時に下車するだろう。 ほんの数分の我慢だ。 唇を噛んだ。 ぎゅうぎゅうと人間が押し込められて、光世のパーカーの胸に鼻先が触れた。 洗剤のにおいと、国語辞典のようなにおいにくらくらする。 通りにはあちこちゴミが落ちていて、なんともいえない異臭が漂う。 昼間っから開いている立ち飲みの店の軒先には、浮浪者らしき老人がコップ酒を抱えて、棒立ちのままうつらうつらとしている。 あまり小綺麗とは思えない商業ビルのエレベーターで5階へ上ると、扉もなく空間が開けた。 さほど広いわけではなく、ただ柱と仕切りがないだけの簡素な撮影スタジオだ。 「あ、ウワサのカレシくんだ。いーよ、中で待ちなよ、入って。」 大きなカメラを抱えた青年が光世を手招きした。 「…いや、俺は…」 光世はもごもごと言いよどみ後退りする。 そのうつむき気味の顔を悪気なくのぞき込み、青年は目を輝かせた。 「うわ、ホントすげーダウナーイケメンじゃん、森下さんの言うとーりだわ。」 はつらつとした物言いにたじろぐ。 弟と似たようなオーラを感じている。 女が光世の腕をつかまえて引いた。 「えっと…噂の?の三池さんです。」 逃げ場を失った光世がギクシャクと名刺を渡して会釈した。 普段なら征羽矢の役目であるところだ。 青年はクスクス笑いながら自己紹介する。 「知ってるー。ネットニュース見たし。ミツヨくんね、よろしく!カメラマンの星野です。」 「メイクは…今日は?…あ、カタオカさん!おはようございます。」 女がスタジオの壁際のテーブルで準備をしている女性に手を振った。 「ミツヨくん、ノースのカタログモデル、やるんでしょ?」 「…!や、やら、ない…!」 星野の唐突な質問に、光世が目を白黒させる。 「まーたまた!森下さんはどーあってもヤル気だぜ?」 「ね、その美しいご尊顔をですよ?もっと世に知らしめて然るべきと思いますよ、わたしも。」 女が無責任に参戦してきた。 「ちな、イトーさんはいいよって言ってましたよ?」 「…!」 気圧されて言葉が出てこない。 征羽矢ならば、場を盛り下げずに、なおかつうまい言い回しで切り返すはずなのに。 「ちょっと何枚か撮らせてよ。」 光世の主張などはなから聞く気はないのだろう、女に言う。 「まずレーシングスーツね、メイクと着替え!」 デパートの服売り場にありそうな試着室程度の、カーテンで区切られた一角がある。 「どっかで暇つぶしてきていいですよ?」 女が光世に声をかけるが、光世はゆるゆると首を振って、手近なパイプ椅子に腰掛けた。 「あっ、待ってる間、撮るから、こっちこっち!」 星野が、ライトの眩しい白背景紙の前のスペースの方を、顎でしゃくるようにして指し示す。 「…そ、んな…むり、だ…!」 光世は慌てて顔をそらすが、星野は引かない。 「だいじょぶだいじょぶ!どっかに出すとか誰かに見せるとかじゃないから!俺のシュミだから!」 光世の耳元にそっと口元を近づける。 「昔のユキちゃんの写真見せたげるよ?かーわいいよ?」 ぐ、と光世は内頬を噛んだ。 興味をそそられる。 「…っ、モデル、なんて…したことないぞ…?」 「いーのいーの、突っ立ってるだけでいーの!」 カメラは三脚に固定してある。 星野は両手で光世の背中を、スタジオの中央へと押しやった。 「リラックスしてて!カメラ意識しなくていいから!」 パシャ、とシャッターが切られる。 そう言われても、どこを見ればいいのかからっきし分からない。 おどおどと辺りを見渡す。 「じゃあー、肩幅くらいに足開いてー。横向いてー。はい反対向いてー。」 次々とフラッシュが光る。 何枚かと言ったじゃないか、既に十数枚は撮っている、納得いかない。 「座ってみよー。あぐらー。片膝立ててー?いーね、深爪しちゃった、みたいな顔してみてー?…いーね!」 なんだその変な指示は、心の中でツッコミを入れる。 「立ってー?腕組んでー?めっちゃ遠くの看板の字読めねー的な顔してー?いーよ!いーね!」 「…もう…!もう、終わり、だ、むりだ…」 光世が片手で顔を覆った。 手のひらの影が目元から鼻へと落ちる。 「やー、ごめんごめん、あんまりかっこいーから。」 星野が全然反省していないテンションで謝る。 「…これとか、いいな、色っぽいな。マジでモデルやりなよ、小遣い稼ぎにゃなるぜ?」 カメラのモニターの画像をどんどんとめくり、口角を上げた。 そうこうしているうちに、カーテンの向こうから、黒のレーシングスーツに着替えた女が戻って来た。 そのまま、壁に据えられた鏡に向かう席に座り、片岡となにか言葉を交わしながらメイクを施されていく。 「店舗経営してるなら宣伝にもなると思うし。撮るのだいたい俺だし、考えてみなよ!」 「…弟を、推薦、するよ…」 光世はこの一瞬でずっしりと疲労した面持ちで肩をすくめた。 「あー、弟くん違うベクトルのかっこよさなんだって?サイコーかよ。」 ノートパソコンのタッチパッドを操作しながら、羨ましいぜ、と毒づく。 「当時のデータだから画素低めだけど、このへん、デビューしたての頃の、うーんと、12年前だな。」 パソコンの画面の中の、干支一回り年前の女は、薄い笑顔を浮かべていた。 ブロマイドというわけではなく、背景はサーキットのようで、片腕でヘルメットを抱えて、もう一方の手で前髪を触ってカメラを見つめている。 「これ俺がたぶん初めて撮ったユキちゃん。見てっていーよ?」 カチッ、とクリックすると、ぱっと写真が変わっていく。 照れたようにピースしていたり、ノースガレージのマークのトナカイのぬいぐるみに頬ずりしていたり、白い太陽光に負けて演出のようにぼやけた横顔だったり、やたら真顔で大きなトロフィーを頭上に掲げていたり。 「…トロフィー…」 「これはそんな大きな大会じゃなかったけど、けっこーポンポン入賞してたんだぜ?天才って言われてた。」 カチッ。 光世の指が止まる。 表情が固まる。 斜め横顔のアップ。 ツナギ状のレーシングスーツの上半身を脱いで腰で袖部分を縛っているのだろうか、紺色のタンクトップを着ていた。 襟元がしっかりと詰まっているレーシングスーツを着ているときには見えなかった首があらわになっている。 顔は晴れやかに、しかしほんのわずかに気まずそうに、微笑んではいる。 カメラ側の手を肩の高さまで上げていて、どこかを触れようとしている動作の途中のように見えた。 健康的に日焼けした首筋に不似合いな、赤黒い鬱血が筋になって刻まれている… 「…あー、これ?ユキちゃんはシートベルトで擦ったって。」 「…そう、か…」 なぜか言い訳がましく説明して、星野が横から次の写真へと変えてしまう。 「…レースを、していると、こういう…怪我が、やはり多いのか…?」 光世の気配が蛇のように、ぬるりと不気味に星野に絡みついた。 星野はごくりと喉を鳴らして固唾をのむ。 「…痣とか、擦り傷とかは、まぁ、それなりに…そうならないようにメットしてスーツ着るわけだし…グローブも…」 後ろめたいことなど1ミリもないはずなのに、じわりと冷や汗が滲む。 「…ユキちゃんは…なぁ、俺、コレ、言ってもいいのか…?」 不可思議な光世の圧に負け、自問自答しつつ、台詞が続いた。 「…ユキちゃんは、よく、こんな痣…腕とかしか分かんねーけど、あちこち…ずっと、何年も…」 その最後の方は尻すぼみに聞こえなくなった。 光世が静かにため息をついた。 「…そうか…仕方のないことだが、危険な仕事なんだな、と思う…」 星野を責めてもどうにかなることではない。 これ以上プレッシャーをかけるのは、今後のことを考えると得策ではない。 「…あっ!そうそう、この頃はまだグッズはロゴTくらいしかなくてさ!写真は宣材用でさ、配信に使うやつとか、雑誌に提供するやつとかさ。」 星野が画像の右上のバツマークを押して消して、別のファイルを開いた。 「このへんから、ドリフト競技ってのがスポーツって認識されてきて、観客も増えてきてって頃な、これが…9年前。」 またトロフィーを抱えている。 確かに実力があったのだ。 「…9年…」 無意識に呟いていた。 あの本丸が立ち上がったのが、最期の記憶の9年前であった。 さきの写真に比べると少しふっくらとした女の顔立ちは、まさにその頃のもののように感じた… 厳密には大典太光世が顕現したのはそこから1年半後であり、若い女性の外見というのは1年も違えばずいぶん印象が異なるのかもしれないが。 「ちょっと!やめてくださいよ!」 メイクを終えた女が近づいてきて、光世と星野が懐かしくも恥ずかしい記録をほじくり返しているのを見つけて大きな声を出した。 「こないだから昔の雑誌やら動画サイトやら出されて死にそうなのに…!」 thunder boxでの一件以来、ネット上では本人が黒歴史と蔑むものが芋蔓式に発掘されているのだ、たまったものではない。 「かわいかったよぉって盛り上がっちゃって。」 星野がペロリと舌を出した。 光世が、ぷいと横を向いた。 「…今も…かわ、いい…」 バン、と星野がノートパソコンを音を立てて閉じた。 予想外の光世の言葉に思わず手が滑ったとしか表現のしようがない。 女こそ、耳が真っ赤に染まる。 「…ばっ、っかじゃないです!?」 それをすぐ隣で片岡が微笑ましく見守っている。 メイクで映えて普段よりも華やかに飾られた女を、じっと見つめてから、光世は立ち上がって名刺を取り出した。 「…すごい…魅力的だ、化粧というのは、芸術…アートだと…」 それを受け取り、片岡も照れて頬を上気させた。 「ユキちゃん、もとが、いいから…」 「やめてやめて!公開処刑すぎます!」 女が目をつぶって叫んだ。 早く仕事を終えて帰りたい、切に願う。 ------------------------- 〜⑩に続く〜
2025/09/17 20:27:05(H4olDxZy)
投稿者:
三番
◆t2eXLuYuqA
読み応え有り過ぎです。
続きが楽しみです。
25/09/18 01:32
(cre8F0hI)
いつもレスありがとうございます♪
ほんとはね、ガチエロ読みたい利用者さまには申し訳ないなぁなどと思いつつ、ここにあげんなよって言われたら撤収する心づもりでちまちま書いてるんです… 一般向けの創作サイトにあげるとヘキが特殊すぎるからかbanされちゃったりするし… そんな中でこうやってお声がけいただけてとってもうれしいです♡ ほまにありがとうございますです♡
25/09/18 07:45
(bOh6sXRE)
投稿者:
三番
◆t2eXLuYuqA
私は、天さんには文才がある。と感じているので、他の所で投稿しても良いのになぁ、と思っていたのですが、色々と事情があるのですね。
たぶんですけど、ここはエロ要素少なめでも平気だと思います。小説の館ですから。 レスしなくても読んでる人は沢山いると思います。 少なくとも、私は応援してます。
25/09/19 00:30
(8j2VBNRp)
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