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不道徳的なアリスの旅路【1】
カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:空想・幻想小説
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1:不道徳的なアリスの旅路【1】
投稿者: chinanan
家庭教師に勧められた本を持って、丘の上の木に寄りかかりました。風が頬を撫で、水色のスカートが控えめに揺れます。
活字を追うごとに瞼がゆっくりと重くなっていくのを感じ、ついに鈴は夢の中へ旅立って行きました。

はたと目覚めると、そこは見知らぬ森の中。聞いたことがない鳥の声、薄暗くじめっとした重たい空気に身を縮めます。

「ここ…どこだろ…」

恐怖心を抑えるため、細い両腕で自身を抱き締め、声を出します。
あたりは鳥の声と葉が擦れる音だけ。鈴は立ち上がって歩き出しました。誰か人がいればここはどこか聞きたかったのです。それに帰り方も。

しばらく草を踏む音だけが響いていましたが、遠くに人の声が微かに聞こえました。

「だれ…?あの!どなたかいらっしゃるのですか!」

不安と期待に胸をぎゅっと掴み、震えながらも大きな声を出しました。
道の向こうにふたりの人影が見えました。

「あ?」
「誰だ?女?」

小走りに近寄ると、そこにはまるで鏡に映したような、そっくりな双子の青年。

「あの、道に迷ってしまったみたいで…」

人五人ほどあけて鈴は歩みを止めました。
顔を見合わせ、それから同時に鈴を一瞥した双子は一歩、鈴に寄りました。

「道を訊ねたい?」
「帰り方がわからなくなった“アリス”?」

双子の目の色が変わります。言い知れない恐怖を覚えた鈴は一歩後退しました。

「道を訊ねるならば代金を」
「帰り方を知りたければ代金を」

一歩。双子が踏み出せば鈴が下がります。

「すみません、お金を持っていません…」

緩く首を横に振って、それでも双子から目を離せません。まるで獰猛な肉食獣に睨まれている気分です。

「女王のコインなんか一枚だっていらないのさ」
「俺らが欲しいのは、“アリス”の蜜…」
「喉が焼けるほど甘くって、あの味を覚えたら他のものなんかとても口に出来ない」
「ああ兄さん、俺お腹が空いてきた」
「奇遇だな。俺もだ」
「おや、あんなところにオイシソウナ…」
「あマイ蜜をモッていル…」
「オいしイ蜜…アリス…」
「おれタチに…」

「いやぁぁぁぁぁ!!!!」

遂に鈴は恐怖に勝てず、背中を向けて走り出しました。
ゾンビのように両手を前に出し、ヨダレを垂らしながらのそのそと歩く双子から少しでも離れたくて、道も分からないのにとにかく走ります。
走って走って、そうして木の根に足を取られ、転んでしまいました。どさりと草の上に倒れ込み、慌てて後ろを振り返ります。
双子の姿は見えませんでした。

いきなり知らない森に来て、得体の知れない双子を目の当たりにして恐怖に涙が零れました。体も細かく震えだして、手を付いて転んだせいで泥だらけになってしまったワンピースを見て更に涙が零れます。
お気に入りのワンピースが汚れてしまった。それにここはどこ?おうちに帰りたい…
グズグズと泣き止まないでいると、ふわりと甘い匂いが鼻腔を掠めました。

「おや、お嬢さん。こんなところで、どうして泣いてるの?」

ひどく優しい声でした。顔を上げると鬱蒼と繁る森に似つかわしくなく、ぴしっとタキシードを着こなし、シルクハットを被った美しい青年が立っていました。
青年は小首を傾げると鈴の前に膝をつき、真っ白いハンカチを差し出します。

「泣いていては可愛い顔が台無しだよ。これをお使いなさい」

しかし鈴は手を伸ばしませんでした。転んだせいで泥だらけになってしまったので、この真っ白いハンカチを汚すのは躊躇われたからです。
それを察してか、青年は至極穏やかに微笑むと、何も言わずにハンカチで鈴の濡れた目元を優しく拭いました。

「僕は蓮。きみは?」
「あ、り、鈴…」
「そう。きれいな名前だね」

美しい動作。彫刻のように整った顔立ち。真夏の空を丸ごと閉じ込めたような真っ青な目。ふわりと微かに甘い匂いを漂わせ、目を細めて微笑んで見せた蓮と名乗る青年に、鈴の心臓はどくどくと脈打ちます。男性に対して美しいと思ったことは初めてでした。

「随分と派手に遊んでいたようだね」
「あっ…」

口元に指を当ててクスクスと笑われて、泥だらけになったワンピースを思い出しました。恥ずかしくていっそ消えたいほどでした。

「こっちへおいで。着替えを用意してあげよう」

王子様がお姫様の手をとるように極自然に右手を取られ、そうと思えばふわりと抱えられて、気がつけば体は空の上。

「えっ!えっ…!?」
「ちゃんと僕に掴まって。落ちちゃったら大変だよ」

びゅうびゅうと風を切って、内蔵が浮き上がるような何とも言えない浮遊感に絶叫しながら必死に蓮にしがみつきました。

☆☆☆☆

「そんなに怒らないでよ」

やっぱりクスクス笑う蓮に、鈴は泣きたいような怒りたいような、でも感謝もしているような複雑な感情を微塵も隠さず、部屋の隅で膝を抱えていました。

「空を飛ぶなんて聞いてないわ」
「あれ、そうだっけ」

やっぱり蓮はクスクス笑うだけです。
小さな小屋はテーブルと椅子とスツールがいくつかあるだけです。
蓮が差し出した真っ白いワンピースは鈴の成長途中の体にとてもよく似合っていました。

「鈴はどこから来たの?」

椅子に座る動作さえ美しく、蓮は鈴に問いかけます。鈴は首を横に振るだけでした。
アリス…と呟いたような気がして、はっと顔を上げます。先程出会ったおかしな双子が同じ単語を発していたのを思い出しました。
目が合った蓮はにこりと笑うばかりで、それ以上詳しいことは言いませんでした。

「僕が道案内してあげようか」
「えっ…」

願ってもないことでした。
しかし…

「あたし、お金を持っていません」

蓮はキョトンとして首を傾げ、それから笑い出します。

「女王のコインのこと?それなら僕はいらないよ。僕は……。ええと、鈴。僕はちょっと忙しいんだ」

不自然に話題を変えた蓮に、鈴は少し不信感を覚えました。しかしこうやって親切にしてもらい、優しく笑う蓮が悪巧みしていると思いたくありませんでした。

「先に南へ進んで行ってくれないかな。僕はその先で待ってるから」
「え、一緒に行ってはくれないの?」
「ごめんね。一緒に行ってあげたい気持ちは山々なんだけど、やらなきゃいけないことがあるんだ。南へ下る道は1本だけだから、迷わず行けると思うよ」
「…うん」

あまり我儘は言えません。
仕方なく鈴は小屋を後にし、言われた通りに南へ下る道に入りました。
見たことも無い鮮やかな花が咲き乱れる道でした。蛇のような蔦が絡んだおかしな木。黄色や紫や青い木の実や果物が沢山落ちています。
一体どんな味かしら。

急激にお腹が空いてきました。
この見たこともない果物、お味はいかが…

黄色ともオレンジとも言えない色の果実をひとつ手に取ります。皮は薄いようで、爪の先を引っ掛けるとすぐに瑞々しい果肉が顔を出しました。
ごくりと喉を鳴らしました。引き寄せられるように口元へ持っていき、一口齧りました。

甘酸っぱく瑞々しい果実は、思いのほか乾いていた喉を潤すのに十分なほどです。一口、また一口…気が付けば種と皮だけを残して全て鈴の腹へと収まったのでした。

「ああ…美味しかった。おなかもいっぱい」

満足した鈴は口の端に付いた果汁を舌で舐め取って、そうしてまた足を踏み出します。

しかし、歩けど歩けど景色が変わっている気がしません。まるで同じところをぐるぐる歩いているような…
急に怖くなってきました。蓮には道は一本だけだからと教わりました。確かに歩けそうな道は一本だけです。でも…さっきもこの鮮やかなお花の横に、黄緑色の果物が落ちていたような気がします。小走りになり、ついには走り出しますが、やっぱり景色は変わりません。

ぜいぜいと息を切らせて走る道の右側に、赤い屋根のお家が見えました。
誰かいるかもしれません。道を尋ねてみようと、赤い屋根を目指して歩みを進めました。

茂みを抜けると広いお庭が広がっていました。
そこにはベッドよりも大きなテーブル、全く揃ってない椅子、ティーセットとケーキやお菓子。背の高い帽子を被って欠けたティーカップでお茶を飲んでる男の人がひとり。それも椅子にお行儀よく座っているというのにステッキを振り回しています。言うなれば、異様でした。

「あのぅ…」

意を決してお茶会の最中の男性に話しかけました。

「おやおやアリス。迷子かな」

ひとりでお茶会を楽しむ男性が笑いました。決して悪い人には見えませんでしたが、鈴はびくりと体を震わせました。その単語にいい思い出がありません。

「いいえ!あたし、アリスじゃないです。鈴と言います」
「へぇ。まぁ名前なんてなんでもいいさ。それよりきみは果実を口にしたね?」
「え?」

男性は飲んでいたティーカップを放り投げました。

「あまーい匂いをぷんぷんさせてるよ。ふふっ悪い子だねアリス。あの果実は…」

クスクスと意味も分からず笑う出す男性に恐怖して一歩下がります。しかし何故か足に力が入らず、尻もちをついてしまいました。

「痺れるでしょう。あれは女を引き出す魔法の果実…おいしかったかい?あまかったかい?」

くすくすくすくす。
笑いながら一歩ずつ、確実に近付いて来ますが、足どころか体の力がどんどん抜けていって立ち上がることができません。ただただ体を震わせました。

「おやおやおやおやまるで可哀想な子ウサギのようだねぇアリス。怖いことなどなにもないよ。さあこっちへおいで」
「いやぁっ離して!」

腕を取られ、ずるずると引きずられながらテーブルの傍へと引っ張られていきます。真っ白いワンピースは草で擦れて汚れてしまいました。

「お茶会には甘いお菓子が必要だよ。そうは思わないかいアリス?」
「やっ…なにするの…」
「怖いことなどなにもないと言っただろう。さあお茶会の続きをしようじゃないか」

細身の体のどこにそんな力があるのかと聞きたいほどに、軽々と鈴の体を持ち上げてテーブルに横たわらせました。指先がじんじんと痺れ、眠る直前のように体が動きません。

「さあてアリス。オイシイお菓子作りには、下ごしらえが必要だよね?そう思わない?」

既に体は全く言うことを聞きません。なすがまま、ワンピースは首元まですっかり捲り上げられてしましました。人前で肌など見せたことなどない鈴は、恥ずかしくて泣きそうです。
そんなことお構いなしでテーブルの上に立って笑う帽子の男性は、ご機嫌にはちみつのようなものを鈴の体にとろとろとかけました。

(つづく)
 
2018/12/24 09:24:13(RTE73j7u)
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