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かおりにさせたように指先を口元に運び聖水と蜜にまみれた指を舐めることで、後から聖水を浴び、勇気があれば飲むという行為を改めて認識させるためだ。
槌 みほは、かおりの調教日誌のシーンや交わした会話まで暗記してるのではないかと感じるほど覚えているため、再認識させる必要性は皆無だった。みほ自身がデジャヴのようにかおりの調教日誌のページを脳内で捲っていた。 槌 「ワンピースを着て出発しよう」 槌 「はい、ご主人様」 槌 脳内でページを捲ったみほは、ここで褒美のキスが与えられることを待っていた。目を閉じたまま唇を差し出し、重ねた唇を受け入れた。 槌 舌先に聖水と蜜が絡みあった複雑な味を感じた。甘いデザートを食べた後に、塩気のあるしょっぱいものを食べたくなることを思い出し可笑しかった。もとよりみほの舌はその両方を同時に味わったようなものだったからだ。 槌 多機能トイレの開ボタンを押す前に念のため外の気配を扉越しに伺った。会話や足音は聞こえずどちらかというと静寂の世界が広がっているようだった。週末には駐車場への入場待ちの車列が車線を塞ぐほどの人気がある商業施設であるが平日の水曜日は人出が少ない、だからこそショップの更衣室での露出や多機能トイレを利用出来たりした訳だが。 槌 駐車場に戻っても駐車場を利用しているスペースがエレベーター通用口付近に集中し離れた場所は駐車の車は疎らだった。 「ルーフトップ開こうか?」 槌 「はい、いい天気なので。わたしがひとりで乗るときは中々開けないですし」 槌 「じゃあ運転もしてみる?気持ちいいよ」 槌 「ええ、でも都内は」 バッハの時代のヨーロッパの街並みを再現した商業施設を出ると、船の形をした科学館の横を通りお台場の海浜公園脇の道路を走る。 「ほら、自由の女神が見える?」 「写真で見たイメージより小さいんですね」 槌 「まあ本家より大きく造るわけにいかないからな」 「自由の女神って奴隷の対極なんですかね? 『隷属させられるが故の自由、穢されるが故の美しさ』」 槌 「『O嬢の物語』読んだんだ」 槌 「いいえまだ。ネットでちょっとだけ調べてみたんです」 槌 「みほは今どっちの自由を感じてるんだろう。隷属される自由?それとも全てをさらけ出す自由?」 槌 「隷属されるってことが分からないので、どちらかと言うとさらけ出す自由を」 海浜公園横を突き当たりまで走り右折すると、後信号ふたつでレインボーブリッジになる。 槌 「今度は首都高じゃなくて一般道で移動するからチャンスがあれば歩行者にも見られるかも知れない」 「ドキドキしますね」 槌 「冗談だよ、しばらくリラックスしていて欲しいからな」 槌 「はい、じゃあ東京の景色を楽しませていただきます」 槌 レインボーブリッジの首都高料金に入らず一般道を直進するとゆりかもめと並走する。槌ロードスターの車高の低さと橋の構造からレインボーブリッジの一般道ではさほど景色が見えない。 槌 「この先で道が左にループすると景色がいい」 緩やかな左カーブがループになりお台場の街が再び現れ観覧車が前方に現れた。みほがゆっくりと景色を楽しめるようにスピードを落とした。 槌 「観覧車のゴンドラの中でわたしは何を見られても構わないって気持ちでした」 「それならワンピースを脱がしてしまえば良かったかな」 「ご主人様の命令があれば、それもできたかも知れません。自分に露出願望があったなんて思ったこともありませんでしたが、見られてドキドキする気持ちが快感に感じました」 槌 「じゃあ自由な気持ちに気付かせてあげたってことだね」 槌 「ひとりじゃ無理ですけど、ご主人様がいてくだされば」 槌 レインボーブリッジを渡り終え赤信号に差し掛かるとトレーラーが停止していた。首都高横羽線でピンポイントで露出を見せたトレーラーと同じ海運会社のコンテナを積んでいた。 槌芝浦から札の辻を抜けると東京タワーが障害物に遮られずに美しいシルエットを見せるポイントがある。喜びの声をあげるみほは完全にリラックスして都内のドライブを助手席で楽しんでいるようだった。槌さっきショップのマネージャーに伝えたように、みほにとって『最高のプレゼントと思い出』になっていれば良いと願った。 槌 東京タワーを正面に見ながら左折すると登り坂になりイタリア大使館、オーストラリア大使館の脇を抜けて、更に有栖川公園を下るとノースリーブのワンピースを着た背の高い女性のグループが左手に現れた。 槌 「みほ、彼女たちの何人かはブラしてないと思う」 槌 「えぇなんでわかるんですか?」 槌 「そこがドイツ大使館なんだけど、ドイツの女性って結構ノーブラで平気で歩いてたんだ。堂々とし過ぎて逆にエロい感覚がないんだ」 槌 信号で前走車が停止したこともあり、助手席のみほからはよく見えるはずだ。 槌 「いち、にい、さん。すごい6人中半分です」 槌 みほが嬉しそうに教えてくれた。広尾のクランクのような交差点を抜けるのに多少時間は掛かったが、メキシカンを食べたいと望んだみほのために選んだレストランに到着した。倉庫のような外観を持ったレストランを選んだもうひとつの利用はバレットパーキングがありルーフトップを開いたままで車を預けることが出来るからだった。 「いらっしゃいませ」 「こんにちは、ルーフトップはこのままでいいですか?」 「貴重品だけお持ちいただければ大丈夫です」 槌 「じゃあお願いします」 店内に入ると一般的なランチ時間からはだいぶ過ぎているためテーブルにはすぐに案内された。 メニューからチキンエンチラーダ、コブサラダ、トルティーヤを選び取り分けをお願いし、食後のデザートにシナモンアップルチミチャンガを選択した。 「みほ、疲れただろう?」 槌 「はい少しだけ。今まで経験したことの無いようなことの連続だったので」 「経験出来て良かった? それともこんなこと経験したくなかったってことは?」 「全て経験出来て良かったと思ってます。かおりさんに憧れて同じことをってお願いした訳ですから」 「でも同じようなこともしたけど、かおりがしてないこともしたよ」 「そうですね、わたしがすぐに縛っていただいたので計画が狂ってしまいましたか?」 「計画はあくまで計画であって、実際に全て出来る訳じゃ無いし、計画以上のことが出来ることもあるだろうし。みほはみほだし、かおりじゃないからね。その逆も言えるし」 「はい、わかります。わたしの希望はご主人様がわたしにさせたいことをわたしが実行できるということなので」 「その意味では希望以上、計画以上だよ」 「ひとつお願いがあるのですが」 みほはバッグを持ち上げると中を見せた。 「なにこれ?」 槌 「長襦袢です。後で着ていいですか? ご主人様、着物姿を縛りたいとおっしゃってたので。それに修道女を縛ってみたいとも」 「さすがに本物の修道女は無理だろうけどね」槌 「ありがとう、みほ。喜ばそうとしてくれたんだね」 みほを引き寄せお礼のキスをした時にはちょうどコブサラダを運ぶウェイトレスがテーブルに到着したことに気付かなかった。
2019/01/14 03:12:23(cPQVDNpw)
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