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嗜虐の求婚 ⑦
カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:SM・調教 官能小説   
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1:嗜虐の求婚 ⑦
投稿者: 司馬 名和人
それから更に数ヶ月が経過した。その間に武井勾当は由香の両親に約束したように公儀の目付け方に話を通して既に関口隼人と由香との婚姻関係は無効となっているとの確認を取り付けた上で関口家の親類やかつての勘定書の上役、同僚らには丁寧に挨拶をしたのでもはや、勾当と由香との婚儀に意義を唱える者はいなくなったのである。

 それから、更に武井勾当は町奉行所の兵六、修理の同僚らにもいろいろと礼を尽くしたので八丁堀の近所の与力・同心の家の者たちも外で由香と顔を合わせれば「今回は誠におめでとうございます」と声を掛けられるようになった。そして更に由香がもっとも驚かされたのは武井勾当が自分と由香との婚儀の媒酌人に意外な人物を頼んだからである。

  「ええええ、あの鳥羽様に媒酌を」
 勾当から聞かされた媒酌人の名に由香だけでなく、彼女の両親もやや驚いた様子であった。

 武井勾当が媒酌人を頼んだのは二千五百石の直参旗本である鳥羽海老蔵勝洋であったからである。由香が驚いたのはその鳥羽家がかつて由香が奥女中として使えた旗も解けであったからである。

 その頃の鳥羽家の投手は海老蔵ではなく、その義父に当たる人物で当時の町奉行であったが、海老蔵はその婿養子であった。その後に義父の死去に伴い、数年前に家督を継いだばかりであった。

驚いている由香と由香の父・兵助にやや弁解するように「いえ、ご存知かと思いますが海老蔵様は林大学頭様のご次男でして、林家から取鳥羽家に養子に入った方です」と自分との関係を話し始めるのである。

 猪市の師匠である花岡徳市検校は学者として林大学頭の知遇を受けていたことは前述したが、その為にしばしば猪市も師匠の供をして林家に出入りしていたと言うのである。
  「その頃、林家の部屋住みであられた海老蔵様とは親しくさせていただきまして、それはあの方が取り羽家に養子になられたのちも同様でした。もっとも取り羽様のお屋敷に余り伺ったことはありませんでしたが、それで今回、今は御当主になられた鳥羽様に由香様と祝言を挙げることになったと申しましたら、その由香殿はかつこの家に芳香していたおなごだ」と申されたのでわたくしも驚いたのでございます。それで思い切って媒酌をお願い申しましたところ、快くご承知いただきました」

 その勾当の言葉を由香はやや唖然として聞いていたが、父の兵六、弟の修理は揃って誠に有難いと喜んだのである。
 
 そのようなことがあってついに由香と武井猪市との婚儀の日がやってきたのである。
 その婚儀の前の晩、全ての用意を済ませた中で母親と二人きりになった時に、母親の多江が由香の顔を覗き込みながらいつに無く真剣な面持ちで次のようなことを尋ねるのである。
  「由香、本当に良いんですね」
  「ええ、良いって、何がです。母上」
  「そそれは あの勾当殿と祝言を挙げることです」
 その母親の言葉に由香は目を伏せて「ええ」と言葉静かに返事を返すのである。そして、何故この期に及んで今更そのようなことをこの母が言い出すのかと訝るのである。
 そのような由香の意図を察した様に多江は次のようなことを言うのである。
  「あの勾当殿、いや武井猪市と言うお方は本当に由香、貴方を幸福にしてくださる方なのでしょうか」
 その母親の言葉に由香は思わず多江の顔を見つめた。そして口を開いた。
 
  「母上、何かご懸念のことでもあるのでしょうか?」
 その娘の反問に多江はやや慌てたように「いえ、そう言う訳ではありませぬが。今一つ、あの猪市殿と言うお方を父上や修理の様に信用して良いのかと思いまして」と言葉を濁すのである。
 由香はその母親の懸念を払拭するようにことさら笑顔を母親に見せながら「大丈夫でございます。母上。今度こそ、わたくし、幸せになって見せますので母上も後心配なく」と言うのであった。






 その翌日に旗本・鳥羽海老蔵夫妻の媒酌によって由香と武井猪市との婚儀が厳かに行われた。

 由香の両親、弟の修理や柴田家の親類や奉行所の関係者が顔を見せたが新郎である武井猪市の両親と家を継いだ弟の寅さんや親族の多くは奥州の国許にいるために姿を見せることは出来なかったのである。

 唯一江戸上屋敷の奥女中をしている猪市の二才下の妹である阿紀が親族として婚儀に出席するのみであった。

 その阿紀はいかにも御殿女中らしい身なりをしながら狐のように細い目で白無垢の花嫁姿をしている由香をしげしげと眺めながら兄の猪市に向かって囁くように「兄上、誠にお美しいお方ではありませんか。このお方ならば国に居られる父上、母上もさぞかしご安心でございましょう」と言ったのちに今度は由香の方を振り向いて姿勢を正しながら口を開いた。
  「義姉上様。妹の阿紀でございます。どうか末永く兄・猪市をお願い申します」
 そのように阿紀は年下ながら義理の姉となった由香に丁寧に挨拶をするのであった。
 その年上の義妹に対して由香も思わず「わたくしこそ、宜しくお願い致します」と返事をかえすのである。

 新郎側の親族は妹の阿紀一人であったが猪市が属する当道座の面々は多く顔を見せていた。

 猪市の師である花岡検校は勿論のこと、関八州の盲人を統括する関東惣禄検校を始め、多くの座頭らが由香と猪市との婚儀に出席して、皆、口々に猪市と由香に祝いの言葉を述べたのである。

 そのような喧騒の中で由香と勾当・武井猪市との祝言は滞りなく行われたのである。


 その夜。

 猪市と由香は婚儀の後も八丁堀の柴田家の離れにそのまま住むことになっていた。離れと言っても柴田家の拝領した土地の中に立てられた建坪約50坪ほどの広さを持つ、事実上の独立した家屋であり、それまで猪市はそこに手代兼中間である健吉と一人の下女とともに住んでいた。他に通いの小物等が数人雇っている様子である。猪市はその住まいとは別に本所の惣禄役所]江戸における当道座の事務を取り扱う役所]の近くに鍼灸・あんまの施療所を持っていて、そこに自分の配下の座頭らを住まわせているのである。

  その離れの奥にある夫婦の寝室に当たられることになった部屋に敷かれた贅沢な友禅の布団の上に浴衣姿ですっかり寛いだ猪市が寝そべっていた。

 そのように寛いでいる猪市に「失礼致します」との声が掛けられた。その声の方角に猪市が顔を振り向くと部屋の襖が開いて由香が跪きながらその部屋に入って来たのである。
 いかにも鮮やかな緋色の長襦袢を身に着けた由香が三つ指を突きながらその場に平伏するのである。
  「お待たせ申しました」

 そのように目を伏せながら夫となった男ににそのように口を聞く、由香の姿を猪市はじっと眺めているのである。
  「フフフフフフフフフフフフフ、あなたにはいかにもその色の長襦袢が良く似合うね」

 猪市は目を細めながらそのようなことを呟いたが、それに由香は怪訝な顔をした。その由香の様子を察したように猪市はやや苦笑しながら言った。
  「フフフフフフ、確かにわたしは目が不自由だが両目が全く見えない訳ではない。右目は確かに全く見えないが、左目はかろうじて光ぐらいは見えるのだ。そのようなわたしの目でも濃い赤や黒・白。黄色・緑等の色の識別はなんとか出来るのじゃ」

 武井猪市はそのようなことを呟きながら尚も襦袢姿の由香を眺めるのである。

  「ででもお、ここんなあ赤い長襦袢、とてもは恥ずかしい」
 由香はそのように言って俯くのである。

 この頃は堅気の女、それも由香のような武家の女がそのような派手な緋色の襦袢を身に着けることなど無かったのである。そのような色の襦袢を着る女は決まって色を売る女と決まっていたのである。
  「こんな真っ赤な長襦袢なんて、まるでお女///////////」
 由香は思わずお女郎みたいだと口走りそうになって言葉を飲み込んだ。自分はまさにその女郎に落ちる寸前にこの目の前にいる夫に救い出されたことを思い出したからである。

 そのような由香の気持ちを察したように猪市はニヤリと皮肉な笑みを浮かべながら言った。
 フフフフ、そのような派手な襦袢はまるで女郎が着るみたいですか?」
  「いえ、そのおお」
 由香はどう返事を返せば良いのか目を伏せると猪市は構わずに言葉を続けるのである。
  「とにかく、わたしはこのような目ですからね。折角の貴方との初めての夜だ。このようなわたしの目でもなんとか見える。その色の襦袢を貴方様に来てもらったのですよ。フフ、いけなかったですかな」
  「いえ、そんな、いけないなんて」
  「まあとにかく、そんな遠いところに居ても仕方がありません。もそっとこちらに。それに光は見えるので行灯はしばらくこのままにしてくださいよ」

 そう言いながら、猪市は布団の上に寝そべっていた体をむっくと起こすとその布団の上に胡坐を組みながら手で由香を差し招くのである。
  「ははい、」
 由香はそう呟きながらしずしずと猪市の方に近づくとその目の前まで来ると、再び平伏して三つ指を突きながら口を開いた。
  「誠に不つつかな者でございますが、どうか末永くお願い申し上げます」

 その由香の挨拶を聞いていた猪市は何も答えずに由香の片方の手を取ると突然に自分の方に引き寄せるのである。

  「そそんな、おお待ちください」
 由香はそのように声を上げたが猪市は構わずに由香を抱き寄せるのである。


  「フフフフフフフ、この時をどのように待ち焦がれていたか。フフフ、由香、そなたに判るかな」
 猪市はこの時に始めて由香を呼び捨てにしてから由香の頬におのれの頬を着けて頬ずりしながら由香の耳元で囁くのである。


  「フフフフフフフ、由香、そなた、わたしとそなたが始めて会った時のことを覚えておるかな」
 由香はどう答えて良いか思いあぐねた。由香がこの猪市と初めて顔を合わせたのは10年近く前のことで猪市はまだ座頭の身分の一つである衆分の位にあり、それまで住んでいた師匠である花岡検校の屋敷を出て、知人の紹介で町方与力である柴田家の離れを借りたばかりの頃で、その当時の由香はまだ15、6歳の小娘であったが、その当時から既にその美貌は有名で八丁堀小町と言われた頃である。

 そのような娘盛りであった由香が鍼灸・あんまを生業としていたまだ若い座頭などに鼻も引っ掛けなかったのは当然であった。その頃のことを今思い出しても、由香はいま夫となったこの猪市に関する記憶が無いのである。


 それから、まもなく由香は旗本・鳥羽家に奥女中として方向に上がり、更にそのまま関口家に嫁いだのである。だから、ほとんど、その間、この猪市のことなど由香の念頭には無かったのは当然のことであった。

  「フフフフフ、その頃のそなたはまるでわたしの存在など無いかのような感じであったのう。わたしが挨拶をしてもほとんどまともな返事すら無かったのお」

  「おお許しく下さい。そその頃のわたしはまだまだ子供でしたので、ごご無礼はご容赦を」
 由香としては今更、言われてもそのように返事を返すしか無いのである。

  「フフフフフ、それは良い。わたしもそれをいまさら咎めるつもりは無い。しかしなああ。その頃から由香よ。そなたはわたしの憧れの存在であったぞ」
  「そそんなああ」
 由香はその猪市の言い方に少し不気味なものを感じて思わず呟くのである。

  「ししかし、猪市殿、貴方様は」
 その由香の呟きに猪市はふと小声ではあったが厳しい声音で次のようなことを耳元で囁いた。
  「由香よ。一旦、夫婦となるからには、わたしをそのように呼ぶことは許さん。今後、わたしのことを呼ぶ際は旦那様と呼ぶのだ。いいな」

  「ははい、判りました」

 その由香の返事を聞いて満足しながら猪市は言葉を続けた。
  「確かに、わたしは目が良くは見えない。由香、そなたの美しいといわれる顔の有様も良く見ることは適わない。しかしなあ、不思議なことにわたしにはそのおなごが美しいかそうじゃないかは不思議と判るのじゃよ」

 そのおなごが持っている雰囲気、匂、その口から出る声音と言っものより、そのおなごが美人であるかどうかがだいたい判ると猪市は由香の耳元で囁くのである。
  「フフフフフフフフ、じゃからな。わたしはそなたと始めて声を交した頃より、そなたが稀に見る美景であると思っていた。あとである人よりそなたが八丁堀小町と言われていることを聞いてむべかるかなと思ったよ」

 猪市はそのようなことを嘯きながら由香の左手をぐいと掴むと突然にその手を自分の股間の方に導くのである。

  「ああ、な何をなさいます。おお止め下さい」
 
 猪市はその声を無視して更にその由香の片手を自分の股間の方に引き寄せたが由香は更に驚いた。なぜならば着ている浴衣が既に肌蹴られた猪市の股間にはもう何も無かったのである。
  「フフフフフフ、驚いたかな。床に入った時に既に褌、下帯の類は脱いでおるのじゃ」
 猪市はそのようなことを由香の耳元に囁きながら握っている由香の手におのれの股間の強張りを握らせるのである。

  「ああ」
 突然に猪市の股間の一物を握らせられた由香はそのような声を一言上げたきりで顔を朱に染めて俯くとその顔を猪市の胸に当てるのであった。
  「フフフフフフ、そのように驚くことは無かろう。そなたも一度は夫を持った身の上じゃ。まるで生娘みたいじゃな。前のご亭主の一物ぐらい握ったことはあるだろうに」

 猪市はそのようなからかいの言葉を言ったが由香はただただ顔を猪市の胸に埋めて恥ずかしがるのである。

 それから猪市はおのれの男根を握らせている由香の左手をおのれの右手で押さえながらことさら小さい声で由香の耳元で囁くように言った。
  「ほれほれ、由香よ。このままただただじっとしても仕方がない。そなたの手でわたしの一物をしごいてくれよ」

  「そそんな」
  「ほれほれ、もう既にこんなに大きく、硬くなっているが更にそなたのその手で少し慰めてくれ」
 猪市はそのように由香にささやくと由香もやがて猪市の男根を握らされている左手をゆっくりであるが上下に動かし始めるのである。

  「フフフフフフ、由香よ。その調子だ。いいぞいいぞ」
 猪市はそのような喜悦の声を上げながらやがて由香の左手から離した自分の右手をおのれの胸に埋めている由香の顔の顎に手をかけてあげさせるのである。

 それから猪市はやおら由香の首筋に舌を這わせ始めるのである。
  「あああだ旦那様あああああああ」
 由香はたちまちに喘ぎ声を出したが左手は相変わらず、猪市の股間の一物を握って動かしているのである。

 猪市はそのようにしばらくは由香におのれの股間の強張りを握らせながら由香の首筋を丁寧に舐め上げていたがやがて、由香の右肩に置いていた左手に力を強めて改めて由香の上半身を抱きしめるのである。
  「あああ、旦那様ああああ」

 それから猪市は再び、由香の顎の舌に手をかけてそれを上げさせると余り見えない目で由香と互いに見つめあうのである。

  「由香よ。ささあそのお口を開けるのだ」
 猪市はそう言ったかと思うと由香と唇を互いに合わせ始めるのである。

  「ピチュウウウウウウウウウ、ピチュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ、ピチュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ」
 そのように猪市な音を出しながら猪市は由香の唇を貪ったがやがて口を離すと由香はぐったりとしたように再び顔を猪市の胸に埋めるのであった。
  「フフフフフフフフフフフフフ、誠に心地よい口吸いであったな。フフフそなたの唇はまろやかじゃな」

 猪市がそのようなからかいの言葉を言うと由香はますます顔を赤くして恥ずかしがるのである。

 この頃、接吻は口吸いと呼ばれていたが猪市はこの口吸いがことのほか好みであった、この口吸いをやるとその当のおなごを心から屈服させることが出来ると感じていたからでもあるが、どのようなすれからっしのおなごでも口吸いを長くすると次第に大人しくなるような感じがするからである。

 それから猪市は再び、由香の顔を上げさせるとまた唇を合わすのである。
  「ピチュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ、ピシャアアアアアアアアアアアアアアア、ピシャアアアアア」
 今度は前よりも更に長く猪市と由香は互いの唇を合わせていたがやがて猪市が唇を離すと由香は「あああああああだ旦那様あああああああああ」と喘ぎながら猪市の胸にしなだれかかるのである。


 猪市はそのような新妻を抱き起こして由香の顎を自分の左肩の上に乗せ上げてからさも愛しそうに右手で由香の背中を撫でさすりながら、由香の耳元で囁くように言った。

  「フフフフフフフ、わたしの一物はどうかな」
  「ええ、そそれは」
  「ほれほれ、今更、生娘のようにかまととブルでない。ほれ前のご亭主殿とどうかと聞いて居るのよ」

 その猪市の言葉に由香はますます顔を赤くして「そそんなぞ存じません」と恥ずかしがるように呟くのである。


  「フフフフフフ、そなたの前の御亭主だった関口殿は遊蕩の挙句に吉原の女郎を足抜けさせて逐電したとか」
  「そそんなあの方のことはもう言わないで下さい」

  「いや、何、そのような遊び人であったならば、フフフフフさぞかしそなたとの床の中でも由香よ。そなたを極楽に導いたのではないかと思ってな」
 猪市がそのようなことを由香の耳元で囁くと由香はますます顔を朱に染めながら言った。
  「そそんな知りません」

  「そうかのおおおお、そのような遊び人であればさぞかし、床上手であったのであろう。ふふ、わたしもあやかりたいし、少し気後れするのお」
  「そそんな」
 由香は夫のその言葉にそれだけ言うのがやっとであった。

由香の前の夫であった関口隼人は遊蕩がたたって結局、身を滅ぼしたのであるが、いま猪市が言ったように由香との床の営みもさぞ激しかったのかと言えば、由香にはいま考えるとそうは思えなかった。
 関口隼人は遊郭ではどうだったかは知らないが少なくとも由香との夜の交わりにおいてはその由香に対するそれはいま考えても淡白なものであった。

 だから、関口が女郎と逃げたと言われてもいま一つピンと来なかったし、いま新しい夫から前の夫と比べてどうだと言われても正直言って由香にはどう答えて良いのか判らないのであった。

  「どうしたな。由香よ。ぼんやりして、そなたわたしの話をちゃんと聞いて居るのか」
 その猪市の言葉に由香ははっとしたように顔を上げて今の夫の顔を見ながら言った。
  「ええええ、何です、ああ」
 由香はややウロタエテそのようなことを言ったが猪市はやや表情を厳しくしてから口を開いた。
  「由香よ。そなた、何をぼんやりしておった。何を考えておった」
  「そそれは」
  「そなた、前の夫のことを思い出しておったのではないかな」
  「いえ、いえ。そんなことはありません」
 由香は猪市のその思わぬ言葉に慌てながら弁解したが、よく考えて見れば関口の話はそもそも猪市が持ち出したものであるので、それで由香を咎めるのは本来はおかしいのであるが、由香は何か後ろめたい感じで言い訳するように弁解するのである。
 そのような由香の姿をそれまでとは一点して冷たい表情で見るようになった猪市は依然として厳しい声音で言った。

  「そなた、さきほどよりいかにも殊勝な態度で居るようじゃが。心の中では何を考えて居るのか、良く判らんな」
  「そそんな」
 猪市はそのように俯く由香の様子を疑わしそうに眺めながらぽつりと呟くように言った。
 
  「由香よ。そなた、あの女衒らにおびき出されてあのいかがわしい遊郭に捕らわれの身になっていた間、あそこで何をしていたのじゃ」

  「ウウウウウウ、そそれは何をと申されましても」
 由香はその思いもかけない夫の問いに途惑いながら俯くのである。
  
  「そなた、何で黙っておる。別に後ろ暗いことがないのであれば、そなたの方から進んで話すと思うがのお」

  「そそれは・・・・・・・」
 由香はそう言ったきりにもう後の言葉が続かなかった。 まさか、あの牡丹屋の屋根裏部屋に捕らわれの身になっている間にに受けていた数々の仕込みと言われた陵辱されたことを話す訳にはいかないのである。



 そのような由香に猪市はいらだちを隠そうともせずにいかにも憎憎しげに口を開くのである。

  良いか、由香よ。そなたが柴田の家から行方をくらませていた間に、あの遊郭の連中に何をされていたぐらいはわたしも既に知っておるわ」

 その猪市の言葉に由香は思わず顔を上げた。それは驚きの表情をしていた。

  「フフフフフフ、何をそんなに驚いておる。良いかわたしは客としてあの牡丹屋を訪れたのじゃぞ。わたしがあそこに参る次第について詳しいことは申さんが、事前に由香よ。そなたのことはあの源蔵とか申す女衒より詳しい話は聞いておった」

  「ウウウウウウウウウウウウウ、それは」

  「さすがにあの女衒もそなたの詳しい素性は話さなかったが、元武家の妻女で借金の為に身を売ったおなごだとな。それで女郎になるための調教を一月ほどあの遊郭の屋根裏部屋でそう言う調教を受け持つ鬼八とか申す男に散々に調教をそなたが受けて一人前の女郎に仕上がったとかの」

  「うううううう、もうそれ以上、言わないで下さいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい」
 
2017/08/07 05:59:46(nkfo2X0l)
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