ここは某大学病院。松下由紀はこの病院の外科病棟で看護師長として働いている。
今日は若手と中堅看護師二人と夜勤についていた。
午前一時を過ぎた頃、一本のナースコールが入った。由紀が病室を確認すると特別室からのナースコールだった。由紀の顔が一瞬が曇ったがすぐに元の顔に戻ると、二人に暫く時間がかかるので何かあったら携帯に連絡を入れるよう言い残し特別室へ向かった。
特別室の前に立った由紀が名札を見るとそこには『氷山絞次』と記されてあった。氷山は国会議員で何かと理由をつけては外科病棟を指定して入院して来るこの男が苦手だった。正確に言えば生理的に受け付けないと言った方が正しいだろう。
その気持ちを抑えドアをノックすると、中へ入るよう促す声がした。中に入ると氷山が待ちかねたようにベットサイドに招き寄せるといきなり腰に手を回してきた。由紀は「アッ」と声を出し、氷山から離れようとしたが逆に腰を引き寄せられ背後から抱きつかれてしまったのだった。