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1:冬の菖浦
投稿者:
仁丹
私の今までは、何ひとつとして特別はなかった。
身長は170cm、体重は72kgメタボリック出腹だ。 31で見合い結婚し、二児に恵まれた。 浮気ももっぱら、愛人等ではなく、風俗で若い肌を抱く程度だ。 会社でも主任の地位で、もっぱら凡人だ。 妻に言わせると、平凡が一番幸せなのだという。 そうなのかも知れない。 私には、平凡が一番似合っているのだ。 [出会い] 会社の出張で東京の本社へと出向いた。 久々に乗る新幹線で、少し心踊らせ、車窓を眺める。 旅は、好きなのだ。まるで少年のようにはしゃぎたいのだが、大人しく流れる車窓の景色を眺めながら時間を過ごした。 こんな時でもないと若い肌など抱けない。 向かう新幹線の中で、もう1つの楽しみにも心踊らせていたのだ。 実質、二週間とわが社では長めの出張となる。 会社に着くと先ずは社内を案内され、会議室へ通された。 今回は各支社の主任クラスがあつまり、新たなマーケティング展開と開拓がメインテーマで、会社の狙いとしては、各支社の内情と本社の格差的な把握もあったと見えた。 集められた各支社の主任は、全12人だ。 その内の8人は、関西組でミーティングが終わると明日には、関西へと戻らされる。 ほぼ、親睦会の様なミーティングが催された。 東京本社に集められた主任の中で男性は10人、女性は二人だった。 1人は、関西からで歳の頃は20代後半か30前半といった所だ。 かなり美人でスラッと伸びた手足と京都なまりの色白長身の髪の長い、所謂『いい女』だ。 もう1人は、静岡支社で、こちらは、私と二週間共に行動するチームメンバーで槙野あやめ32歳 言動は、悠長でおっとりしている。 未婚との事だ。 あやめは、美人というよりは、可愛らしい女性だ。 身長も160もないかも知れない。 身体も細く、胸もペッたんこだ。 あまり口も開かない大人しく、か弱いイメージだが。 成績を買われ主任に任命されたと、同社からの男性主任、田中が教えてくれた。 田中は、『実はあやめチャン、身体で仕事とってきてるって噂ですよ。本社で通用するんすかねぇ。』等とも教えてくれた。 私は一通り、挨拶じみた会話を楽しみ、親睦会じみたミーティングを終えて宛がわれた社宅へ着くとまだ午後の5時、久々の東京だ。 支度して若い肌を求めて新宿辺りを目指そうと、社宅をでた。 駅は、社宅からも見えており、目前である。 駅前のコンビニで切らしていたタバコとガムを買い、コンビニを出た所で若い女が『先ほどは、どうも。槙野です。これからお出掛けですか?』 私服のあやめの見た目は25で通用すると見えた。 ジーンズのミニに膝上のニーハイソックス。 白のブラウスに黒のカーディガン。 足のラインが細くて真っ直ぐで美しくハイソックスとミニの間の生の太ももが艶かしく白かった。 そんなあやめに暫し、目を奪われながらも 『あぁ、槙野さん。いまから、お街へね。東京は美人美少女多いからね。たまには、妻いがいにお世話になりにいくんだよ』あっけらかんと言ってみた。 あやめは、嫌そうな素振りをする所か、自らの本心は悟られまいと思ってか両手で咄嗟に口を抑え 『まぁ…』と 一言呟いて、言葉を詰まらせていた。が、思い直した風な感じで 『良かったら、私と夕飯、ご一緒して下さいませんか?』 ミーティングの時には見せなかった笑顔だった。 言って直ぐにあやめは、 『お街へは、その後で』今度は、無邪気な子供のようにクスクスと茶化してきた。 自然と此方も笑いながら承知した。 槙野あやめ…。 実は、タイプなのだ。 [つづく]
2012/03/18 10:46:34(XAv1//2.)
投稿者:
仁丹
小柄で色が白くて華奢なあやめは、私より先だって歩き始めながら、
『食べ物は、なにがお好きなの?』 振り向き様に私に話しかける姿は無邪気で少女のようだ。 少しだけ、若き日のデートみたいで…。 この時点で、正直、この後で風俗に向かう気持ちは極めて薄れていた。 あやめは、駅とは逆に歩きはじめた。 私は、振り返り振り返り前を歩くあやめに雑踏に負けない程度の声で 『ラーメンがいいなぁ。あやめさんは?何たべたいの?』 前を歩くあやめは、足を止めて少し考えて 『お腹すいて社宅でたけど…何がいいかなぁ。決めて』 屈託なくあやめは、笑顔を振り撒いて、又、前を歩き出した。 これから夏に向かう5月。 なんとなく気持ちも解放かげん。 少しウキウキが、あちこちに感じられ、いつもより少し暑い夜だ。 あやめと少し酔いたくもあった。 丁度、先に居酒屋が見えていた。 『あやめさん。少し飲みませんか?お酒、大丈夫?』 するとあやめは、又、屈託ない笑顔で振り返り 『いいですね♪生ビールいきますかぁ』 快承で赤提灯の暖簾をくぐった。 流石は、東京の居酒屋だ。 活気に溢れ、人が充ちたホールに談笑が要り混ざり、まさにゴッタ返していた。 少し広めの居酒屋のようだが、少し圧倒さえ感じる。 私とあやめは、顔を見合せ 『凄い活気だね!!ちょっとビックリするね』 そう私から切り出すと眼をまん丸にしてあやめは、何度も頷いて答えた。 元気いっぱいの若者スタッフにいざなわれ席についた。 周りにつられ私達も談笑に談笑を重ねた。 夜も21時を回った。 あやめは、すこし瞳がトロンとまどろんでご機嫌なようだ。 『少し、落ち着いた店を探して移ろう』 そう言って席を立つとあやめも当たり前のように席を立った。 今日1日で槙野あやめを色んな角度で見れた。 彼女に興味が沸いている事に気付いた。 少しドキッとしながら、彼女の手をとって支える口実で柔らかいあやめの手をそっとにぎり、店を出ると私に手を繋がれたまま、かたわらのあやめは、身長が低めなので私でも少し見上げがちに熱い眼差しで 『二人きりよね。二人きりがいいなぁ。』 一度出た居酒屋の暖簾を再びくぐってハイヤーを頼み、あやめとラブホへ向かった。 風俗ではない、一般の女性、私好みの女性、これから起こる情事。 ハイヤーの中でいやがおうにも私の胸は高鳴る。 あやめの小さな手を握る私の手は、すこし汗ばみ熱を帯びている。 あやめは、つぶさに私の気持ちを察知し、私の肩に頭をもたげ、繋がれた二人の手に空いてるもう片手の掌を添えて答えた。 ハイヤーの車窓を流れるネオンが、はじめてキレイに目に映った。 緊張もあった。 ハイヤーがホテルに着いて、私とあやめは、貪るようにお互いを求めあった。 二人は時も忘れ、若者のように肌を重ねて欲望をぶつけ合った。 だが、これが 全てのはじまりだった。
12/03/18 13:35
(XAv1//2.)
投稿者:
仁丹
[初夏の隙間]
明くる日、仕事を終えて帰宅の途、昨日のコンビニに寄り、タバコと缶コーヒーを買い、店を出る。 何となく、まさかとは思いつつも辺りを伺う。 やはり、あやめはいない。 だが、妻の存在を忘れたかの様に、妻の手の届かない東京で、別の女の事を考えている自分。 『いかんいかん。東京へは仕事できてるんだ。いかんいかん。』 心の片隅で妻に謝する気持ちが芽生えていた。 人知れず苦笑いを浮かべて社宅へ向かった。 コンビニから僅か二三分なのだが、あやめを期待している自分が否めないのだ。 『本心なのかもしれない』一人、ボソッと呟いていた。 私、田原健次郎42歳 はじめて知った女性が妻である。 妻の言うように、私には平凡が似合っているのだ。 平凡こそが、私を含め、妻子共々、幸せに暮らしてゆく方程式なのだ。と、頭では理解している。否、理解している『つもり』なのかも?しれない。 だが、本能と言うべきか…。 脳裏に浮かぶあやめは、私の胸を締め付け、情動的感情を昂らせ、判断能力を著しく鈍らせていた。 結局、社宅へ着いてもあやめと行き合いはしなかった。 ホッとする反面、寂しい気持ちも同時に味わった。 自分の寝起きする部屋に着いても尚、窓の外を眺め、つい、あやめの姿を探していた。 思えば、ここが正念場で。 踏みとどまるべきラインだとは、みずから理解するのは、まだ、後の話しである。
12/03/18 23:10
(XAv1//2.)
投稿者:
仁丹
結局、この日は仕事を終えてからと言うモノ、あやめを窓の外に見つけることは出来なかった。私もついつい、窓際に陣取りタバコをふかしながらコーヒーをすすり、いつのまにか日付が変わるまで、取りつかれたように窓の外を眺めていた。
その間、考える事といえばあやめの事ばかりである。 昨日は、成り行きと言うべきか… 夜を共にしてしまった。 今日だって、仕事中はずっと一緒だったし、仕事中は意見や言動は私寄りでサポートしてくれていた。 "もしや、私なんかに気があるのでは?" そう思えてならないのである。 だからこそ、気になって何時間にも渡って窓際に陣取るに至ったのだ。 午前零時をまわり、小さな音で鳴らしていたラジオが、午前1時を知らせた。 諦めて寝ようと、窓際から撤収をはじめた。 すると駅とは逆側、そう、昨日、あやめと寄った居酒屋の方から、千鳥足の女性が足をもつらせ歩いてくる。 私は、もしや?と思い撤収の手を止め千鳥足の女性に目を凝らす。 一歩、又一歩。 そう近くない距離で、それは、あやめだと判断できた。 なんとした事だ。 あやめを見つけた瞬間の喜びは、今まで味わった事のない昂りではないか。 取るものも取り合えず外に出てあやめに向かって一目散に駆け出してしまった。 余りの勢いと物音に不審に思った同じ社宅の田中が見ていた事にも気が付かず、あやめに駆け寄った。 ふらふらと歩くあやめは、私を認めると 『あー。やっと現れたなぁ。待ちくたびれちったぁ。あははっ』 私のどの記憶を辿っても約束らしき欠片がみつからない。 『約束?しましたっけ?』 するとあやめは、 『うーうん。約束。してないよー。あははっ。でも昨日の居酒屋。くるかなぁーって。ふふふ。酔っぱらいだねー。』 なんだか申し訳なく思えて 『じゃ、今から飲み直そうか?』 するとあやめは、昨日と同じ目で 『お酒は、もういいの。それより、お部屋にお邪魔していい?又はゆっくりさせて欲しいの。1人は、嫌よ』 『ああ、いいよ』 私は、そう言って足取り覚束ないあやめを支えながら自分の部屋に戻った。 玄関に入り、あやめを手伝い、取り合えずあやめをベッドに転がしておいて、鍵をしめてから、あやめと一緒にベッドに転がってるバッグを取り合えず横に置いて瞳を閉じてるあやめをマジマジと眺めた。 昨日より、端正に映る愛らしい顔立。 柔らかな曲線の顎のラインから流線形に流れる首へのラインは、女そのもので、私の本能に直結する。 僅かな胸の膨らみが、アルコールに犯され、たまに大きく膨らんで、ため息に似た大きな息を吹いていた。 『寝たのか…。』確認するつもりではないが。 呟いた。 寝た?と思っていたあやめが瞑っている眼そのままに静かに口を開くと 『今日はシないの?』わかってるようにけしかけてきた。 『ああ。今日はもう遅いからね。ゆっく…んむ…』 全てを言い終わるのを待たずにあやめは、私の口を自らの接吻で塞いだ。 あやめが私の首に巻き付けた両腕がきつく少し苦しい。が、それくらいの方が男が高ぶるのだ。 二回目の夜が始まった。 目が覚めるとあやめは、既に部屋を後にしていた。 充実感と共の目覚めであった。 支度を済ませて出勤する。 昨日の資料作成とまとめの為、会議室へ向かう。 後から、あやめと同社の田中が追い掛けて会議室まで着いてきて 『お話しが…少しいいですか?』 怪訝な表情の田中に少し不安を抱きながらも 『ああ…なんだい?』 田中は、私の背中を押し会議室へ押し込んだ。 終始、田中は誰かを警戒しながら辺りを伺っていた。 『なんだい?何があったんだ?』 突然の事だ。何が起こっているのか解らないのだ。 すると田中は、私に振り返り 『昨日、槙野あやめと夜、一緒でしたね。あの女性は、辞めておいた方がよろしい。良くない噂が絶たない人です。手遅れになるまえに…』 何を言い出すかと思えば…口から出そうだったが、田中の顔に嘘はなさそうだったが、にわかに信じがたい気持ちではある。 『ありがとう。気をつけるよ』しか出なかった。
12/03/19 08:17
(VGwEbkRR)
投稿者:
仁丹
携帯の電波のない、中国の山間部に仕事で…(T_T)
暫くおやすみします(x_x;)グスン
12/03/24 15:48
(L3p6qRmf)
投稿者:
仁丹(ふっかつ)
田中の忠告を受けたせいなのか…
なんとなくだが、あやめを余計意識してしまう。 ダメと言われれば、余計駄々をこねる子供のように。 増してあやめの姿が色めかしく艶めかしく見えて思えるのだ。 あやめの身体を知った以上、あやめに対して自信があった。 出張先とはいえ、同社内では、恐らく自分よりあやめを知った人間はいないとまで自負できた。 自分自身でも 『自分の女だ』と思い定めていた。 まだ、二度しか交わってないが、二度とも相応に濃密であったのだ。 田中の忠告の言葉が、次第に嫉妬へと変わっていった。 『田中のやつ、自分があやめに相手にされないからって。あんな言い方はないだろうに。心のまずしい奴め』 ついつい心で田中を謗り罵った。 そして出張も残り1日となり、仕事も終えた。 あやめのサポートもあってか1日、予定より早く終わらせることができた。 本社のスタッフと出張組と合同で打ち上げとなって会場へ向かった。 辺りはまだ、明るく、陽もでていた。 会場につき、乾杯を済ませ、あちこち酌に周り、自分の席に戻って料理に箸をつけた。 少し遠くであやめが酌に周ってる姿を眺め、手酌で日本酒をちびっとやった。 紺のスーツに黒いローファー。 いかにも普通のOL姿で、笑顔をキラキラふりまいているあやめが、いとおしくさえ見えた。 ふと、田中の姿があやめを視界から隠し目の前に邪魔に現れた。 『やはり、あやめのコト。心奪われていらっしゃるんですね…。』そう言いながら田中は、日本酒の銚子をもち、酌をしようとした手を制して 『それは、私に対しての嫉妬ともとれますが?』 そう答えると 田中は、やんわり微笑み 『昔の話しですよ』そう言って白い歯をみせ笑顔で答えた。 『昔というと?君は、あやめと何かあったのか?』 自分でも、つまらない事を聞いたと後悔したが、言ってしまった後の祭り。 『はい、以前、彼女とは恋人同士でした。』 聞いた瞬間に やはりか…と、思った。 だが、この後 田中の発する言葉に絶句してしまった。 あやめの過去と… 今、あやめ本人を形成している外見的容姿。 それは、私の想像をはるかに越えたモノだった。
12/04/12 15:04
(WGtC3b2K)
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