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契約彼女4‐1
「つか、あちぃー」 と独り言を吐き出し、煙草を口に運んだ。 ここは北陸のとある県。 海沿いの旅館に泊まりに来た、2日目の朝である。 青い海に白い雲。 そして、溶けそうな程の高い気温。 「あちぃー……」 口癖のように呟き、右腕に止まる蚊を叩きつけ、寸前で飛び立ったそいつを目で追いかけ回す。 「んんー……はぁ~」 旅館から出てきた人物は大きく伸び上がり、清々しく息を吐き出した。 美佳ちゃんだ。 「おはようございますっ」 「おはよー」 煙草をふかす俺の横に腰を下ろした彼女は、眠気眼を擦りながら 「先輩、眠そうですね」 と訊いてくる。 「そう?」 貫徹ですが、何か? 夏合宿では、俺たち3回生は1回生を教えるのがメイン。 アフターフォローも含めて、暖かい眼差しで見守るのが主な役目だ。 しかも、制作室という室員の一人である俺は、同じ班の1回生室員に付き添い、原稿直しや音源チェックなどを行っていた。 録り直すかどうかを決めるのもその班の制作室員なので、何度も聞き直したり、いくつか録った中から厳選したりする作業も加わる。 まぁ、これは録音して作品を作るラジオドラマだからこそできることなのだが。 余談だが、番組は制作室、アナウンス室、技術室のメンバーがいて初めて成り立つ。 番組構成を考える制作室のディレクター、情報収集や原稿を書くアナウンス室のアナウンサー、音を合わせたり編集する技術室のミキサーが必要なのである。 そして美佳ちゃんは、夏合宿ではとても優遇されるアナウンサーなのだった。 「で、どしたの?」 「冷房がヤバくて……」 確かに、機材が熱を持つため冷房をガンガンに効かせている。 「ホットレモン飲んだ?」 「ホットレモン?」 ったく……アナウンス室の奴は何教えてんだよ。 「ホットレモンは喉にいいから、一応飲んどくといいよ。室長に言ったらくれると思う」 「わかりましたっ。ありがとうございます」 美佳ちゃんは弾けるように笑い、腰を上げた。 その天真爛漫な笑顔に、またグッと惹き付けられた気がする。 肩に毛先の掛かる明るい茶色の髪を弾ませ、美佳ちゃんは中へ戻っていく。 俺は喫煙者に対する仕打ちを恨めしく思いながら、青く澄み渡る空を見上げ、雲を浮かべるかの如く煙を吐き出した。
2010/10/05 14:08:47(5lW15PjF)
契約彼女4‐2
3泊4日の合宿は3日目に入り、それももう日付を跨ごうとしていた。 各班が制作した番組を聞き、爆笑したり、考えさせられたり、切なくなったり。 そして打ち上げが行われ、宴も酣(たけなわ)を迎えた。 そんな中、缶ビールを片手にひっそりとそこを出た。 夜空には星が瞬いている。 俺は煙草をくわえると、それに火を点けた。 友恵はどうしているだろう。 気を遣ってか、メールは一つも届かなかった。 そしてメールができる状態になった俺もまた、時刻を見てそれを送らない。 灰をポンッと落とし、缶ビールに口をつける。 「あの……先輩」 「へ?」 声のした方には美佳ちゃんが立っていた。 どこか追い詰められたような顔をしている。 「先輩は、彼女が浮気したら……どうしますか?」 都合がどうかも訊かずに、美佳ちゃんは質問を投げ掛けてきた。 「なに? 浮気されたの?」 力なく首を振る美佳ちゃん。 「遠距離って、寂しいですよね」 何処かで似たような台詞を聞いた気がする。 って言うか、あなたも遠距離だったんですか。 「先輩は、どうして2年も耐えれたんです?」 「……ま、座ったら?」 そろりと横に座り込む美佳ちゃんを尻目に、俺は煙草を吸い込み、長く息を吐いていた。 「信じてたから、かな」 俺が会いたいと思っているように、相手もきっとそう思ってくれている。 だから、お互いになんとか都合を合わせて会おうと努力する。 そういうものだと思う。 いや、思っていた。 「信じる、か……」 美佳ちゃんは左手の薬指にはめたシルバーリングを見て、溜め息をつく。 「でも、私が寂しいみたいに、相手も寂しいんですよね、きっと……」 「え? まさか、浮気してるの?」 俺の言葉には何も言わず、美佳ちゃんは膝を抱えた。 「もし心が揺れてるだけで浮気って言うんだったら……浮気してるかも」 何だか難しいことを言ってるみたいだが、要するに気になる奴がいるってことだよな。 「んで? 美佳ちゃんはどうしたいわけ?」 そこが一番肝心なところだろう。 別れたいのか、付き合っていたいのか、付き合ったまま他の男と遊ぶのか。 「相手に聞いてみます」 「……相手?」 相手って誰? 彼氏のことか? 浮気したい奴? 混乱している俺を他所に、美佳ちゃんは膝を抱え直し、暗い空を見上げていた。
10/10/05 15:39
(5lW15PjF)
契約彼女4‐3
「とても優しい人なんです」 美佳ちゃんは言う。 「たまに酔い潰れて、それがまた可愛いんですよね」 その場面を思い出したかのように、彼女は表情を綻ばせた。 「でも、自分の考えをしっかり持ってそうで……あぁ、大人だなぁって……」 これはなんだ? ノロケか? ノロケなのか? 「しかも、すっごく頼りになるんです。私の知らないこと、色々教えてくれるんです」 「へ、へ~……」 何か良くわからないが、あまりいい気が起きないのは何故だろう。 俺は無意識のうちに2本目の煙草を取り出していた。 「バイトでも、部活でも」 真新しい煙草が指の隙間をすり抜けていく。 フィルターをくわえようと控え目に開けた口は、そのままの形で固まっていた。 俺の視線は下を向いたままなのに、此方を見る美佳ちゃんの様子を視界の端で拾ってしまう。 「先輩っ……」 美佳ちゃんの声は、小さいながらも俺を責める立てる。 「私、どうしたらいいですか……?」 どうしたら……、と小さく繰り返した彼女は、腕の間に顔を埋める。 正直、俺にはどうしたらいいのかわからない。 美佳ちゃんも、俺も……。 生暖かい潮風の名残が頬を撫で、妙な緊張感を助長した。 「寂しい時に傍にいてくれて、楽しいときには一緒に笑って……辛いときには支え合って……それが恋人だと、私は思います」 でも、と続ける彼女の顔は憂いを帯びている。 「でも、彼はどれもしてくれない」 「うん、まず遠距離を諦めよっか」 やっと出た台詞がこれだった。 「甘過ぎるよ、それは。遠距離だって、一緒に笑ったりできる」 ただ、機会が少ないだけで……。 「美佳ちゃんは、きっとまだ心が弱いんだ。好きな気持ちが弱いって意味じゃなくて、ん~……」 「……じゃあ」 何故か俺に擦り寄ってくる美佳ちゃん。 「先輩が私の強さになって……?」 甘い香りがふっと漂う。 パーソナルエリアに入って初めて香る美佳ちゃんの匂い。 それが鼻孔をくすぐった瞬間、俺は何故か彼女と口づけを交わしていた。
10/10/05 16:48
(5lW15PjF)
契約彼女4‐4
旅館の裏手の入り口から少し脇に出て、物影に身を隠すように身を寄せ合った。 重なり合う唇は互いを求め、やがて自然に舌が絡み合う。 「んふぁっ、仁様……私……」 言った後、美佳ちゃんはハッとしたように視線を下ろした。 「今……」 「……私、変なんです……」 俺の服をギュッと掴み、胸に額を押し当ててくる美佳ちゃん。 「一人でするとき、いつも先輩を……仁様って……。意地悪されるのを想像したら……それだけで……」 内心の歯車がクルクル回り、あるところでカチリと止まる。 「それだけで?」 彼女の顎を親指と人差し指で挟み、グッと上へ持ち上げる。 「続きは?」 「か、感じます……」 美佳ちゃんの……いや、美佳の瞳は真っ直ぐに俺を捕らえ辱しめを乞う。 そんな彼女の黄色いシャツを脱がせ、ジャージのズボンをずり下ろした。 美佳は恥ずかしそうにしながらも、激しい抵抗は見せない。 「あとは自分で取って?」 「……はぃ。じんさま」 それは自分から人権を剥奪する呪文なのだろうか。 手はしっかりとブラのホックを外し、肩紐から腕を抜いていく。 肌を羞恥に染め、しかし興奮して息を荒げていた。 上下セットの黒い下着は一部がシースルーになっており、卵形シルエットが見える。 だがそれは直ぐに露にされ、手入れのされた陰毛だと知るところとなった。 彼女はミュールに足を差し込み直すと、手を前に組んで背中を起こした。 「ここ、外なのに……」 「ぁぁ……っ……」 白い頬を真っ赤にして恥じらう美佳。 小ぶりな胸の先は固く尖り、小さいながらもその存在を主張する。 「あぁっ……」 乳輪に沿って指先を這わせた。 それだけで美佳は腰を震わせ、甘い吐息を洩らしていた。 「こんなところで感じてるの?」 「はんっ……ごめんなさっ、い……」 両方の乳輪の縁をなぞり、彼女の反応を愉しんでいた。 物欲しそうに腰をくねらせ、潤ませた瞳で媚を売る、そんな反応を。 「お願いです……はやくっ、早く摘まんでください……」 「ふっ」 「ひぁんっ!」 勃ち上がる乳首を摘まむと、美佳の体は大きく弾んだ。 慌てて口を閉じ、艶かしい声を封じ込めようとする。 しかし乳首を捻られるように刺激されると、堪えきれない快感が僅かな唇の隙間から洩れだしていた。
10/10/06 05:56
(jEqXDcSi)
契約彼女4‐5
静かな夜の空間は、少しの物音も大きく響かせてしまうかもしれないという不思議な緊張を感じさせる。 小さな旅館の幾つかの部屋にはまだ明かりが灯っていて、宴の余韻を楽しむ者や、恋愛話に花を咲かせる者などが起きていることを示唆させる。 そんな中、こっそりと外に出ている俺と美佳は、人知れず淫らな戯れを続けていた。 「これが……仁様の……」 短パンを下ろして愚息を目の当たりにした美佳は、小さく息を呑んだ。 うっとりした表情で、青筋を浮き上がらせたそれを右手で優しく、ゆっくりと扱き上げる。 「仁さま……。オチ○チ○様に……ご奉仕させてください……」 恍惚を滲ませ、懇願する美佳。 男性器にまで敬称を付け、自分を貶めているのだろうか。 「いいぞ?」 「……ありがとうございます」 俺の前にしゃがみ込んだ美佳は、シャフトに舌を這わせた。 舌の腹を押しあて、何の迷いもなく唾液を塗り付けていく。 大きく股を開き、膝を立て、脚がMの字を描いていた。 「はん……はぁあ……」 細かいタッチで這い回った舌は裏筋を舐め上がり、やがて離れる。 変わりに小さな口が陰茎をくわえ込み、前後に動き始めた。 彼女の左手は自身が溢れさせる愛液を救い上げ、敏感なところを滑っていく。 「んふぅ……んぐっ……」 懸命に首を振り、くわえきれないところは右手でカバーする。 自ら与える快感に喉奥で喘ぎながら、俺の顔色を窺うように上目遣いをよこしていた。 俺はただ蔑みを含めた不気味な笑みを浮かべ、それに彼女は泣きそうな顔をしながら、瞳の奥で悦んでいる。 「んぅ……お願いします……」 浅い呼吸を繰り返しながら、美佳は言った。 「仁様の、オチ○チ○様を……この、はしたない……私の……」 と。 立ち上がり、形のいい尻を此方に向ける美佳。 「私の……牝穴に、お恵みください……」 彼女の手に押し開かれた花弁は、トロトロした蜜に妖しい光を放っていた。
10/10/06 07:24
(jEqXDcSi)
契約彼女4‐6
「んんぁ……んんっ……」 美佳の中が俺を受け入れていく。 その快感に出てしまう声を、何とか押さえ込む彼女。 しかし中は嬉しそうに肉棒を締め上げる。 壁に手を突き、尻だけを差し出すその格好は、所構わず性欲の捌け口になる奴隷のようで、俺を更に興奮させる。 「んっ……んぁっ……」 突き上げる動きに合わせて美佳の髪がふわりと舞う。 止めどなく溢れ出る淫汁は肉棒を伝い、陰嚢にまで至っていた。 「んぅっ! ん゙ん゙ぁっ!」 俺は乳房に手を回し、救うように揉みあげる。 そうしながらまた乳首を摘まんでやり、肉壺の反応を愉しんでいた。 美佳も声を殺すのが難しくなり、しかしこの状況下では我慢せざるを得ない。 その嬌声の替わりなのか、愛液は止まることを知らなかった。 「あぁっ! ん゙ん゙ーっ!」 右手を陰核に向かわせると、美佳は甲高い声を上げてしまい、慌てて右手を口に当てた。 「ん゙ーん゙んっ! んぐぅ! ん゙ゔぅーーっ!」 肉芽を摘まんだ瞬間に、彼女の体は躍動した。 腰をカクカクと不自然に動かし、絶頂の先に意識を持っていかれる。 俺は突き上げていたイチモツを引き抜くと、彼女の綺麗な脚に性欲を引っ掻けた。 不気味に輝くそれは、射精を終えてもなお微かに跳ねていた。 未だ細かく身を震わせる美佳。 壁に押し付けられた左手には、あのシルバーリングが寂しそうに光っていた。 次の日。 海で遊ぶ奴らを横目に、空と海との境界を呆然と眺めていた。 まるで接しているようなのに、そこには確かな隔たりがある。 どうして俺は美佳に、俺のところに来いと言えなかったのだろう。 美佳が俺に気があることがわかったのに、抱くだけ抱いて、ほったらかしだ。 それに……何か、変な蟠りを抱いている。 彼女と肌を重ねたことに、とてつもない罪悪感を感じている。 握り締めた携帯を見つめ、だが、友恵にメールを送る気は起きなかった。 空と海は接しているように見えて、でも確かに隔たりはある。 俺と友恵も、接しているように見えて、しかしはっきりとした隔たりがある。 彼女との間には、契約という境界がある。 それなのに、友恵の存在は俺を後ろめたい気持ちにさせた。
10/10/06 09:25
(jEqXDcSi)
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