佳月ちゃん
グレーのリクルートスーツはいいけどスカートの丈
膝上十、いや二十って短くね
一方もう一人の新入社員の俺
紺のスーツで所在なく佳月ちゃんの向かいの席に座っている
ふう
軽くため息
一日は途方もなく長かった
それで今度の飲み会だけど
窓際で来年退職予定の部長から提案
泊りでゆっくりやりたいんだけど
どうかな
異議なし
じゃ町のはずれのなにがしホテルで
佳月ちゃんはいいの
私はなんなりとお申し付けがあれば従うだけだからさ
あなたのほうが心配
お酒飲めるんでしょ
覗き込むような目線はとても他人とは思えない
会社思いのいい子だよな
俺特に目標はないけどこんな子だったら結婚して妻にしたいな
そしてまたふっとため息をつくのだった
かなわないよこの見てくれじゃ勝負はついてる
裾を詰めすぎて隙間のできる足の先っちょは春風でくるぶしがやけに涼しかった
うちはさアットホームな会社だから
会社は一つ社員はみな兄弟
っていってさ
そ、そうですよね
ははは
お酌をしに行った
ま
今年が最後なのよ
来年は俺も還暦だよ
え
辞めちゃうんですか
円満退職にどうかご協力を
部長
人がよさそうないやそれだけが取り柄の六十男は新人の俺に頭を下げる
そして宴もたけなわ二次会へとなだれ込んでいこうというとき男が一人追加で参加してきた
社長
部長が立ち上がり廊下に出た
社長と呼ばれた男は眼鏡をかけひそひそと何やらまじっぽい話をしているところ
戻ってきた社長と部長は分別盛りのご立派な男性としか見えない
ささきょうはここまで
みんな二次会は女性陣の部屋で頼むよ
ちぇ
所払いかよ
女性陣といっても部長のワイフとパートの中年女性二名様だけだった
部屋を出たのは
あ
佳月ちゃんは足止めか
スカートの丈のことでお説教でもされるのかな
そんな新人歓迎を兼ねた定例の飲み会も一夜明け朝食後に解散という段取りだった
佳月ちゃん
浴衣の上に丹前を羽織ったその表情は起きたばかりなのかすっぴんが痛々しい
おはよう
返事はなく何気に目をそらすようになったその挙動も特に気にすることはなかった
数日後佳月ちゃんはその支店に来なくなった
訳は詮索しない
彼女の分も仕事頑張るよ
何事も前向きにというのがそのころの俺のモットーだった
それから
何年たったことだろう
仕事に忙殺され新人の頃のことはすっかり忘れていた
三月決算も一段落つき四月からは俺も支店長
その引継ぎで本店を訪れたのは入社式以来のことだった
本店付き部長代理吉月です
どこか見覚えのあるそのスタイルのいい女性は
佳月ちゃん
そうだったのか
先輩から聞いていた
支店長になると本店で肉弾密着接待がある
すごくスタイルのいい女性でここ数年毎年のように代わる支店長はみなその接待を受けている
断った者はいない
社員はみな兄弟
そういうことか
私次期新役員に推挙される見込みなんです
あなたも推してくれますか
総会には出られませんが吉月さんで異議ありません
同伴して入ったホテル
朝まで何回でもいいですよ
佳月ちゃんの必殺技は後ろ向きの騎乗位で
くい打ちピストン
しかも高速
大丈夫ですか
完了でーす
アタック人別帖
なにそれ
見せてくれますか
はい
どーぞ
今現在も書きかけのその意味深な手帖は時系列で何年も前にさかのぼり記載されたものだった
某年四月
社長の剛刀にて破瓜
簡潔な記載はかえって想像が膨らんだ
痛い
佳月ちゃんのくぐもった声が聞こえてくるようだ
そして
え
創業者である吉月会長のお名前
かすかにイカのにおいがする
硬くならずお口の中に発射
初夏花咲き乱れる栗の古木
おなかの上で頓死
この時は社葬だった
歴代の支店長が名を連ねる
ナースコスプレ
女教師コスプレ
今回白いドレスとヴェール
ああ
さっきの一発効いた
俺は奪われ失った日々を取り戻すことができるのだろうか
関係ないけど
佳月ちゃん
バレーボールやってたの
秘め貝のサーモンピンクが目に焼きついて離れない
お代わり
いいかな