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後悔13
カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:シナリオ 官能小説
ルール: エロラノベ。会話メインで進む投稿小説
  
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1:後悔13
投稿者: まさ ◆72/S7cCopg
 朝香は白いカットソーの上に薄い桃色のベストを着て、下はベージュのス
カートという服装で、健介が慌てて用意した座布団に尻を落ち着けて、細い
両足を床に伸ばしてくつろいだ。
 健介の部屋は、六畳で、置いてあるものといえばベッドと勉強机と本棚く
らいである。床にはカーペットが敷いてある。腰掛けるところといえばベッ
ドの縁くらいしかないので、健介は急いで座布団を持ってきてそこに座らせ
たのである。
「何だか、床に座らせちゃってごめんね。居間ならソファあるから、そっち
行く?」
 健介は、予想外の来客にやや取り乱し、やたらと気を遣う。
「ううん。ここがいい」
 朝香は微笑して言った。物静かな雰囲気である。幼い頃は、とにかく無邪
気で快活だったのが、すっかり大人びて、上品になった。昔は何でもなく一
緒に遊んでいたのが、今となっては同じ部屋に居るだけで、ひどくどぎまぎ
する。
「突然で、ごめんね」
 と朝香が言ったので、健介は、はっとした。我知らず見惚れていたのであ
る。
「いや! 全然。大丈夫」
 健介は大袈裟に首を振った。
 二人は、それからしばらく、他愛のない話をした。昔の思い出話などをし
た。二人とも共通の話題だから、話は盛り上がった。しかし、話題を持ちか
ける朝香の態度はどこか白々しく、無理があり、彼女がわざわざそんな話を
するためだけに来たのでないことは明白であった。朝香は、ここを訪れてか
ら常に微笑して、慎ましく、漫画などなら、背景に一面の花でも書きたいく
らいの雰囲気なのだが、やはり、先日と同じく、顔色が良くない。蒼白であ
る。健介は、彼女の突然の来訪に心躍らせながらも、その点を激しく心配せ
ずにいられなかった。
 一瞬、話が途切れたのを見計らって、健介は、
「ところで、今日はどうしたの?」
 と言った。その途端に、朝香の顔は引き締まり、笑みが消えた。健介はた
だならぬ気配を感じた。
「相談事があって」
「なに?」
「実はね」
 と言いかけて、ちょっと躊躇して、続けた。
「川上くんが、パチンコにはまっちゃって」
 健介は体を強張らせた。その先の言葉は予測がついたし、パチンコという
語を聞いただけで、すさまじい嫌悪の情が腹の底から湧いて出た。
「借金を」
 健介の、直人への信頼は、消えた。
 朝香の話は、半年ほど前から、それまでほとんどやらなかったパチンコに
のめりこみはじめ、最近ではかなり頻繁に行くようになった。いつの間にか
借金もしていた。いわゆる闇金というのではなくて、大手の名のある金融会
社から借りて、額も大きくないから大丈夫だと本人は言う。しかし心配だ。
連帯保証人にはなっていないし、なる気もない。そんなことであった。
「本人は大丈夫だって言うけど、心配で。どうしたらいいのか」
 と言って、朝香は溜息をついた。
 朝香の悩みに対して、健介の考える解決法は、単純明快であった。別れれ
ばいい。恋人同士と言っても、所詮は他人なのだから、頼りなければとっと
と見限ってしまえばいい。しかし、今のところ朝香にはその選択はないらし
かった。どうやら、恋人として、近くにいる者として、そういう事態になる
前にどうにかできなかったことに責任を感じているらしかった。感じないで
もいい責任を。何とか立ち直らせたいというのが、今の彼女の望みらしかっ
た。
 健介は、そんな彼女にいじらしさを感じるとともに、そんな愚かなことで
大切な人が苦悩することにもどかしさを感じ、身悶えしたくなった。
「とにかく、奴自身に始末をつけさせることだ。間違っても、面倒を見ては
いけないよ」
 健介は諭すように言った。
「そうよね」
 朝香は、子供のように頷いた。眉毛をめいっぱい下げていた。
「嫌な話しちゃってごめんね。健くんに話せたおかげで、だいぶ気が楽にな
ったよ」
「そんなら良かった。これから、なんか困ったことあったら、遠慮なく言っ
てな。まあ、聞いてあげるくらいしかできないかも知れないけど」
「ううん。それだけでも十分だよ。ありがとう」
 それから二人はまた少し話をした。朝香の来たのは昼過ぎだったが、もう
夕方近くになっていた。朝香はふと、何かに気付いたように時計を見て、言
った。
「あ。健くんは、これからまた千葉に戻るんでしょう?」
 健介は頷いた。
「向こうに着くの遅くなっちゃうね。ごめんね。私、もう帰るね」
「じゃあ、送るよ」
「本当?」
 朝香は一瞬、嬉しそうな顔をした。が、すぐに心配の顔になって、
「でも、時間は大丈夫?」
「だって、歩いたってせいぜい十分くらいの距離じゃないか」
 朝香の家は、昔から知っているから、そう言った。ところが、
「ああ。言ってなかったね。私ね、独り暮らし始めたから、もうあそこには
住んでないの」
 と朝香が言ったので、健介は驚いた。
「今はね、小平に住んでるんだよ」
 二人が今いるのは府中で、小平はその北に位置する隣町である。自転車で
およそ三十分程度だという。
「そんなら往復したってまだ余裕だよ」
 朝香は悪びれていたが、健介は強引に送ることに決めた。
 道中、二人は独り暮らしの苦労について語り合った。これも共通の話題だ
から、話は弾んだ。二人ともだいたい似たようなことで苦労しているらし
く、同じような思いをしているということは、健介の心に愉快な気持ちを起
こさせた。
 着いたところは、比較的新しいらしく、小奇麗だが、地味なアパートであ
った。朝香にはおよそ似つかわしくない建物だが、二十一歳の女性が独り暮
らしをするとなれば、それも仕方のないことであった。健介は、防犯等の問
題は大丈夫なのだろうかと、とても心配になった。
「送ってくれてありがとう。お仕事頑張ってね」
「うん。小嶋も。色々と」
 朝香は弱く笑った。
「大丈夫よ。健くんのおかげで、大分元気でたから」
 嘘でも強がりでも、そう言ってくれるのが健介には嬉しかった。
 健介は、何かあったら遠慮なく相談してくれと念を押して、朝香は頷き、
それで別れた。
 健介は朝香の話を反芻して考えた。昨日、直人に会ったときも、些か軽蔑
の感情を起こしたが、先の話で、それが極まったという気がした。健介はパ
チンコが大嫌いであった。自らの父親が、それのために身を持ち崩して、離
婚せざるを得なくなり、母親が自分を育てるために倍の苦労を余儀なくされ
たというのを知っているからである。健介にとって、パチンコあるいはスロ
ットなどは、存在そのものが許すべからざる悪であった。まして、それのた
めに借金を作ったとなると、ますますその父親と重なって見えて、今に朝香
がとてつもない苦労をさせられるのではないかと、不安にならないわけには
いかなかった。
 千葉に戻ってからも、不安は消えなかった。朝香の側にいてやりたいと思
った。直人を監視したいと思った。せめて電話だけでもと思い、携帯電話を
手に取って、電話帳から「朝ちゃん」の名を出したが、恋人でもない自分が
そこまでするのは図々しくはないかと、一日、二日は、通話のボタンを押す
ことができなかった。が、三日目に我慢が出来なくなって、押した。
「もしもし。健くん?」
 朝香の声は、思いの外弾んでいた。
「どうしたの?」
「いや、特に用事があるわけじゃないんだけど、どうしてるかなと思って。
あれからどう? 何か変わったことはあった?」
「ううん。何もないよ。もしかして、心配してかけてきてくれたの?」
 朝香はそれは質問だったが、ほとんどそれと決め付けているかのように、
嬉しそうな調子であった。健介は照れ臭くなって、
「うん。まあ」
 とやや濁して返事をした。
「ありがとう」
 それでも朝香の調子は変わらなかった。
「何もないなら、まあ良かった。それじゃあ」
 用もないのに長電話するのは迷惑だろうと考えて、電話を切ろうとした。
ところが、朝香が悲鳴に近い声を挙げたので、健介は動きを止めた。
「待って! まだ切らないで」
「どうした」
「もう少しお話したい」
 急に調子を落として、低く小さな声だったが、甘い声であった。受話器を
通して、息が耳に吹きかかるかのような気分がした。健介は、朝香の心が自
分の心にぐっと接近してくるのを感じた。彼は徳義心の上から、これはまず
いと思ったが、本心では、痛快であった。
 話は、またしてもどうでもいいことばかりだったが、健介は心底愉快だっ
たし、朝香も時折くすくす笑ったりして、楽しそうであった。電話をかけた
のは夜の八時頃だったが、すぐに日付は変わった。健介も、そのままずっと
話をしていたかったが、眠気が甚だしくなってきたので、
「小嶋。もう、そろそろ。俺、明日も朝早いから」
 と言った。
「ああ、そっか。気付かなくてごめんね」
「いや。こちらこそ、付き合ってやれなくてごめんな」
「ううん。早く寝なきゃね。それじゃあ、おやすみ」
「うん。おやすみ」
「………」
「………」
「おやすみ」
「うん。おやすみ」
「………」
「………」
「健くんが切って?」
「しょうがないな。じゃあ、切るよ」
「うん」
 電話を切るには、えいと思い切り指に力を入れなければならなかった。そ
れくらい、名残惜しかった。電話を切ることで、遠くにいながらでも二人を
繋いでいる糸を切断してしまうかのようであった。
 声を聞いたことで、わずかだが安心を得た。自分がそれを与えたのだと思
えるのがまた嬉しかった。
 それからしばらく変わらぬ日常が続いたが、十日程経って、今度は朝香か
ら健介に電話があった。健介は驚いたが、喜んだ。また自分と話をしたくな
ったのだな、などとちょっと自惚れた考えをした。快活な朝香の声が聞かれ
るだろうと思いながら、電話に出た。
「どうしたの」
「健くん。あのね」
 思いの外、元気がなかった。弱弱しく、泣き声に近かった。健介は、以前
もこんなことがあったと思い出して、今度は間違ったことをいってはいけな
いと思った。
2006/12/25 06:47:41(cpP/l0RF)
2
投稿者: まさ ◆72/S7cCopg
 こんなもん書いてる暇があるのが悲しいぜベイベ。
06/12/25 06:49 (cpP/l0RF)
3
投稿者: (無名)
続きがとても気になります!早く読みたいです(^O^)/
06/12/25 10:23 (6wzE6cJr)
4
投稿者: こギャング ◆T4Ts62OtgU
読み応えのある長編ですね。おもしろいです
ぜひアナルまで開発されド淫乱な朝ちゃんになっていただきたい
06/12/25 14:59 (/eXckFxs)
5
投稿者: なお
おもしろいね、早く続きが読みたい
06/12/25 16:46 (iL9eNn.n)
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