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1:後悔8
投稿者:
まさ
◆72/S7cCopg
それから数日後、突然、直人が異様なほど上機嫌になった。理由を問うま
でもなかった。休み時間、彼は健介に詰め寄って、遮二無二両手を掴むと、 周りには聞こえないくらいの声で、しかし興奮しながら、 「お前のおかげでうまくいった! ありがとう!」 と言った。感謝されれば悪い気はしないのが当たり前で、健介もそうであ ったが、実際にはほとんど何もしていないばかりか、内心では失敗を願って いたのだから、感謝されるのは不当だと思った。自分の気持ちをよそに、や たらとはしゃいでいる直人の態度が、嫌味であるかのようにさえ見えた。 朝香と直人は交際を始めた。と言っても、学校では、二人ともそれまでと 然程変わらなかった。朝香は健介に対してもそれまで通りに接し、健介はそ れを意外に思った。もう少し距離が出来るだろうと思っていたのである。と ころが、相変わらず健介と朝香は会話をし、それは二人だけのときもあれ ば、直人を含む三人のときもあった。朝香の笑顔も、以前と変わりなく、屈 託なかった。しかし、三人で話をしているときは、以前よりも、体の位置を わずかに直人の方に寄せているらしいのが、健介には気になったし、気に入 らなかった。人のものになってしまったのだと、否応なしに実感させられる ようであった。 学校にいる間は、目が届くからまだよかった。健介は、目に見えないとこ ろでの二人の行動を想像した。恋人同士なのだから、すべきことをするのだ ろうと考えると、転転せずにいられなかった。空想の中でも汚したことのな い朝香が、人の手垢にまみれる。それを考えることは非常な苦痛であった。 しかし、もう人のものになってしまった以上、その想像を否定することはで きなかった。 健介は二人を見ているのが嫌になった。二人から離れたいと思った。さも なければ、二人のことを本気で憎んでしまいそうなのが恐かった。健介が憂 鬱になるのは、二人がふと恋人同士らしい一面を見せたり、自らいらぬ想像 をしたりするときだけで、それ以外のときは、直人はいい男友達だったし、 朝香はいい女友達だった。想像をしてしまうのは、自分で精神を制御するし か仕様がなかったが、学校で二人が二人でいるのを見るのはもう嫌になっ た。そうして、卒業は間近に迫っていたから、それで自然と離れられるだろ うと思った。 卒業するまでの間に、朝香と直人は、進路を確定させた。健介だけが、決 まらなかった。悩み事のせいで勉強が手につかなかった、というのは言い訳 に過ぎない。理由はどうあれ、勉強不足なのに違いなかった。健介の家は、 両親が離婚して、保護者は母しかいないのだから、あまり悠長なことをして いられなかった。が、健介はそこを頼み込んで、一年時間をもらった。その ことを朝香に話すと、彼女は、 「一浪や二浪くらい珍しくないよ。納得いくまで頑張りなよ」 と言って健介を励ました。健介は、自分だけ浪人することに引け目を感じ ていただけに、朝香がまるで軽蔑を態度に表さなかったのがありがたかっ た。勇気百倍の思いであった。同じ言葉でも、他の人に言われたのではこう はいかないと思った。 卒業した。卒業式の日、直人は、 「ちょくちょく連絡するよ。また遊ぼうぜ」 と言った。健介は、それはいいが、朝香も一緒だと嫌だなあと思った。ま た、朝香も健介に、 「健くん。また会おうね」 と言った。それは、直人の恋人としてだろうか、そうでなければ、どんな 機会に会えるというのだろうかと思った。 卒業後、言葉通り、直人は時々健介に連絡を入れ、遊んだ。たいてい二人 で遊んだが、稀に朝香もいた。もう学校は別なのに、休日に一緒にいるとい うのが、いかにも恋人らしくて、羨ましいやら妬ましいやら、健介の心持ち はあまりよくなかった。が、卒業しても朝香に会えることは素直に嬉しかっ た。二人で会えれば尚嬉しいがと考えたが、そうできる権利はなかった。 卒業直後は、まだ悶々としていたが、時間の経過が、徐々に健介の気持ち を晴らしていった。人間とは、どんなこと、どんな状況、どんな環境にも慣 れていくものである。かの二人について考えることで煩わされることは少な くなっていった。未練が完全になくなったわけではなかった。が、いつまで もうじうじしていても仕方ないではないかという思いのほうが強くなってい った。 健介は予備校に通い始めた。そこで受験勉強をしつつ、新しい恋を探し、 求めた。しかし無残にも、朝香が全ての理想であったために、他の女性はこ とごとく下らなく見えてしまって、あくまで健介にとってはだが、恋するに 足る女性は一人もいなかった。もし、己をだまして恋愛しようとしたとして も、それは妥協に違いなかった。健介は少し失望した。しかし、あるとき、 ふと、何かのはずみであることに気付き、考え方を変えた。 「今、恋をしようとするのは、朝香を忘れるためなのではないか? 恋を忘 れるために、無理矢理、焦って、恋をする、恋をしていると思い込むのは、 果たして本当の恋と言えるであろうか? 断じて、否だ。恋とは、恋すべき 人と出会ったときに、出会った瞬間ではないにしろ、その人と何かしら接触 を知って、人柄などを知ったときに、独りでに起こるものなのではないだろ うか? だとすれば……」 健介は、その年の内に新たな恋をすることを諦めた。相応たる人物がいな いのであれば、それはもう仕方ないと思った。幸い、前ほどは、直人に朝香 を取られて悔しいなどと思わなくなってきている。もう少しすればきっと自 然と忘れる。そうしたら、ゆっくり次の相手を探せばいい。健介はそう考え た。 予備校に通いはしたが、あまり勉強はしなかった。元来、勉強は好きでな かったのである。その代わりに、アルバイトには精を出した。実家暮らしだ し、金の出所もあまりなかったので、金は貯まった。大学受験は、再度失敗 した。大学は、運よく入られればよし、駄目なら働きにでるだけのことさと いうくらいの気持ちだったから、それでは合格するために血眼になっている その他の受験生に敵うはずなかった。落第した健介は、アルバイトで貯めた 金で、運転免許を取得しに、自動車教習所へ通った。これも、学科は甚だ面 倒であったが、明確な目的があるから、一ヶ月ほどで全過程を済ませた。そ れから、仕事を探した。動物を相手にできて、未経験者でも雇ってくれると ころを探した。東京都内にはなかったが、千葉県で見つけた。見学に行っ た。ここにしようと思った。友達たちと、それから朝香とも離れ離れになっ てしまうが、仕方なかった。健介は、予備校の費用を親に出させながら、ほ とんど無駄に過ごしてしまったので、親に対し引け目があり、早く家を出た かったのである。 そのことを伝えるために、直人に電話をした。格別義務はなかったが、そ こは友人であるから、教えるのが当然であった。 「マジか」 直人は至極驚いた。健介は、ありがたいと思った。 「いつ行くんだ?」 「十月。その頃に、向こうの従業員が一人辞める予定らしい。それまでは、 こっちでバイトしている」 「そうか。それなら、送別会は別にやるとして、八月に、他の奴も誘って、 二泊三日くらいで旅行しようかと思ってるんだが、来ないか?」 唐突な提案に些か面食らったが、八月に二泊三日なら行かれるだろうと思 い、 「行く」 と返事をした。 「どこに行く気だ?」 「未定だけど、八ヶ岳あたりにしようと思ってる。ここからならそこまで遠 くないし、富士山なんかも近いし」 健介は、八ヶ岳というのを知らなかった。富士山に近いと聞いて、ああそ うかあのあたりかと思った程度であった。 「詳しいことが決まったら連絡する。まあ、いい思い出を作って、千葉に行 っても頑張ってな」 直人は、まだ先のことなのに、気の早いことを言った。 電話を切って、健介は、ただ自分の千葉行きを伝えるだけだったはずなの に、思いがけないことが起きたと思った。きっと朝香も来るだろうと思っ た。所詮は直人の恋人だが、朝香と一緒に旅行が出来るのは、やはり嬉しか った
2006/12/05 22:20:44(uTzsZ5K3)
投稿者:
まさ
◆72/S7cCopg
この辺までが第一部って感じでしょうか……。説明文ばっかりです。
今回は半ばやけくその体です。書きたいように書いています。サイトの主 旨など考えず、エロ描写は皆無です。申し訳なく思ってはいます。けれど も、こんなものでも、たまたま、偶然、運良く、面白いと思ってくださる方 がいるのならば、幸甚です。
06/12/05 22:24
(uTzsZ5K3)
投稿者:
(無名)
◆KnFHojOWaA
とりあえず、この先をまっとるよ
06/12/06 19:51
(P4sG1ntm)
投稿者:
かつ
◆EzPkwPyadc
早くつぎ読みたいぞ!
06/12/06 20:21
(jeHBZkKG)
投稿者:
過去視
エッチな表現は無いけど、昔の自分を見るようで懐かしく感じながら読んでます。前の黒い~より好きです。続きも期待してますね。
06/12/07 00:02
(Gx6i381u)
投稿者:
まさき
まささんファンです!続きよろしく
06/12/07 08:42
(zJ66ePeR)
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