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後悔7
カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:シナリオ 官能小説
ルール: エロラノベ。会話メインで進む投稿小説
  
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1:後悔7
投稿者: まさ ◆72/S7cCopg
 健介としては、朝香が直人を受け入れぬことを願うより外なかった。応援
してくれという直人の頼みに、わかったと返事をしつつ、そうするつもりは
なかった。うわべは調子を合わせておきながら、内心は失敗することをのみ
を願った。
 しかし、その大いに責められるべき邪な願いは、かなわなかった。直人
の、朝香に対する積極的態度は日に日に増して、目立つようになっていき、
朝香もそれを拒まずに、笑顔で応えていた。健介は、その笑顔が自分にだけ
向けられるものでないのだと思い知り、苦しいくらいの嫉妬を感じた。親友
のために、潔く身を引いて、さっさと諦めるべきだとは思った。また、そう
するつもりで、直人には言ったはずであった。が、好きという感情は頭で考
えるものでなくて、心の中から独りでに湧き起こって、御せるものでないの
だから、諦めよう、諦めた、と思ってみても、畢竟諦められるものではなか
った。いっそ、自分も直人に本音を打ち明けて、対決してみようかとも考え
た。しかしそうした場合に、勝利する自信がなかった。男性としてどちらが
優れているかと考えると、健介は、どうしても自身を卑下せずにいられなか
った。
 諦めようが諦めまいが、健介には何も出来なかった。
 部活動を引退した。健介は憂鬱な心持ちのままで受験勉強をした。彼は畜
産系の大学に進学することを志望した。動物が好きなので、それに関わる仕
事に就きたいと思い、そのための勉強をしに行こうと考えたのである。直人
の志望は普通の文系の大学であった。入られれば、どの学校か、どの学部か
はあまりこだわらないようであった。朝香は看護系の短期大学を志望した。
看護士か保育士か、そんなのになりたいと言った。得意の陸上は、趣味でち
ょっとやることもあるかも知れないが、部活動という形でやることはないだ
ろうとのことであった。三人の中では、健介が最も難易度が高かった。にも
関わらず、勉強の最もはかどっていないのは、きっと気を沈ませている健介
であった。
 その日の夜も、勉強机に向かいながら、朝香のことばかりを考えていた。
彼女は、
「部活も引退したし、またちょっと髪伸ばそうかな」
 と言っていた。朝香の髪の毛はさらさらしていて綺麗だから、ショートカ
ットも似合うけれど、伸ばせば一層彼女の美しさが引き立つのだ。健介は、
その綺麗な髪の毛をなびかせて微笑む朝香の姿を想像した。
 そこへ、携帯電話が着信を告げた。液晶画面には「朝ちゃん」とあった。
電話番号を交換したときに、
「名前は何て入れようか。小嶋朝香でいい?」
 と健介は訊き、朝香は、唇をちょっと曲げ、肩を振りながら、
「やあだ。他人みたい」
 と答えた。
「そんならなにがいい?」
 健介は、不意に見せた朝香の甘えた態度を嬉しく思いながら、再び尋ね
た。朝香はちょっと俯き加減に、少し考え、顔を挙げ、
「朝ちゃん」
 と言った。はにかんだ表情が可愛いと健介は思った。
 健介は跳び付くように電話に出た。
「どうしたの」
「健くん。あのね」
 驚くほど弱弱しい声であった。泣いているのかと思った。その声色に釣り
込まれるように、健介は不安を感じた。
 しばらくの間、朝香は次の言葉を言わなかった。健介は、彼女が何を躊躇
っているのか想像がついたので、そのまま言わないでほしいと思った。しか
し、相手からしたら、自分が黙っているのは不自然であるはずだと思われた
し、朝香は言いづらいことを言おうとしている、言いづらいが言いたいのに
違いないから、自分が聞き出してやらなくては駄目だと思い、
「どうした? 何かあった?」
 と出来るだけ柔らかい調子で言った。朝香は、うんと答え、深呼吸をした
らしい息の音をさせた。
「川上くんに、好き、て言われた」
 予想通りの言葉だったから、健介は驚かなかった。それよりも、とうとう
やられてしまったという、痛恨の思いであった。
「もしかして、聞いてたの?」
 健介の態度が予想以上に冷静だと感じたのだろう、朝香は健介がすでに川
上の気持ちを知っていると思ったらしかった。
「うん」
「そっか」
 気のせいか、健介は、電話の向こうの朝香が落胆をしたような気がした。
「健くんはどう思うの?」
「何を」
「私、川上くんと付き合っていいと思う?」
 無論、健介の答えはノーであった。のみならず、俺と付き合えと叫びたく
もなった。しかし、そこまで卑怯にはなれなかった。
「それは、小嶋が決めることで」
 電話でなら二人だけの会話だから、朝ちゃんとでも何とでも呼びたいよう
に呼べばいいのに、もう苗字で呼ぶのに慣れてしまっていた。
「そんなことわかってるよ! そうじゃなくて、健くんは川上くんのことを
どう思うの?」
 友人だが、仮に自分が女だとして、恋人にするには足りない。そんな風に
言ってやろうかとも思った。が、やはり、できなかった。恋敵とは言って
も、友人として大切なのだから、貶めて、友情を失うようなことはしたくな
かった。
「いい奴だと思ってるよ。付き合っても、いいと思う」
 絞り出すように言った。二人はしばらく沈黙した。健介が口を開きかける
と、朝香が言った。
「そっか。わかった。ありがとう。もう少し、自分で考えてみるね」
 朝香の声はひどく冷淡になっていた。電話なので、どんな表情をしている
のか知れなかったが、口調だけは恐ろしく冷たかった。
「それじゃ」
 と朝香は言った。
「朝ちゃん!」
 と健介が叫んだときには、電話が途切れたことを示す機械音が鳴っている
ばかりであった。
「約束していたのだから、仕様がないじゃないか。こうするより仕様がなか
ったじゃないか」
 携帯電話を折りたたむと、勉強はもう打っ棄って、ベッドにごろんと横に
なった。朝香が、何故自分に電話をよこしたのかを考えた。直人に好きと言
われた。交際すべきかせざるべきか考えた。その結論は、健介がどう思おう
と、朝香本人で決めてよさそうなものであった。自分の意見なんぞ参考にし
なくても、いいならいい、いやならいやで、自身で決断したらいいはずだと
健介は思った。答えたくないことを訊いてきた朝香を憎むような気持ちにな
った。が、それと同時に、朝香は、直人と交際するのを反対してほしくて、
電話をかけてきたのではないかとも考えた。電話を切る直前の、急に冷淡に
なった彼女の態度が、それを証明しているような気がした。望み通りでない
回答に機嫌を悪くしたのではないかと考えた。しかし、
「そうだとしても、俺に何ができたというのだ。約束を反故にすることはで
きない。結局、ああ答える外、仕様がなかったのだ」
 健介は今更、再び、はじめ、直人に気持ちを打ち明けられたときに、自分
もそれに対抗しなかったことを後悔した。この後悔は、永久に尽きることが
なさそうに思われた。
2006/12/03 21:15:05(4CcPWK89)
2
投稿者: (無名)
これって完全ネガティブ系…?一度でも汚されちゃうのは嫌だな…。
06/12/04 15:01 (mF1uuvvb)
3
投稿者: (無名)
ハッピーエンドでおわって
06/12/04 21:24 (UHKtlV5Q)
4
投稿者: なお
よくありがちな話だけどなんか読んじゃうよなぁ~。けっこうこういう話は好きかも
06/12/04 23:07 (6XV9MKoq)
5
投稿者: (無名)
健ちゃンがむばれ★
06/12/04 23:44 (e0zsJw4A)
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