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1:後悔5
投稿者:
まさ
◆72/S7cCopg
一時は諦めかけたけれど、再び希望が湧いた。必ず、この高校生活の内
に、朝香を恋人にしようと決意した。朝香以外の女性に興味を湧かせてこな かったせいか、相変わらず、朝香に対する感情が恋なのかどうなのか、判然 としなかったけれども、恋人にするなら朝香だと、恋人にするなら朝香だ と、この頃にはそう考えるようになった。 クラスは、またしても別になった。小、中、高と、十年同じ学校に通って も、一度も同じクラスになれない不運に、健介は嘆かずにいられなかった。 それでも、入学当初は、同じ中学出身者が他にいなかったこともあって、朝 香は、休み時間中に時々健介に会いに来た。 「健くんのクラスはどう?」 「周り皆知らない人ばかりだから、緊張するね」 話題はそんな、他愛のないことばかりだったけれど、健介はそれが嬉しか った。なにしろ、新入生の中でもかなりの美人である女子が、自分に会いに わざわざ来てくれるのだから、その気分の良さといったら、並でなかった。 健介もまた、時々彼女に会いに行った。やはり朝香は、笑顔で彼を迎えた。 しかし、お互い、自分のクラスに友人ができる頃になると、いつかと全く同 じように、その回数は減っていった。健介は、これではいけないと思った。 多少強引でも関係を保たなければならないと思った。が、それができなかっ た。会いに来る回数が減ってくるということは、朝香の心の内では、自分の 存在というのは然程重大な位置を占めてはいないのではないかという、後ろ 向きな思考がどうしても頭から離れず、積極的になれなかった。勿論それは 想像に過ぎなかったけれども、もしも真実だったとしたら、あまりしつこく することによって嫌われるのではないかと、それが最も恐ろしかった。 健介はどこまでも臆病であった。 そんなことをしている内に、朝香の方は、どんどん輝きを増していった。 中学生の時と同じく、陸上部に入部した。が、短距離走においては能力の限 界が見え始めた。並みの女子と比べれば断然速かったが、様々な地域から生 徒が集まってくる高校レベルになってくると、わずか数名とはいえ、前を譲 らないわけにはいかなくなった。しかしその代わりに、長距離走で頭角を現 した。毎年二月にマラソン大会があった。二月という時期だから、当然三年 生は不参加だが一、二年生は、よほど特別な事情がなければ全員参加の義務 があり、さもなければ体育の単位が出席日数に関わらず取得できないことに なっていた。三学期が始まるとすぐ、体育の時間はほとんど持久走に費やさ れ、毎回時計をとられた。生徒同士の競争心を煽るためか、時計の優秀な生 徒上位十名は掲示板に張り出された。女子の中で常に最上位に書かれていた 名前は、小嶋朝香であった。二年生を含めても、その地位は揺るがなかっ た。「陸上部の小嶋さん」の名を知らぬものは、学校内に一人もいなくなっ た。そうして彼女は、大会を二連覇した。 朝香がそんなだから、健介は、彼女が手の届かない遠くに行ってしまった ような心持ちがして、余計に近寄りづらくなった。健介はといえば、やはり 運動は苦手であったから、吹奏楽部に入部した。どんな形であれ、音楽は好 きであった。手先の器用な彼は、かなり上手な方であった。けれども、そん なことで朝香との距離が縮まろうなどとは寸毫も思わなかった。 「所詮俺は、しがない笛吹きさ」 そんなふうに、やや気取り気味に、自嘲した。 朝香とは、恋人になるどころか、遠い存在になるばかりだったけれども、 逆に、高校生になってからできた友人で、かなり親しくなった者がいた。一 年生のときに同級になった、川上直人である。健介よりも身長が十センチ高 く、骨格の逞しい、いかにも運動をしていそうな男であった。見かけに違わ ず、中学生時代はバスケットボールをやっていたという。ところが、見かけ によらない、というわけでもないだろうが、音楽も好きらしく、吹奏楽部の 見学にも来ていた。その時に健介もいて、同じクラスで顔は知っていたの で、 「浅川くんはここに入るの?」 「うん。そのつもり。川上くんも?」 「ここにするか、運動部にするか悩んでるんだ」 などという具合に会話をしたのがきっかけで、懇意になった。 直人は、はじめは、バスケでなくても、何かしらの運動部に入ろうと思っ たが、運動は中学生のときに散々やったから、違うものに触れてもみたいと 思って、好きな音楽をやってみるのはどうかと、見学にきたのだと言った。 その時すぐには決断を下せなかったが、見学をした印象で、吹奏楽に気持ち が傾いたようであった。が、即決しなかったのがいけなかった。体格の良い 直人を、あらゆる運動部の上級生たちが見逃すはずなく、特に強引な勧誘で 知られるラグビー部に連れ去られるようにされて、ほとんど強制的に入部さ せられてしまった。もともと悩んでいたのだから、妥協したところもあった のであろうが、その理不尽さに嘆いていた。 「淺川ごめん。俺、ラグビー部にいくわ」 健介は、せっかく仲良くなれそうな人が同じ部に入らないのが残念だった が、ラグビー部の恐ろしさは聞いて知っていたので、応援することしか出来 なかった。 部活動は別々でも、クラスは一緒だったので、二人はよく話をした。話は よく合って、お互いに愉快を感じた。教室移動などのときは一緒に行動した し、体育のときの着替えで、片方が早く着替え終わったら、もう片方が終わ るまで待ってやるという具合であった。音楽CDの貸し借りや、テレビゲー ムのソフトの貸し借りなども頻繁にした。二人とも十六という年齢であるか ら、異性についての話もよくした。好みの女性のタイプは、おおよそ共通し ているらしかった。 休み時間。直人は、健介の隣の席の女子がどこかへ行ったので、椅子を拝 借して、健介と話していた。話題は、クラスの女子についてであった。 「結局さ、うちのクラスで一番の美人って誰かな?」 と直人が切り出した。健介は、教室内をざっと見渡しながら少し考え、 「やっぱり、Aさんじゃないかな」 と答えた。 「そうだよなあ。俺はBさんも捨てがたいと思うが」 「うん、確かに。それを言ったらCさんもな」 「そうそう」 誰が美人かということについて、お互い、相手の意見に異論は出なかっ た。 「学年だと誰だ?」 その直人の問いに、健介は当然、朝香のことを思い出した。が、それを言 うのは何となく躊躇われた。幼馴染のことを人にそんなに誉めるのは、照れ 臭いような気がした。そこで、学年一の美女と言っても差し支えない人物を 頭の中で探したが、日頃朝香以外の女子に対してそういう考えを持っていな かったため、すぐに適当な名前を出せず、考え込んでしまった。 「俺はやっぱり、陸上部の小嶋さんだと思うな」 考えている間に、直人が先に言ってしまった。朝香の名を出されたら、何 故だかどきりとした。他の人から見ても、それだけの美人なのだなと思っ た。 「ああ。小嶋」 わざとらしく、言われて気付いたというような顔をして見せた。 「そう思わない?」 「さあ。昔から一緒だからあんまりそういう感覚ないな」 思っていることとは正反対のことを口走った。けれども、直人が美人だと いう女性が、自分の幼馴染であることを遠回しに自慢するような言い回しを した。 「昔から?」 「小さいときからお隣さんだったから」 「それは贅沢だ!」 直人は大きく感嘆した。 贅沢。それはそうかも知れないと健介は思った。幼少の頃から、小嶋朝香 という美人と接してきたがために、他に大勢いるはずの美人に興味が湧かな い。食事で言えば、ずっと高級料理ばかりを食べ続けているようなものだと 思った。 「お隣さんてことは、小、中は一緒?」 と直人は言った。健介は頷いた。 「で、ここにも一緒に?」 再び頷く。 「付き合ってるの?」 直人は、当然疑問に思うべきはずのことを質問してきた。健介は、いや、 と小さく呟き、首を横に振った。そうしなければならないことを情けなく思 いながら。 「でも、二人でここに来ようって決めたんじゃないの?」 直人は、手痛い質問を次々に浴びせた。健介は、朝香が自分と同じ高校に 通いたくてここを受験したのだと思ったが、本人の口からそう聞いたわけで はないので、勝手な思い込みに過ぎないかもしれなかった。むしろ、その可 能性のほうが高いように思われた。健介は、平静を装いつつ、内心はしょげ きって、かぶりを振った。直人は意外そうな顔をして、 「偶然でも、あんな美人とそれだけ一緒にいれば、俺なら絶対付き合うけど な」 と言った。 直人に言われて、健介は心底自分が嫌になった。直人の言う通り、ずっと 小さい時から一緒にいて、しかも自分では恋人という関係になりたいと思っ ているのに、その方向にうんと進んで行かれない自分に腹が立った。そし て、眼前のこの男は、自分に自信を持っていそうだから、きっと自分の思う 方向に歩んで行けるのだろうなと思い、羨ましくなった。 実際に直人は、自信家であった。自己を愛しているようであった。判断、 決断が、早く、何をするにしても人を引っ張っていくような気質があった。 それでいて人を不愉快にさせない頼もしさがあった。健介は、憧れに近い感 情を直人に抱いた。無心の尊敬、信頼を寄せるようになった。 二年生のとき、やはり朝香とは同じクラスにはなれず、しかし直人とは再 び同じになった。おかげで、ますます仲良くなった。朝香とは、相変わらず 距離を保っていた。時々、廊下などで見かけると、やはり誰よりも美しく、 輝いていた。中学生の時から、走るのに邪魔なのであろう、髪はショートカ ットにしていた。女性でも、髪を短くすれば、少年みたようになりがちだ が、朝香の場合は、女らしいというか、色気のあるショートカットであっ た。スカートの下から覗く白い脚は、相変わらず引き締まっていて、細かっ た。胸部の膨らみは乏しかったが、それは朝香の魅力を減ずる要因にはなり 得なかった。男子からの人気が高かったのは言うまでもない。健介は、高校 生にもなれば、そろそろ誰かと交際してしまうかもしれないと思った。その 場合、自分にそれを阻む力が何もないことが悲しかった。悲しかったけれど も、どうすることもできなかった。 幸い、朝香は誰とも交際をしなかった。理由はわかるはずなかった。あん まり美人すぎて、誰しもが声をかけづらいと思っているのかも知れないと思 った。 高校三年生になって、ようやく運が向いてきた。健介は朝香と同じクラス になった。三年生は選択科目が多く、授業は別になることが多かったが、ホ ームルームなど、拠点となる教室は一緒なので、健介は心の内で凱歌の声を 挙げた。 初めてクラスメイトとして、同じ教室で顔を合わせたとき、朝香はこだわ りなく笑って、健介に話しかけた。 「ずっと一緒だったけど、同じクラスになれたのは初めてね」 彼女が、ずっと一緒、と言ったのが、クラスは別でも、自分のことを忘れ てはいなかったということを示しているように思われて、健介は喜んだ。 あとそれから、直人とは三年連続で同級になった。これも、健介には嬉し かった。
2006/11/30 22:39:20(GTJFGxZb)
投稿者:
匿名
これからどんな展開になるのか…毎回楽しみにしてます。
06/12/01 00:18
(DULdXDUy)
投稿者:
(無名)
◆KnFHojOWaA
まちまくっとるよぉ~
06/12/01 19:36
(Y7VEMr25)
投稿者:
まさ
◆72/S7cCopg
応援してくださる方にはいつも感謝しています。本当に嬉しいです。力が
湧きます。本当に、本当に……。
06/12/01 20:40
(Qm70L0fw)
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