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後悔3
カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:シナリオ 官能小説
ルール: エロラノベ。会話メインで進む投稿小説
  
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1:後悔3
投稿者: まさ ◆72/S7cCopg
住めば都というように、狭いのはすぐに慣れて、不満は感じないようにな
ったけれども、やはり朝香を呼ぶ気にはなれなかった。それは、狭い家を見
られるのが恥ずかしいというよりも、女の子をうちに呼ぶのが恥ずかしいと
いう気持ちのほうが強かった。特定の女の子をうちに呼ぶということは、そ
れだけでほとんど自分の想いを告白しているのと同然だという気がして、憚
られた。本当は来てほしいのに、それを口に出して言えない、心と体の不一
致、矛盾があった。健介は、以前はあれほど気軽に声をかけ、遊びに誘った
り誘われたりしたのに、どうしてこうも、言葉一つかけるのに勇気が要るよ
うになるものだろうかと考えた。それはきっと、恋のためであるはずだっ
た。しかし健介は、自分の朝香に対して持っている感情が、恐らく恋心なの
だろうと思ってはいたが、その対象が幼少からあまりに近しい存在であった
ために、なのだろうはいつまでもなのだろうのままで、これこそが恋なの
だ、という実感が湧いてこなかった。その確信を持つためには、当時の健介
は些か幼かった。
 中学生になった。健介は毎年、朝香と同級になれるよう願ったが、無残に
も一度もなれなかった。それならばといって、別のクラスまで話に行く勇気
も持てなかった。その頃にはもう、廊下などですれ違っても、挨拶をしなく
なってしまった。目と目を合わせると、互いの間に電流のようなものが走っ
て、何かの感情が交差し、伝わるような気がするのだけれども、やあとかお
うとか言うのですら、変に白々しく、わざとらしい気がして、反って黙して
すれ違うのであった。
 朝香はますます美しくなっていた。俊足は相変わらずであった。陸上部に
入部した。毎日せっせと走った。運動が好きなようであった。そのためか、
体に余分な肉がつかず、頭の頂から足の爪の先まですらりと細かった。特
に、女生徒の大半が下半身を象のように太らせていく中で、朝香の引き締ま
った脚は際立って美しかった。思春期の男子たちは、当然、そんな彼女に注
目した。周囲の人気が高いのは、小学生の時から同じだったのである。そう
して、健介がそのことに焦燥感じるのも相変わらずであった。
 健介は、女性の股間には何故男にはあるものがなくて、穴が開いているの
かを知った。幼い頃に朝香の裸の股間を見て感じた、あの妙な気分の正体も
知った。そうしてそれから、それの処理の仕方も。が、その処理をするとき
は、必ず頭の中から朝香を追い払った。空想とはいえ、朝香を汚したくなか
ったのである。と言いつつ、
「俺は朝香の、女の体で最も大切な部分を見たことがあるのだ」
 と思うことが、他の、朝香に好意を抱く男子たちに対して優越感に浸るべ
く、密かに自慢に思うことであった。
 ある日、健介と、友人男子数名は、カラオケに行こうと計画した。
 その頃は、カラオケというものが世に流行しだした頃であった。繁華街で
は、カラオケ店が乱立した。何のビルを改装したのか、部屋は狭く、壁は煙
草のヤニで黄ばんでいて、色だけならばまだしも、匂いさえすることもあっ
て、換気悪く、劣悪を極めた環境の店が多かったけれども、料金が一時間百
円(ただし必ず飲み物を一杯頼まなければならない)という安さで、金のな
い中学生の娯楽としてはうってつけであった。無論、そんな安さでは、客が
大量に入らなければ採算が取れないので、立地条件や、店員の対応などが悪
い店は、容赦なく潰れていった。
 健介の友人らは、男だけでは華がなく、むさ苦しいから、女子も誘おうと
いうことを言い出した。どうせなら美人で、性格の良い人がいいだろうとい
うことで、この子がいい、あの子がいいなどと話し合った。すると当然のよ
うに、朝香の名も挙げられた。
「淺川、お前、小嶋と幼馴染なんだろ。誘ってきてくれよ」
 友人の一人がそう言った。健介は、朝香とカラオケに行けるのなら、それ
は嬉しいことだと思ったが、性欲を満たすことしか頭にないような連中と朝
香を付き合わすのは嫌だと思った。しかし、朝香は自分のものではなかっ
た。幼馴染という点だけが、他の男子よりも自分のほうが彼女により近いと
いえる点で、それだけで友人の頼みを断る筋合いはなかった。
 昼休みに、朝香のいるクラスの教室へ行った。朝香は女友達と談笑してい
た。健介は、話しかけづらいと思った。できれば、朝香が一人の時のほうが
良かった。出直そうかと迷っていると、朝香のほうが自分を発見した。目と
目が合って、朝香は、あ、と言ったらしい顔をしたので、最早後には引け
ず、声をかけることに決めた。
「朝ちゃん」
 心の内ではそう言ったが、実際に口から出てきた言葉は違った。
「小嶋」
 自分でも、頗る不自然な響きを感じた。反って白々しいような気がして、
自分で言っておいて狼狽してしまった。朝香もまた、かすかにだが、失望し
たような表情を見せた。が、その表情はすぐに消え、微笑を作った。
「なあに?」
「今度、みんなでカラオケに行くんだけど、一緒に行かない?」
「みんな?」
「うん。俺の友達と、女の子も何人か」
 朝香は俯いて、少し考えた。顔を挙げ、
「うん。行く」
 と応えた。笑顔を見せてはいたが、どこか切なげに見えた。
 集まった人数は十人であった。店に行くと、十人くらい入れる部屋はある
ことはあるが、大分狭くなってしまうし、一人ひとりに曲が回ってくるのが
遅くなってしまうから、二部屋に分けてはどうか。部屋の間の移動は自由に
しても良い。という店員に言われた。皆は顔を見合わせあったが、ほぼ即座
にそれならそうしようということに決まった。五人ずつ、男女混ぜて分かれ
ることにし、なるべくランダムにしたほうがいいだろうということで、ぐっ
とっぱー(多人数をランダムに二手に分ける時に、じゃんけんのグーとパー
を出し合って決めるやり方のことで、日本全国でやられることだろうと思わ
れるが、その呼び方は地域によって様々であろう。健介の住む東京都三鷹市
付近では、大抵、ぐっとっぱー、あるいは、ぐーぱーじゃす、と呼んだ)で
それを決めることにした。健介は、朝香と同じ部屋になりたいと祈りなが
ら、ぐーを出した。朝香も同じ手であった。健介は、狂喜乱舞したいのを堪
えながら、カラオケの機材がある狭い部屋へ入った。
 集まった男子たちは皆カラオケ初体験で、はじめは、柄にもなく恥ずかし
がっていた。女子の中には来たことのある人がいたが、ない人もいた。朝香
はないほうであった。来たことのある人は、なるべく率先して歌って、場を
盛り上げようとした。健介は、そうしてもらうまでもなく、歌った。歌を歌
うのは得意だったのである。朝香は、あまり得意でなかった。健介は昔か
ら、運動は不得手であり、運動神経抜群な朝香が羨ましく、取り残されてい
るような気分になりがちだったが、歌、ピアノ、習字など、芸術的な方面で
は力を発揮し、朝香の一枚上をいっていた。運動で遅れを取っている分、そ
れで朝香に対して面子を保っていると思ったりしていた。歌を披露すると、
朝香以外の者も、そのうまさを認めた。健介は上機嫌になった。それとなく
朝香の隣に座ることに成功していたのも、ご機嫌の原因の一つであった。部
屋は狭いので、五人全員がソファに座れば必然的に体がくっつきあうほど接
近しなければならなかった。健介は自分の体に触れる朝香の体を意識した。
ただ触れているだけなのに、十分な女の弾力を感じるようであった。人知れ
ず胸を高鳴らせた。昔は、さんざん体をくっつけて遊んで、場合によっては
かなり犯罪的なところに触れることもあったのに、今となっては、腰と腰が
ぶつかりあっているだけの事で、興奮、緊張しているのが不思議だと思っ
た。同時に、朝香はどう思っているだろうかと想像した。しかし、確信的な
ことは想像できなかった。ただ、自分と同じような心持ちでいてくれていた
ら、どんなに幸福だろうかと思うばかりであった。
 カラオケを終え、皆それぞれの自宅へ帰っていった。健介は、途中まで朝
香と一緒に帰った。
「もう名前では呼んでくれないの?」
 あまりに唐突に、朝香が言った。健介は目を丸くして問い返した。
「朝ちゃん、て」
「二人のときならいいけど」
「みんなの前では駄目なの?」
「だって、恥ずかしいじゃないか」
 朝香は、この上なくさみしそうな顔をした。
 健介は、自らの発言を後悔した。本当は、いつでも、どんなときでも、そ
れまで通り、朝ちゃん、と呼びたかった。小嶋、などという他人行儀な呼び
方はしたくなかった。けれども、恥ずかしいのも確かであった。人前でそん
な呼び方をするのは、昔からの癖が抜けていない子供のように思われたし、
仲が良いのを見せびらかしているかのようではないかとも思えて、憚られ
た。
「そうよね」
 朝香はつんとして、言った。それらの態度は、ある種のサインを自分に送
っていると思われて仕方なかった。しかし、急に見せだしたその態度にうろ
たえていたし、そもそも恋愛の経験の乏しい健介には、そのサインを受け取
って尚且つ返事を返すことはできなかった。そうする勇気も出せなかった。
 別れ際、朝香は、
「バイバイ。健くん」
 と言った。
「バイバイ。朝ちゃん」
 と返してやりたかった。ところが、出てきたのは、
「じゃあな」
 というぶっきらぼうな言葉のみであった。
 帰宅して、夕飯を食べた。母親に、カラオケは楽しかったかなどと訊かれ
たが、好い加減に応えた。風呂を済ますと、さっさと床についてしまった。
「俺は愚図だ」
 健介は一日を省みて、己を恥じた。
2006/11/26 00:48:36(tD3MYdX.)
2
投稿者: (無名) ◆KnFHojOWaA
まだまだまっとるよ^^
06/11/26 08:24 (rBAwA0gX)
3
投稿者: 匿名
第4段楽しみに待ってますね
06/11/26 20:44 (6eRaLFTa)
4
投稿者: キラ
はじめまして。いつも楽しく読ませてもらってます。やっぱりいいですね。最高です。頑張ってください
06/11/27 23:05 (C2VaPx7e)
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