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1:黒い下着2の4
投稿者:
まさ
◆72/S7cCopg
高校の混声合唱だから、当然、男子も女子も二声ずつに分かれている。女
子はソプラノとアルト、男子はテノールとバスである。ソプラノが最も高声 で、アルト、テノール、バスと順に低い声になっていく。曲によっては、そ れぞれのパート内で、さらにいくつかのパートに分かれることもある。しか しその場合、三声以上に分かれることは稀で、せいぜい二声までである。ソ プラノは、ソプラノと、メゾソプラノに分かれる。メゾは、多分イタリア語 だ。何とかという意味だが、詳しく知らん。僕にとっては、メゾのほうが低 声だということが判っていれば十分である。アルトは、アルトとセカンドに 分かれる。セカンドが低声だが、何故セカンドと言うのかはやはり知らな い。テノールも、テノールとセカンドに分かれ、上記に同じである。バス は、バリトンとバスに分かれる。これは、バリトンが高声である。例によっ て、言葉の意味を日本語に訳すことはできない。白井はソプラノで、二つに 分かれたときは、メゾソプラノを担当する。僕はバスで、分かれてもバスで ある。とにかく低い声で歌うパートである。ローツェーなどといって、わか らぬ人にしかわからぬであろうが、とにかく低い音があって、それを出せれ ば大したものだという音域がある。僕の声はそこまで低い音を出せないが、 高校の合唱で、いや合唱全般においてそこまで低い音を要求されることはな いので、とりあえずバスとしてやっている。最も低い声のパートだけあっ て、その声の響きは鈍重である。が、そこが魅力的なところでもある。らし い。らしいというのは、それが僕の声で、自分の声を格別魅力的だなどと思 いはしないからだ。白井は、バスの低い歌声に、男らしさを感じて、体が痺 れてくると言う。僕は、そういう声を聴くたんびに痺れてもらっちゃ困ると 思ったが、性的な意味ではないようなので、安心した。彼女は、登下校の途 中によく、無邪気な様子で、部活でやっている歌を口ずさんだ。僕もそれに 併せて、自分のパートを歌った。そこでとりわけ低い音の部分にくると、 「あ。そこいいよね、いいよね。恰好良いよね。ね、もっかい歌って」 などとねだってきた。部活動で毎日歌っていれば、人前で歌うことなど大 概平気になるものだが、そのようにリクエストされてしまうと、何故か小恥 ずかしいもので、そういうとき僕は、まず白井に曲の始めからから歌わせ て、それに併せて、その部分にくるまで歌った。すると白井は、いいねえい いねえと言って微笑んで、満足そうにするので、僕は得意になった。 我が合唱部は、当たり前のようだが、音楽室で練習をする。音楽室は、音 楽室として特筆すべき特徴があるわけではなく、まあ、普通の広さ、普通の 内装の音楽室を思い浮かべてくれれば結構である。その普通の音楽室に、六 十名強の部員が集って練習をするのだから、人口密度は甚だしきものにな る。その中で、部活の時間の前半は、各パートごとにまとまって、パートリ ーダーのもとでパート練習をする。そうして後半は、顧問の先生の指導で、 全体練習をする。時々例外はあるが、たいていこういう段取りでこなしてい く。 水谷は白井と同じパートであるから、パート練習のときはほとんど白井の 隣で歌っている。それだけならただの仲の良い先輩と後輩であるが、水谷は やはり白井にくっつきすぎるようであった。白井は白井で、あからさまに抵 抗できないようであった。僕も僕で、練習しながらその光景を見て、じれっ たく思いいつつ、何もできずにいた。が、何とかしなければとは思った。白 井は困っている。恋人が困っているのを黙って傍観しているのでは、その人 を恋人にする資格もなければ、自分がその人の恋人でいる資格もない。白井 が自分で解決できるのなら、それに越したことはないが、それができないの ならば、不自然であろうと、やり辛いことであろうと、僕がどうにかしてや らずばなるまい。そんな風に考えた。 僕や白井が、水谷の態度に疑念を抱き始めた頃から、一月ばかりが過ぎ た。その間、その水谷の態度は、加速はするが、減速をすることはなかっ た。 七月になった。まだ本格的な夏の暑さは到来していない。その日の朝も、 やや涼しく感じるくらいの気温であった。僕は居間で朝食を摂りながら、壁 にかかっているカレンダーを眺めた。そうして、水谷のことを考えた。と言 うと、まるで恋焦がれているかのようだが、無論違う。さて、あの娘のあの 態度をどうしてくれよう、と考えるのである。この頃は、一日の中にたびた びこの思案で脳を働かせていた。そうしていつも、大した妙案を捻出できな いままにしまうのが、習慣になっていた。その時も結局、すぐに思案をやめ にしてしまった。ただぼんやりとカレンダーの上の方に大きく書かれている 7という字を眺めながら、水谷が入部してきてから三ヵ月弱、たったそれだ けの間に、よくまああそこまで慣れ慣れしくなったものだと考えたのみであ った。水谷以外のほとんどの一年生は、三年生と接するとき、まだ緊張が抜 け切れていないようであった。毎年、一年生なんてのはそんなものである。 それに引き換え、水谷は、である。その点からも、水谷は常軌を逸している のではなかろうかと疑わざるを得なかった。 朝食を済ませ、家を出ようとすると、携帯電話が鳴った。白井だけは着信 音を別にしてあるので、確認するまでもなく、白井からだとわかった。それ から、用件も察しがついた。どうせいつも一緒に登校するのだから、話した いことがあるなら、会ったときにすればいいのに、わざわざ電話をかけてく るということは、考えられることは一つであった。それは、僕にとっては非 常に残念なことであるが。 電話に出ると、予期した通り、白井はこの上なくけだるそうな、低い声 で、 「風邪ひいちゃったから、今日は学校お休みするね。ごめんね」 何がごめんなんだと思ったが、気持ちはわからないでもなかったので、そ れは言わずに、 「ちゃんと休んで、すぐに治すんだよ。後でお見舞いに行くから」 と言った。すると白井は、 「うつっちゃうから、来ないほうがいいよ」 僕はそれには適当な返事をした。来るなと言われても、もう行くことに決 めているのだ。白井も、それを承知した上で言っているのに違いなかった。 とにかくお大事にねと言って電話を切った。 一人で一時間も自転車をこいでいるのは寂しい。いつもは隣に恋人がいる のだから、一入である。体が倍くらい疲れる気がする。 学校に着き、授業を受けていても、何か気分が沈んだまま、浮いてこな い。どのみち、授業は別々なのだから、授業そのものはいつも通りなのだけ れども、校内のどこにも白井がいないというだけで、無意識的に寂しさが募 ってくる。 浮かぬ気分のまま、音楽室へ行った。音楽室の前の廊下には、長テーブル がいくつか並べられており、合唱部員は鞄やその他部活動に不要なものをそ こに置く。ただし、学校内といえども盗難にあわないとも限らぬので、貴重 品は身に付けておかなければならない。実際、被害にあった人もいるそう だ。同じ学校に通う、いわば同胞なのに、そういうことをする姑息な輩がい るということは、非常に嘆かわしいことである。そのテーブルの辺りでは、 部活が始まるまで談笑している人のいることが珍しくない。その時も女子が 数人集まって何か話していた。その中に水谷もいた。僕はなんとなく、身構 えるような心持ちになった。同時に、たかが後輩、しかも女子に恐れを抱い ている自分を可笑しく思った。その女子たちは、僕に気付くと、 「こんにちは」 とそれぞれ言った。僕も 「こんにちは」 と返す。僕はそれで通り過ぎようとしたが、水谷が話しかけてきたので、 自然と足を止めることになった。 「白井先輩はどうしたんですか?」 「風邪をひいて、今日は休みだ」 「あらあ。お気の毒に」 水谷は心配、というより、残念そうな顔をした。いつものように接触でき ないのが残念なのだろうかと思った。 「よっぽど悪そうなんですか?」 「電話で声を聞いただけだから、何とも言えないけど、本人は風邪とだけ言 っていたし、まさかそんな大病でもないだろう」 「休みでも電話で声聞いたんですか? ラブラブですね」 水谷はにやにや笑いながら、先輩の僕をからかいだした。この女はいつも こんな調子である。年上を相手にしても全く臆することがない。図々しいと いえば図々しいが、無邪気といえば無邪気である。そこが可愛いところであ るようにも思う。そう思ってしまうと、からかわれているというのに、怒る ことができなくなる。僕はむしろ照れ臭くなって、馬鹿みたいにやにさがっ た。 「そんなんじゃねえよ。向こうから電話してきて、風邪で休むって言ってき たんだ」 「それこそラブラブじゃないですか。体調悪くても、金子先輩にだけは知ら せなきゃって思ったんですね。いいなあ」 どうあっても僕と白井をラブラブとかいう関係にしておきたいと見える。 それは事実なのかも知れないが、照れ臭くっていけないので、もう話をきり あげて行こうとした。 「もちろん、お見舞いに行くんですよね」 水谷は愉快げに、横を通り過ぎようとする僕に尚そんなことを言ってき た。その言葉の返答はイエスであったが、それを言ったらまた何と言ってか らかわれるか知れたものでないので、 「知らん」 と答えた。水谷は、僕の背後で、まだ、 「いいなあ。ね」 などと言って、周りの女子にも同意を求めていた。その子らがどういう反 応をしたのか、わざわざ振り返って見はしなかったけれども、僕と水谷のや りとりを少し笑った顔で見物していたから、大方相槌でも打ったのだろうと 思う。 練習は普通にこなした。水谷も、白井がいないからどうというわけでもな く、普通にしていた。 練習が終わり、早く白井の様子を見に行こうと、帰り支度を急いでいる と、また水谷が話しかけてきた。 「いつも一緒にいる人がいないと、帰り道もさびしいですよね」 「まあ。そうだな」 「よかったら一緒に帰りませんか? 途中まで同じ道だから、そこまで」 水谷は平然とそんなことを言うので、僕は我が耳を疑った。恋人を持つ男 に、その恋人のいぬ間に、一緒に帰ろうなどと、どういう神経をしていたら 言えるのだろうと思った。感情らしい感情を持っていないのではないかとさ え思った。しかし、僕がそう思うのは、白井以外の女と共に下校すること が、白井に対する裏切りではないかと感じるからだが、それはいくらなんで も考えすぎだとも思った。それを言い出したら、白井以外の女、例えばクラ スの女子とはいくらでも話すが、それは裏切りではないのかという話にな る。そうして、それくらいのことには罪はなかろうと自分で思う。白井がい るのに、他の女、この場合は水谷と下校するのでは、紛れもなく裏切り、浮 気といって然るべきであろうが、白井はいない。水谷は途中まで同じ道を使 って帰る。畢竟一人で帰るか二人で帰るかの違いだけで、二人で帰るにして も、ちょっとした会話をしながらに過ぎないのだから、やはり罪はなさそう に思った。それからもし、水谷の自宅が別の方角にあるのなら、白井に会う のが遅れてしまうのだから、断るところだが、そういうこともないので、断 る理由はなかった。 「別にいいよ」 「やった! じゃあ、校門のところで待ってますね」 水谷はやけに嬉しそうにして、行った。一年生の自転車置き場へ行ったの だろう。僕は当然三年生の自転車置き場へ行った。 自転車の鍵を外したりなどしながら、案外これはいい機会かもしれないと 考えた。平生白井に対してする過度のスキンシップは、どういう気持ちでし ているのか、聞けたら聞きたい。聞けるように話を持っていこうと考えた。 また、それの返答しだいでは、それをやめる、とまではいかなくても、控え るように言おうと考えた。 自転車に乗って校門まで行くと、片足は地面に着き、もう片足はペダルに かけた体勢で、短い黒髪の、小さな体の美少女が待ち構えていた。
2006/10/17 21:16:04(3ys.XTaH)
投稿者:
まさ
◆72/S7cCopg
書けば書くほど己の低能を痛感する…。実力に見合わない話を書こうとし
たのが誤りでした。でも、こぎだした船なので、到着するまでは頑張ってこ ぎ続けたいと思います。 エロくなくて本当に申し訳ないです。抜きたい方は、どうか大目に見て、 お手数ですがスルーしてください…。
06/10/17 21:27
(3ys.XTaH)
投稿者:
W210
◆CwESQHIYSc
ますます人間関係が混迷の度合いを増してきましたね。
久しぶりにエロシーンが全くなかったのは残念ですが、こう言うのもまたお つなものかと。 ご自身に自信を無くされているようですが、そんな事はありませんよ。 これからも期待しています。
06/10/17 22:06
(DquQh56F)
投稿者:
(無名)
◆KnFHojOWaA
んん!
良いよ~! ひぢょうに良い!
06/10/18 22:24
(8noSBAzj)
投稿者:
まさき
おもしろい!
06/10/19 17:18
(6ktD/4Ab)
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