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黒い下着10
カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:シナリオ 官能小説
ルール: エロラノベ。会話メインで進む投稿小説
  
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1:黒い下着10
投稿者: ◆72/S7cCopg
 傘を放り出して、倒れている白井のそばに駆け寄り、抱き起こした。ゆ
き、ゆきと呼び掛けても、彼女はううとうめくだけで何とも応えなかった。
 車はだいぶ行って、ようやく止まった。男が下りて、僕らのところへ走っ
てきた。三十歳前後の男であった。
「救急車を呼べ!」
 僕は明らかに年上のその男に向かって、そう言った。殴り飛ばしてやりた
かった。男は、びくっとして足を止めると、少しきょろきょろして、一番近
いと思われる電話ボックスがある方へ走り出した。
 やがて男が戻ってきた。通行人が集まってきた。僕はそいつらを無視し
た。ただひたすらに、ゆき、しっかりしろ、ゆき、しっかりしろと呼び掛け
続けた。冷たい雨が彼女の体を濡らすので、僕は学ランを脱いで被せた。そ
こらにいる誰にともなく、傘をくれと言って、さっき放った傘を持ってこさ
せた。救急車が来るまでの間に、彼女は意識を取り戻した。僕の顔を見る
と、としくん、いたい、いたいと言って泣いた。
 病院に連れて行かれる白井に、僕は同伴して付いていった。救急車の中
で、白井は痛そうな顔はしていたが、もう泣かずに、大人しく応急処置を受
けていた。僕は救急隊員に、彼女の名前と年齢と、学校名を聞かれた。同じ
質問を彼女にもしていた。白井は正しく答えていた。それから僕は、僕のこ
とも聞かれて、答えた。事故の状況も聞かれたので、できるだけ詳しく説明
した。けれども、気が動転していたので、それがうまくいっていたかどう
か、わからない。
 病院で、白井は色々な検査を受けた。僕はその間に、白井の家族へ連絡す
ることにした。このとき僕は、白井の体に目立った外傷のないことや、救急
隊の質問に明確に答えていたことから、少し安心しかけていた。しかし、交
通事故で病院に運ばれる、そのこと自体が滅多にない一大事だと思われたの
で、それを家族に知らせないわけにはいかない気がした。
 病院の電話の前に立って、少し躊躇した。実はこのとき僕はまだ、白井の
家族の誰とも、会ったことも話したこともなかった。放課後は、白井の家に
は母親がいるというので、必ず空いている僕の家に行った。休みの日にデー
トするときは、前の日にきちんと段取りを決めていたから、電話で呼び出す
必要もなかった。白井本人が話をして、僕と交際をしていることは知ってい
るらしかったが、愛娘と交際する僕に対して、白井の家族がどういう心持ち
でいるのかわからなかったので、電話をするのは勇気が要った。しかも、そ
の用件は、娘が交通事故に遭ったというのである。が、ためらったところで
どうにかなるものでもなかった。受話器を手に取り、生徒手帳にメモしてあ
る白井の家の電話番号を押した。母親が出た。
「白井さんのクラスメイトの金子ですが」
 さすがに、白井の恋人のとはいえなかったので、そう言った。白井の母
は、あらとかまあとか言葉にならない声を挙げて、
「いつも娘がお世話になっています」
 と娘と同い年の僕に向かってそう言った。明らかに敵意のない感じだった
ので、僕は心底安心した。しかしそれだけに、用件を話すのが辛かった。
 白井が交通事故に遭って、今、某病院にいると言ったら、はっと息を呑む
のが受話器越しにでもわかった。急激に変わった、張り詰めたその空気に、
胸が締め付けられる思いがした。白井の母は、すぐ行くと言って電話を切っ
た。
 しばらくして、来た。白井とよく似ているので、一目でわかった。慌てて
飛んできたらしく、化粧せず、息を切らしている。しかしそれでも、体全体
から上品な雰囲気を出していたので、僕は、この母からなら、あんな子も生
まれるはずだなどと思った。心配そうな顔つきで、娘はと聞くので、わから
ない、けれど外傷はないし、意識もしっかりしていたから、たいがい大丈夫
だろうと僕は答えた。するとふうと溜息をついたが、顔は変わっていなかっ
た。
 検査が済むと、白井は自分で歩いて病室から出てきた。母親がいるのを見
て、驚いていた。何故いるのかと言って、白井の母は、金子君が教えてくれ
たのだと応えた。
「大袈裟よ」
 白井はそう言って苦笑した。白井からしたら、親を呼ばれたのが心外なほ
ど、軽傷であったらしい。僕と白井の母は、やたらに、よかった、よかった
を連発した。白井は、顔を紅くして、恥ずかしそうにしていた。
 白井はその日のうちに退院してしまった。肘や膝に擦り傷を作ったくらい
で、あとはなんともないらしかった。かなり派手に飛んで、落下したように
見えたが、一番先に落ちたのが肩から肘にかけてのあたりだったので、運よ
く軽傷ですんだらしい。頭部に損傷を受けなかったことが、もっとも幸いだ
ったらしい。
 翌日、白井は友達に傷を見せながら、事故のことを自慢げに話していた。
 放課後、いつものように一緒に歩いていると、
「昨日はありがとう」
 と突然言ってきた。何をと問うと、救急車を呼んだり、病院まで付き添っ
てくれたことと答えた。
「そんなことは当たり前だ」
 僕は、自分が惚けていたために、彼女に自分を守らせて、怪我させてしま
ったことを、心苦しく思っていた。あのとき、僕が後方に気をつけていれ
ば、彼女は余計な怪我をせずにすんだのだ。責められこそすれ、礼を言われ
ていいはずがなかった。救急車を呼んだ、病院まで付き添った、そんなこと
くらいで、償いきれるわけがなかった。
「気にしてる」
 白井は、視線を落とす僕の顔を覗き込んだ。僕の心持ちをちゃんとわかっ
ているようだった。それはとても嬉しかったが、それだけに自分の一番の理
解者を守れなかったというのが辛かった。
「そんなに気にしなくていいのに」
 という白井の言葉も、僕の気持ちを晴らす役に立たなかった。いつまでも
落ち込んでいるので、白井は不機嫌そうな顔をした。白井が気にするなと言
うのだから、気にするべきでないのだ。そうは思っても、自分を許すことが
出来なかった。自分の不注意で彼女に怪我をさせ、それも、あわや大惨事。
軽傷で済んだのは偶然だ。重傷、あるいは最悪の事態が起きたとしても、不
思議はなかった。もしかしたら、白井は今、ここにいなかったかもしれない
のだ。そう考えると、ぞっとするとともに、気にしないでいてはいけない、
贖罪の気持ちを胸に縛り付け、十字架に架けられ火にあぶられる如く、心に
拷問を受け続けなければならないと思わずにいられなかった。
「俊くんが辛そうにしていると、私も辛いよ」
 僕ははっとして白井を見た。涙を流してはいなかったが、泣き顔をしてい
た。そう、簡単なことである。僕だって、白井が落ち込んでいれば、落ち込
む。笑っていれば、笑う。白井は今、僕がしょげているために、一緒になっ
てしょげている。僕は白井には笑っていてほしい。ならば、僕は笑っていな
ければならない。そうすることで、白井も一緒に笑ってくれるのだ。気にし
ないでいてはいけない、悪かったと思う気持ちを忘れてはならない。けれど
も、白井がいつも明るい笑顔でいてくれるために、笑わなければならない。
愛する人に笑顔でいてほしい、それは、愛する人を持つ者の、共通の願いで
ある。
 僕は笑った。白井も笑ってくれた。
「ごめんな」
 怪我をさせて、という意味でなかった。
「うん」
 白井もそれをわかってくれた。
「あのね。うちのお母さん、俊くんのこと気に入ったみたいよ。昨日のお礼
がしたいから、今度うちに呼びなさいって」
 詳しく聞くと、どうやら白井の母は、僕が病院に付き添ったり、電話をし
たり、容態を説明したりするのを見て、僕を落ち着いたしっかり者と判断し
たらしい。そう言ってくれるのは嬉しかったが、自分をしっかり者だなどと
思ったことのない僕は、照れ臭かった。
「お父さんも、会ってみたいって」
 僕は白井の父と対面する場面を想像して、緊張した。白井の父がどういう
人物か知らなかったが、恋人の父と会うというのは恐ろしいものであった。
そうして、僕の脳裏には「結婚」という言葉が浮かんだ。十年早いその考え
に、僕は自ら苦笑した。けれども、いつか、時が来たときに、結婚しようと
言える二人になっていたい。僕はそう思った。
 白井の横顔を見た。自分の両親が僕を気に入ったということを、嬉しそう
に話す白井が、僕と同じことを考えているような気がしてならなかった。
 いよいよ中学校卒業の日を迎えた。厳かな雰囲気で卒業式が執り行われる
中、僕はこの三年間のことを振り返っていた。三年間の内で、白井と交際し
ていた期間は、最後の半年にも満たぬ間に過ぎなかった。けれども、僕の中
学校生活三年間というのは、すなわち白井との数ヶ月間であるという気がし
た。それだけ白井とともに過ごした時は、濃密で、有意義だった。もちろ
ん、それぞれの学年で、それぞれの思い出があるには違いなかった。しか
し、それらの思い出と、白井との思い出を天秤にかけたら、白井との思い出
を載せた方の皿に、あまりに勢いよく傾きすぎて、その他の思い出が天空高
く飛び上がっていってしまうような気がした。
 卒業式の間、男子で泣く者はなかったが、女子は数名泣く者がいた。白井
はその一人ではなかった。どことなく笑みを浮かべ、嬉しそうな表情であっ
た。僕は、泣きはしなかったが、感傷的な気分になりはした。
 式が終わっても、すぐに帰宅する者は少数であった。ほとんどの者は、校
内のどこかしらに、仲の良い者同士で集まって、元気でとかまた遊ぼうとか
言い合っていた。式では泣かなくても、この時に泣きだす者もいた。白井は
やはり泣いていなかった。白井の友達は泣いていた。白井ちゃん元気でねと
か言いながら白井に縋るその女子を、白井はお姉さんのような態度で慰めて
いた。僕は僕で、友達と話をして、やはり元気でとかまた遊ぼうとか言い合
った。
 そのうち、自然と僕と白井は二人になった。白井は悪戯っぽい顔をしなが
ら、僕の胸元をじろじろ見て、言った。
「あれ? 第二ボタンまだついてるね」
「当たり前だ」
 白井由紀という恋人がいる僕の第二ボタンなんぞ、誰も欲しがるわけがな
かった。よしんばいたとしても、白井に遠慮して、そんなこと言えるはずが
なかった。
 白井は相変わらず、哀愁や、それに近いような表情を微塵もみせず、にこ
にこしていた。
「由紀は泣かないね」
「そうね」
「さみしくない?」
「さみしいことはさみしいけれども」
 一つ間を置いて、続けた。
「卒業式で泣くなんて、よほど未練を残している人のすることよ。私だっ
て、親しくしてた友達と、今までみたいに毎日会えなくなるのは残念だし、
さみしいけれど、今生の別れってわけじゃないんだし、そんなさみしさよ
り、これから先の楽しみのほうがずっと大きいから、泣こうったって、わく
わくしちゃって、泣けないわ」
 先程、自分に対して泣いてくれた友人のあるにも関わらず、その白井の言
葉はちょっと酷いように思われた。しかし、その口調は、特にその友人を非
難しようとしている感じではなかった。あくまで、私はこうだ、と言ってい
るに過ぎない口調であった。僕はそういうところに白井らしさを感じた。そ
うして、そういう冷静で、理屈めいたところと、理屈など関係なしに欲情
し、快楽を貪るところとの、コントラストの著しいところが、白井の魅力の
一つであると思った。それから、彼女の言う、これから先の楽しみというの
は、きっと僕との高校生活のことだろうと確信的に思って、嬉しくなった。
 白井は、しかし、そんな風に言いながらも、やはり何かしらの感慨はある
らしく、かすかに瞳が潤んでいるようだった。ところへ、白井の友人が、こ
ちらの様子を伺いながら、遠慮がちに近付いてきた。
「これから、女の子たちで、ご飯食べたり、カラオケ行ったりしようって話
なんだけど」
 彼女はそれから先を言わず、僕と白井を見比べた。白井は僕を見た。
「行っていい?」
 と目で言っていた。僕はたまらなく愉快な心持ちになって、
「行っておいで」
 とできるだけ優しい口調で言った。
「ありがとう」
 と白井は言って、断られると思っていたのか意外そうな顔をして喜んでい
る友人の後について歩き出した。
 白井も、白井の友人も、僕に許可を求めてきたのが、僕には非常に愉快な
ことであった。白井は僕の恋人だが、所有物ではないのである。だから、勝
手に行かれるのは困るが、何も許可を必要とはしないはずなのである。行く
と決めたのなら、それを僕に伝えさえすればいいのである。それを二人と
も、僕に断るのが当然であるが如き態度だったものだから、僕はもう白井の
旦那になったような気分がして、優越感にも似た良い気持ちにどっぷり浸か
った。
 そんな良い気分を満喫しながら、白井の後姿を見送っていると、白井はく
るりと振り返った。さらさらっと髪の毛が後からついてくる。白井の振り向
く姿はとても綺麗だ。僕の方に引き返してきた。
「明日、遊びに行っていい?」
 あの、性欲の臭いのする、僕を誘う眼で言ってきた。不意にそんな眼をさ
れたものだから、僕のちんこは、びくんと音がしたかと思うくらい、反応し
た。うちに遊びに来る、目的は一つだと思った。
「もちろん」
「何時?」
「好きな時間においで」
「ありがとう」
 白井はもう平生の白井に戻っていた。再びくるりと振り向くと、女子が集
まっている方へ走っていった。
 友人たちと合流して、何やらお喋りをしている白井と、他の女子たちを眺
めた。白井が最も美しかった。きっと白井だけが処女でないのだ。そうし
て、友達とあどけなく会話をしている今も、スカートの中には、黒い下着。
それを意識すると、今更ながらの興奮が湧いてきた。そこへ、僕の友人が、
背後から僕の肩を叩いたので、僕はかなり驚いた。
「あれ? 白井は?」
「女子どもと遊びに行くってさ」
 友人は、それならと言って、僕を遊びに誘った。卒業記念の打ち上げと称
して、大いにはしゃぐのだと言った。酒も飲むつもりらしかった。僕は行く
ことにした。
 男子たちで集団になって、移動を始めた。校門を出るところで、僕はふと
振り返って、校舎、校庭、体育館などを見た。白井たちはまだ同じところに
集まって何か楽しげにしていた。校舎の前に、校庭と区切るように並んで植
えてある桜の木は、まだ花を咲かせていない。ちょうど入学式の頃には、そ
れは綺麗に咲くのである。僕や白井がF高校の生徒になる頃には、咲いてい
るだろう。F高校にも、校門の際や外壁に沿うように植えてあった。あそこ
の桜は、どんな風に咲くだろう。きっとここの桜に劣らず綺麗に違いない。
僕は、その桜の木の下、白井と二人で登校するところを想像して、思わず笑
った。そうしてそれから、それよりずっと先の、僕と白井の明るい未来をも
想像した。
2006/09/11 21:46:57(ZFEcuoT.)
2
投稿者: ま ◆72/S7cCopg
 ラストなのに全然エロくない! 申し訳ないです。
 応援してくださった皆さん、本当にありがとうございました。当初、先の
ことをほとんど考えずに、軽い気持ちで書き出してしまったため、後の展開
に苦しんだりしたのですが、予想外の好評のおかげで楽しく書くことが出来
ました。続きをと言ってくださるのは本当に嬉しかったです。その言葉の続
く限りは、それに応えたいと思ったのですが、私の力ではそろそろ限界で
す。これ以上は、同じことを繰り返して書くだけのことになります。すでに
その気配もあるように思われます。ですので、失望される前に、終いとしま
す。
 頻繁にレスを下さった、W210さん、悪代官さん、編集長さん、無名さ
ん(トリップが同じなので同一人物でしょう)、本当にありがとうございま
した。期待を裏切ることになったかもしれませんが、許して下さい。
06/09/11 22:05 (ZFEcuoT.)
3
投稿者: 田舎のも
最後になるのは残念です
文章力、発想とても面白く読ませていただきました。
一読者として感謝いたします。

06/09/11 22:18 (oWXODMc0)
4
投稿者: W210 ◆CwESQHIYSc
そうですか、最後ですか。
非常に残念です。
楽しいお話しをありがとうございました。
また機会がありましたら、是非投稿してください。
お待ちしています。
06/09/12 00:24 (XhY9w6XG)
5
投稿者: まさき
最高に面白かった!お疲れさまでした♪また良い話を書いて下さいね(^O^)/
06/09/12 07:58 (JuUmvy36)
6
投稿者: (無名) ◆KnFHojOWaA
面白かった
気が向いたら続編でもいいし、別の話でも投稿してほしい

06/09/12 08:36 (XVFVeuMJ)
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